第11話 招待で正体がバレる

本日はバーレッドと遊ぶ日だ


昨日の午後は、家族みんなが甘党なだけあってカフェを梯子(はしご)した。

1件目、イチの実というベリー系の酸味の強い果実をふんだんに載せたタルトを、薬草を煎じた茶葉とで頂いた。お茶の渋みがタルトの味をくどくさせず、甘さに飽きずにパクパクと食べれた。

2件目はアイスだ。魔法を使った作ったものだという。

恐らく作り方は、モモンの実を中だけ焼き上げ甘みを引き出し、残った周りを氷魔法で冷やし固めたものだろう。これなら自分でもできそうで、いろんな果実で試して見たい。

最後にガッツリと、オーク肉のベーコンとモーモーのバターをふんだんにトッピングしたパンケーキを食べた。父は5枚、母と兄は3枚、私とモチは1枚半。デザートをその前に食べていたのによく食べた。この世界で何故か大食いになってしまったかと思ったが、母曰く、魔力のエネルギー分、前の世界よりも食べる量が多くなるかもしれないとのこと。仮説だが。




今の時刻は13時。

バーレットとの待ち合わせだ。場所は以前バッグを買った子供洋品店の前。兄と 手を繋いで待つ。


今日の服装は、貴族様の相手なので上品なレースの白ワンピースだ。髪には赤色のリボンでハーフアップにしている。

兄も、白のシャツ、黒の半ズボン。おしゃれに蝶ネクタイを掛けておめかししている(主に母の趣味)。


ちなみに両親はこの後調査のための準備をするそうだ。主に私たちの冒険者服や食べ物の調達だと言っていた。

という事で両親とモチとは別行動だ。



兄と一緒にバーレッドを待っていると、


パカラパカラッ


目の前に馬車が止まった。

おう。流石お貴族様だ。馬車がよくお似合いだ。


「待たせたな!ゴウ!セイ!今日はまず俺んちに行くぞ!」


「お待ち下さい御坊ちゃま。まずは、御二方にご挨拶ですよ。」執事さんが素早くフォロー。ご主人がお転婆だと大変だね。


「お、そうだな。

今日は一日よろしくな!俺がこの領地を案内するぞ!だが、俺の両親が一目会いたいと言ってな、一旦家に迎えるから、その後領地を案内する事になった。すまんな。」


少しシュンとしてしまった。勝手に決めたことを申し訳なく思っているのだろう。


「こちらこそよろしくな。大丈夫だ。その方が親御さんも安心するだろ。セイもいいよな」


「うん。おかち!たのちみ!」

忘れていたが私は3才なのだ、演じろ、私は天才子役よ。自分に言い聞かせる。


「ふはっ!そうか!お菓子か!分かった、手配するぞ!2人ともありがとな。じゃあまず馬車に乗って向かうぞ」


パカラパカラッと

連れてこられたのはお屋敷のようだ。

何というか、お屋敷と言うよりか要塞。

豪華絢爛さはなく、頑丈さを重視して威圧感のある雰囲気だ。辺境伯だからだろうか?おそらく魔物からの侵入を拒む、国の砦だからなのだろう。



「すごいでかいな。

騎士もいっぱいいるようだな。かっこいい」


要塞の中に入ると訓練をしている騎士が沢山いる。


「そうだろ!ここの団長はいま2番目の兄さんがやってるんだ!俺もいつか強くなるんだ!」


バーレッド君は息巻いている。辺境伯の騎士団長ってかなり強そうだ。


「訓練も良くするのか?」兄が尋ねる


「俺はまだ剣を握るよりも、体力をつけることが優先で訓練に参加できるのはまだまだ先なんだ」

少し寂しそうな顔をしている


「そりゃそうか。無理にやったら体壊すしな。今は体の動かし方をちゃんと学んだ方が後々良いだろうし」と兄


「お前も、兄貴達と同じこと言うんだな。俺は早く訓練をしたいのに」

弟、妹あるあるだな。共感はできる。兄や姉に追いついて一緒に同じことをしたくなるよな。


「わたちは魔法!魔法がんばるんだっ!」


「そう言えば前にゴウ言っていたよな。魔法も剣もやるって!出来るのか?そんなこと」


「剣に魔力を通して戦ったりしたら強そうじゃないか?だから今は魔法の練習をしてるんだ。」


確かにかっこいい。刃物と魔法のコラボは厨二病をウズウズさせる。


「そ!そんなの、勇者くらいしか出来ないんじゃないか?!」

ん?なんだそれ。魔法があるなら出来るだろ。


「ん?どう言うことだ?体動かしながら魔法は使えないのか?」と兄がごもっともな質問を投げかける


「いや、ん?そう言うわけじゃないが…なんでだ?勇者しかできないと言われていたから…ゴニョゴニョ 」


うーん。この世界の人たちは勇者=超越者とでも思ってるのね。だから勇者がやっている事は別次元とでも捉えていそうだ。なんてもったいないんだ。魔法でいろいろ試したくならないのか?


話しているうちに馬車が止まった。どうやらついた様だ。


「着きましたよ。お話は後でで、取り敢えず辺境伯様の所へ向かいましょう」


執事さんが私たちを大きな扉のある部屋の前へと連れ来た。でかい扉だ。

旦那様。バーレッド様のお客様です。と執事さんがノックで伝えると


入れと低い男の人の声がした。

バーレッド君、執事、その後に続いて入ろうとしたが、兄と私は部屋から弾かれてしまった。


これは嫌な予感


「お下がり下さい。」と執事が奥にいる彼の両親であろう人たちに言う。


「お!おい!そいつら2人は俺の友達なんだぞ!」

バーレッド君は必死だ

しかし友達か…嬉しい。むず痒い気持ちになるな


だが…

「お兄ちゃん、これネックレスのせいだよね。やばくない?」


「あ、あぁ。ちょっとまずいかもな…」

兄は緊張した様に顔を引き攣りつつ、手を握る力を強める



駆け付けた騎士達が私たち2人を取り囲む…

警戒マックスだ。槍やら剣やら向けられている

さすがに怖い


騎士の中の1人が言う

「お前ら、何の目的で坊ちゃんに近づいた」


おお。犯人扱いだ。


どうしようそうしようと思っていると

そう思った時


シュタっ!!


目の前に見覚えのある影が2つ私たちを庇う様に突然現れた


本来の姿で…


「なっ!あなた方は!」


「この結界に弾かれたのか!いや〜このネックレスを感知するとはなかなかの腕だなぁ!」と父


無視かよ。あなた方は!って言ってるだろ。

いや、違うな。お母さんの顔を見ると分かる


2人とも怒ってる


場の空気がピリピリしている

母の腕の中にいるモチが2人の怒りを感じてプルプルしてる


「下がってよい。

そして皆この事は他言無用で頼む」


奥の男性がそう言うと騎士達は下がっていった。


「私はここの当主、バーニン・テイル辺境伯だ。

して、あなた方は何故こちらに?

そちらのお二方とご関係があるのですか?」


結界をすかさず張る


結界内にはバーレッド君、執事、彼の両親と、若い男性。


「まさか、ここまでちゃんとした結界を張っている奴がこの国にいるとは思わなかった。これを張ったのは?敵が味方か、確認取らねばそれには質問には答えない」


威圧感が半端ない。父は完全に怒っている。


バーレッド君は本物の威圧を前に少し青ざめている。かわいそうに。

そんな事を思っていると


「お2人にならこの結界を何方が張ったかお分かりになるでしょう。」


そう言い伯爵が両親に結界石?を渡す。


「あら、これレグルスじゃない。

どうしてレグルスの結界があるのかしら?」


母が直ぐに結界を張った本人を見破った


「やはりお分かりになりましたか。

私は元々冒険者として若い頃は活動していまして、戦争が終わりこの辺境を納める際にアドバイスを貰っていたのですよ。

何でもここの辺境は魔物がわんさかいる領地なのでね。知恵を分けてもらったのです。

その後、この部屋に安全対策として結界を張ってもらいました」


と話した。


…レグルスって誰だ。


それを聞き少し待てと、父が言うと耳に手を当て


「おい、レグルス。お前テイル辺境伯と知り合いか?

ん?あぁ、分かったよ。俺も彼女も元気だ。

今度会わせるから。お前にも伝えなきゃいけないことあるしな。じゃあな。」


電話かよ。


いや、だからレグルス…って誰だよ


「お父さん、レグルスって誰?

「「「お父さんっっっ?!!!」」」


…あ。」「ヲイ」兄。呆れた目で見るなや。


言ってしまった。


「んん。まぁいいレグルスと知り合いって事は本当らしいし害はないだろう。2人とも変装は解いて良いぞ。」


変装を解く


「お前ら!勇者様と聖女さまの子供だったのか!!なんだよぉ!勇者に憧れてるって目の前で言っちゃったじゃないか!恥ずかしいぞ!さすがに!」

バーレッド君でも恥ずかしいことがあるんだな。

顔が真っ赤だ


「おい、バーレッド落ち着け。

すまないな。2人とも。いきなり武器を向けられて怖かっただろう、本当にすまなかった。」


良い人だなこの人は、本当にすまなそうにしている。そして開口一番に私たちを心配してくれた。

親へのご機嫌取りもせずに。


「私からも謝らせてね?怖い思いさせてごめんなさいね。私はバーレッドの母、デイジー・テイルよ。

本来はあのバーレッドが面白い奴がいたって騒いでたからどんな子達なんだろうって気になったのよ。本来はおもてなしをする予定だったのに、こんな事態になって申し訳なかったわ。

お2人もごめんなさい。お子さん達を怖がらせてしまったわ。」


夫婦揃っていい人そうだ。


「いや。此方こそ疑ってすまなかったな。

バーレッド君、目標と言ってくれた事、嬉しかったぞ。伯爵方も驚かせて悪かったな。この子達が身につけてる変装のネックレスに何かあったらこちらに分かる様になってるんだ。」


「バーレッド、騙してた様で悪かったな。

言えなかったんだ、まだ公に出してない事だったから。」


「いや、仕方ないだろ。そもそもこっちが勝手に招いたんだ。謝る事じゃないぞ!

お詫びに約束のお菓子用意してもらったから、一緒に食べないか?」


「ゴウ君?約束のお菓子ってなぁに?」母が黒い笑みをして聞いている。やばい。友達にお菓子たかったってバレる。逃げよう。


私は空気私は空気…そーっと忍び足


「セイちゃん?逃がさないわよ。」

モチが哀れみの目で見てくる

そんな目でみんなや。悲しいぞ


首根っこを掴まれ事の経緯を兄がチクリ、両親は呆れ顔。あちらの両親はにこやかだ。

うむ。空気が和んだのならいいだろう。

さすが私。天才だ。だから許してくれ。


その後は両親はちょうどいいと、黒龍の調査を明後日行う事を話した。

伯爵方は調査が終わったらもう一度もてなさせてくれ、話していた。


その間私たちは、バーレッド君に色々質問された。主に話していた剣と魔法の話について。


ちなみに私は今日一日おやつ禁止だ。

目の前には美味しそうなおやつ…生殺しだ。


いかん。幼児の精神が影響してるからか、涙がうるうるしてきた。


「ゔっ!セイがうるうるしてるぞ!どうしたらいい!」

「ほっとけほっとけ。おい、セイ、調査の後ここにもう一度来れるらしいぞ。我慢だ我慢。」


「あい…」


「セ、セイ。頑張って我慢しような?

そうだ!もう外行っていいんじゃないか?!そしたらおすすめの公園とかあるからそこ行けば気が紛れていいと思うぞ!」

バーレッドが焦ってる。すまんな、不甲斐ないぜ。


「ふふふ、貴方見て。バーレッドがあんなになってる。いつもは甘えてばっかなのにね。初めて年下の子と接してるから焦ってるわ。」

伯爵方が面白そうにバーレッド君を見ている。


「おい!バーレッド!

お前お2人へ街を案内するんだろ?!

挨拶も済んだし行って良いぞ!迷惑かけるなよ!」と伯爵


「2人も気をつけてね。変装するのよ?

あと魔法は…分かってるわよね?」


威圧を出すのやめてくれ、ママン。

何かあったら危ないから私たちはモチも連れて行くことにした。


ちなみにモチは聖獣とバレない様に外では基本的に一言も喋らない様にしている。


「お、その可愛い従魔も一緒か!」


ワフっとモチは可愛いと言われて嬉しそうだ。

と言う事で両親はまだ話があるので残って伯爵と話をするそう。

私たちはバーレッド君、執事さんと一緒に1番賑わっていると言われる街へ向かうことにした。

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