第3話 脳波の訓練

 催眠術は技術です。

 見様見真似でできなくもないのですが、理屈を知ることで技術自体が向上します。


 小学生の頃に九九を声に出して覚えませんでしたか?

 スポーツに取り組んだとき、筋トレをしませんでしたか?

 人が学習するとき、個人差はありますが繰り返し行う事が必須です。

 森川葵さんのように少ない練習でプロ並みの結果を出す方もいれば、私のように何度やってもできないのもいます。

 いずれにせよ練習をしなければ上達しません。


 催眠術においても同様に、練習しなければ上達しません。

 ここでいう練習は催眠術師側の練習をイメージするかと思いますが、今回は催眠術をかけられる側(以降、被験者と呼びます)の練習についてお話します。



 人は活動するのに最適な状態を維持するようにできていて、これを恒常性と言ったりします。

 催眠術で目指すのはまずαアルファ波が出ている状態です。

 ところがαアルファ波は、脳にとって結構特殊な状態でそのまま放置しておくと元のβベータ波に戻るか、眠ろうとしてθ《シータ》波へ進もうとします。

 そのため、αアルファ波を維持するような練習が必要になります。


 まず被験者の練習は2つです。

 1.αアルファ波を出し始める練習

 2.αアルファ波を維持する練習


 スポーツ選手のゾーンという状態も同じαアルファ波なので、誘導&維持する為には訓練が必要です。

 闇雲にゾーンを目指そうとしても中々たどり着けません。

 ゾーンを引き出すには催眠術の手順を理解し当てはめることが一番確実です。


 催眠術ではこの催眠状態を維持する作業をします。


 まず、脳はその状態を知らない。

 いえ脳波は連続しているので、ゾーンや催眠状態を知らないのではなく、その領域に留まっている状態を知りません。

 知らないので教えてあげないといつまで経っても分かりません。


 そこで、催眠術では意地悪をするのです。

 番組で手を固めて焦らして解く、今度は逆の手を固めて焦らして解く、次に腕を固めて焦らして解くなんてシーンをご覧になったことはありませんか?

 意地悪をしているように見えますが、意地悪をしているのではありません。

 この何回も繰り返すネタが、脳に催眠状態を教える作業なんです。


 何回も繰り返す事で脳みそが

 ・環境

 ・脳波

 ・誘導した存在

 を覚えます。

 誘導した人については、見た目、声、匂い、温度など5感+αの認識を覚えているみたいです。

 

 そして、催眠術にかかる期待値は100%です。

 なんで100%かというと、αアルファ波の出る状態は起きて寝てを繰り返していれば体験しているからです。

 αアルファ波の出る状態に留まっている事を知らないだけで、誰しもが知っていることなんです。

 実際には20%の法則のような感じで、沼のようにかかる人、ガッツリかかる人、普通にかかる人、軽くかかる人、まったくかからない人でそれぞれ20%ずつに分かれるような気がします。


 なんか、催眠状態の勉強って恋を覚えるようなものだなと書いていて思いました。


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