第12話
「逃げることが許されないって・・・」
その言葉は唯一残された私が進むべき道さえ塞いで、私の心に大きな壁を四方八方へ塞いだ気がした。
「それは誰も望んでおらん。父君も母君も・・・そして王子も」
「えっ」
どうして、お父様やお母様が望んでいないのかわかるのか。それが気になる。
「ねぇ、もしかして、貴女様はあの世を・・・」
「そんなものは見れん。わしは霊媒師じゃないぞえ?」
老婆は少しむすっとして否定する。
「そっ、そう・・・っ」
私は少しがっかりして心を落ち着ける。
「唯一、逃げることを望んでいるものがいるとすれば・・・もう一人の国王。いや、今はまだこちらも王子か」
手を動かしながら、老婆は水晶から何かを見るのを続ける。
「戦いは避けられぬ」
顔をあげた老婆の目がローブの中から現れてこちらを強く見た。
「そんな、無理よ・・・」
「あぁ、今戦えば負けるのは必至。防衛に徹するのが吉じゃ」
「喧嘩はだめだけど、一方的に殴られろってこと?そんなの・・・あんまりじゃない・・・っ」
「愛を見つけるんじゃ。愛が希望を運んでくれる。その希望が15年後英雄となり、世界に愛と希望をもたらす。そして、汝に幸せの赤い瞳と過去の栄光を取り戻してくれるじゃろう」
手を止めて、ローブを取り老婆が私を見る。受け入れがたい話をしていた老婆だったけれど、その目は真剣だ。
「・・・信じられぬか?」
私の心を見透かしたように、私の顔を見つめる。
「信じるも何も・・・何をおっしゃっているのかわかりませんっ」
疲れているのもある。
「貴女が未来を占えるならば、これから私はどうすれば、いいのか具体的に言ってくださいっ」
今の私には、その老婆の言葉を読み取る気力もない。ただただ、不安を煽られるだけ。お前はもっと頑張らなければならないとだけ言われた気分だ。そして、頑張ろうとした結果がフロリアたちに過去を顧みない女だと思われた。私にはもう、頑張り方もわからないのだ。
そんな私をじーーーっと見つめる老婆。
「・・・手紙じゃ」
「手紙?」
そんなものを貰った記憶はないし、あったとしてもエドワードに押し入られてしまったし、今は家から遠く離れた地にいるので、ポストを確認することなんてできない。
「そなたは何もないわけじゃない。ちゃーんと、そなたの父君はそなたに残した物がある。今はそれがわかっていないだけ・・・」
ドンドンドンッ
扉の方から大きな音がして私は振り返ると、扉が開いた。
そして、屈強な兵士たちがそこにいた。
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