第10話 チョコレート戦争 血は争えないらしい

「ふぁ~おはよう」

天気は快晴

本日はアーバン王国滞在2日目


久々にふかふかベッドで寝たため寝起きもスッキリだ。兄弟このフカフカのお布団から離れられないため30分近くゴロゴロしている。

休日オフ状態になってしまうとなかなかお布団から出てこないのだ。モチもお布団に体をスリスリさせて気持ちよさそうにしている。


「そろそろ起きなさーい」

「「うーん」」まだ起きたくなくお布団でグズグズとしていると


突然父親がバサッ布団を剥いだ。


「今日から観光だぞ~いいのか~?」


「「おはよう」」キリッ


私たちは身支度を整え外に出る。服装はエンパイヤワンピース(紺)、うさぎバッグ。

母はふんわりとしたワンピース(青色)に眼鏡をかけて変装している。父も眼鏡をかけ、白Yシャツにクラッシックなパンツ(紺)な装い。2人の眼鏡は認識阻害の魔法が掛かっている。顔立ちは変化できないためだ。

兄は白Yシャツに短パン(青)に昨日購入したバッグを装着。


今日は先に、買い物がしたいらしい。浄化魔法できれいにできるが、これから行く大国は四季があり以前いた国の装いだけでは足りない。

母は大国の姫君なので実家(城)に帰れば山ほどドレスがあるらしいのだが、前世の記憶を思い出してからか準備に最低1時間掛ける服装はバカバカしいとのこと。



よって今私たちは洋服店にいる。モチは従魔室で待機。お洋服のお店へは入れないらしい。

これいいな、と父が手に取ったのは黒いローブ。内側に起毛があり温かそうだ。

なんでも大国へ着くころの季節は冬らしく保温力のある服装じゃなきゃダメだと言う。

私はズボンに、もこもこソックス。もこもこの白いウサギフードのローブ。セットの白い手袋を購入してもらった。主に母の趣味。

兄は被害者だ。私とおそろいのウサギシリーズ黒バージョンだ。諦めた目をしている。可愛そうに。

母もスキニータイプのズボン、父と色違いの裏起毛のローブ(白)を購入。


次に靴だ。

この国に長く滞在する予定はないので、オーダーメイドではなく既製品から選ぶ。

皆茶色の皮ブーツを選んだ。寒いことと雪が積もっていたら靴の中に入ってくるのを防止するためだ。父が後程魔法で撥水加工してくれるらしい。一家に一台、父だな。


「さぁ済ませたいことは終わったしプラプラ観光するか!昨日行ったレストランのあたりなんて面白そうなお店沢山あったからな」


その後は、さまざまな雑貨屋さん、昼食もかねて屋台も回ったりした。


そして今、なんと!


楽しみにしていた冒険者ギルドの前にいる。

注意事項は魔法は使わない、だ。兄も同様生活魔法のみ、だ。


一歩中へ踏み出す...(父が)

今は父に面倒ごとを起こさないようにと強い力で兄と共に抱っこされている。


兄も私も憧れの冒険者ギルドへと入った!

中は広く木造建てで吹き抜け。正面には受付…受付嬢!!!

あ…あれはエルフさんじゃないか?耳が!

よくよく周りを見渡していると耳が生えた獣人様、小柄だが体格のいいドワーフ様!いろんな種族がいるじゃないか!だんだんと異世界に事を実感してきた。


しかしばれないように警戒している父、必死だな。確かに、冒険者ギルドなんて下手したら知り合いいるかもしれないもんな。今までどんな活動してきたかなんて聞いてないけど予想はつく。故の必死さだ。


ギルドの中に入るとやはり注目を浴びる。子供連れは珍しいのか?


因みに両親は舐められると面倒臭いとの事で少しかっこいい冒険者服へと変えている。見た目もほぼ戻して、髪と瞳の色を変えて認識阻害の眼鏡を掛けている。

モチも聖獣なので額の石を隠すためにうさ耳の帽子をかぶり変装している。


ちなみにモチは母の腕の中で絶賛人見知り中なので、静かになってしまっている。


父は私たちが倒したホールラビットやらゴブリンやらをカウンターで手続きするため買取口へ。

私たちはそれらを台におく役目だ。


「買い取りを頼む。」

とギルドカードを渡し、私たちを抱き直す父。

その隙に私たちはバッグから討伐証の部位を台へと並べていく。


「分かりやした…お前さん!Aランクか!ちと、待っててくれ。」

受付にはドワーフのおっちゃんが居たが、父のランクを確認すると上の階へ急いで登っていった。


ちなみに

両親の偽造カードのランクはA

いくら偽造でもある程度強さを表示しておかないといけないらしい。


「おいおい!お前!子供連れとか舐めてんのか?!危ねえだろ!」


すると度胸のある少年(推定12)が怒鳴ってきたが、どうやら絡んでくるんじゃなくて心配しているらしい。いや、面倒くさそうだが、親切心からなのだろう。ここは面倒ごとを避けたい。じっくりギルドを味わいたいんだ。


「おにいちゃ!ちんぱいちてくれてるの?」目をキュるん

「お兄さん。優しいんだね!さすが憧れの冒険者!」

上げる上げる。煽て上げる。これでどうだッひるんでくれッ

必殺「幼子、純粋な眼差しっ」


「し!心配とか!当たり前だろ!」

おっふ。

何だこの子は。ツンデレ属性か。見たところ冒険者服はそこまで高くなさそうだが歴を感じる。

ギルドにいる人も、そんな様子を見てほっこりし始めてる。このギルドじゃ有名なのかな?


「あらあら。お兄さん。この子達を心配してくれてありがとうね。

でもこの子達は基本依頼の時は連れて行かないから大丈夫よ。」

ヒソヒソ声で母が彼に話しかけた。


「ならいい。いらない心配して悪かったな」とスタスタさって行ってしまった。


ダッダッダッダ


先程のドワーフのおっちゃんが戻ってきた。

落ち着け。


その後ろからもう1人、ガタイの良い50代半ばくらいのイケオジが現れた。

「おぅ。お前ら夫婦がAランクの冒険者か。

俺はここのギルドマスターだ。

少し話がある。ついてきてくれ。お、チビ共もお菓子用意するからついて来い。」


部屋に通されると、美味しそうなお菓子が用意してあった。チョコだ。チョコがある。兄も驚いた様だが、途端にニヤッとこちらを向いた。


もちろんだ。食べるに決まってる。


一同案内された席に座る。ソファだとテーブルに届かない。すかさず私は母、兄は父の膝の上に座る。これで手を伸ばせばすぐ届く距離だ。兄弟揃って見事な身のこなしだ。


ギルドマスターが話を始める。

「改めて、自己紹介をしよう。俺はここのギルマスのグラドールだ。

単刀直入に聞く。お前ら、黒龍の調査に加わってくれるか?」


カシャカシャパクパクパク

パクパクパク…兄も私もチョコを食べ続ける

モチは足元で眠り始める 


「チームはまだ揃っていないがこれからだ。

なんでも防壁の外、東の方で目撃情報が出たんだ。普段なら大人しい龍なんだが、最近何故か活動が活発なんだ。討伐は場合によってだが、まずは調査だけだ。どうだ?」


カシャカシャパクパクパクパク

カシャパクパクパク


父が少し考えたそぶりをしギルマスに訊ねる

「どーだろうなぁ。なぁあんたこの国のギルド統括本部長と連絡取れるか?」


「ん?どういう事だ?

取れるがお前さん、俺を介してじゃダメなのか?」


「いいがなぁ。うーむ。

おい、2人!食ってばっかじゃないか!少し話を聞け!」


「「きいてる」」もぐもぐもぐ

ゴクっ


「俺は別に良いよ。バレたって大国行けば良いし。何よりギルマスが喋れなければ漏れない話だし。」


「私も。兄の意見に一票」キリッ


「私もギルマスに守って貰えば良いだけだと思うわ。本部長さんには連絡は入れなきゃだけどね」


「そうか、良かった。チームを組むのは得意じゃないんだ」


「何の話をしてる。わかるように言え」ギルマスが眉間にしわを寄せて父に詰め寄る


「じゃあ結界をかけさせてもらう。こっちにも守秘義務があるんでな」

父は盗聴と侵入拒否の結界を張った


それじゃぁっと両親が一気に変装を解く


「なっっっっ!お前さん!貴方様も!」

ギルマスさん心臓に悪いよな。可哀想に。

目を大きく開けて口もあんぐり開いている。


もぐもぐもぐ


「いや〜すまんな。なんせ子供がいるんでな、公に活動が出来ないんだ。」


「そ、そうか。いや、分かりました。そちらお二方のお子さんと言う事ですね?」


堅いのはやめてくれと、心底嫌そう話す父。

あ、変装解いてないや。父が頷いたので変装を解いて元の姿に


「分かった俺もその方がいい。

いや〜2人とも紫の瞳か!兄ちゃんなんて瓜二つじゃないか!

妹ちゃんは姫様の方の力が強そうだな〜面白い!

にしても勇者はチョコ好きと言われていたが、本当だったんだな!全部持ってけ!」


ん?勇者はチョコ好き?


「あ。2人に話してなかったわね。お父さんの実家はチョコレート会社を持ってるのよ?昔の勇者がこの世界のチョコの考案者だからね。」


睨む。兄は少しつねってる。父の腕を。


「いや、隠してたわけじゃないぞ?!」


「後で話、する。」兄

「父、後で表、出ろ」私


「わ、分かったよ。」父、絶対独り占め…いや母と2人で独占するつもりだったんだ。

私たちがすぐチョコを消費する事を見込んで。

くっ、この世界にチョコがあるなんて知らなかった!


「父親はそう言うものだ。がんばれ!

それと、本部長に連絡って勇者としての活動での報告か?」


「そうだ。なんせ、この国にいる事も伝えてないからな。」


「分かった。少し待ってろ」


ギルマスは電話をかけている、その間


「チョコのことは一旦保留だとして、俺らその調査に行くの?」


「居てもいいわよ。だって私たちだけで行こうと思ってるもの。ただ色々と誤魔化したりすることは必要だけど。」


「分かった。ところでその黒龍って俺たちが前見たやつか?」


「恐らく黒龍は前俺らを馬車から落とした奴だな。

あん時はお前らを守ることを優先したから後は付けなかったが、基本勇者は龍とかのドラゴン系の討伐が多いんだ。強いからな。」


「お父さんとお母さんは2人で大丈夫なの?もし戦うことになっても勝てるの?」


やはり不安になってしまう。もう離れたくないのだ。2度目の人生やり直せたんだ、長生きしてもらわないと困る。


「あぁ、お母さんとの戦闘は1番慣れてるし相性もいい。龍一体は前も戦ったことあるし大丈夫だ。」

父はそんな私の不安を感じたのか頭を撫でてくる。お母さんもぎゅっと私を抱きしめる。


「分かった。なぁ、せめて俺たちに一日訓練をつけてからにしてくれないか?俺も少しでもみんなを守れるように、なりたいんだ。」

兄は口をぎゅっと結び、強い眼差しで父に言う。


「そうか、分かった。

恐らく早くても3日後、調査に行く。

お前ら明日、バーレッド君と遊ぶんだろ?それはしっかりと遊んでいきなさい。

その次の日、訓練をするぞ。いいか?」


「うん!ありがとう。」

ニコニコで嬉しそうだ。そんな兄をみんなで撫でる。何故かモチも足元でスリスリしてる。


しばらくすると


「待たせたな。いま電話かかってるから話してくれ」とギルマスが戻ってきて父と電話を代わる


「それにしても、驚いたな。まさか偽造カードで変装までしてたとは。2人の活躍があまり報告されなかったのはそう言うことだったんだな。」


「ええ。子供達が可哀想な思いして欲しくなくて。冒険者ギルドにはお世話になってるわ。身分を隠してくれるんですもの。」


「それはお互い様だな。して、いつ頃出発できる?準備も必要だろう。」


「そうね。主人は3日後と言っていたのでその様になるかと。あ、話が終わったようね」


父が連絡を終えたようだ。


「待たせた。

黒龍の調査について2人だけのチームで行くことの了承が出た。

彼方からの要望は、勇者と聖女の姿で赴いて国民を安心させてほしいとのことだ。」


「そうか。分かった。

一応誓約魔法かけるぞ。お前らの事俺が口外しないようにな。誰にも喋らないと誓うが、何かあると困るからな。」


ギルマスが誓約書を取り出して

父に渡す。私たちの事を話そうとすると父に伝達が行くと言うものだ。

物騒なものじゃなくて良かった。


その後は、黒龍の調査を私たちに一任し、今週中までに調査結果を教えてほしいとのこと。

また、暴走の可能性がある場合は討伐なりの対処をしてほしいとのこと。


等々が決まった。


父は明後日に勇者としてのこのギルドに訪れるのでその時に討伐依頼を出してほしいと話した。


以上で黒龍の件の話を終えた。


私たちは変装を掛け直しもう一度ギルドの一階へと戻る。


「ねぇ、掲示板見てみたい」と兄


両親に抱っこしてもらい目線を合わせて見てみる。

掲示板には、討伐依頼や調査、常時依頼の討伐や薬草採取。またダンジョンなどの情報が書かれていた。


「「ダンジョン…」」


ダンジョンが現実になるとは。


「この国のダンジョンだな。大都にあるんだ。

確か初級だったよな。俺も何度か攻略したぞ。

あ、お前らまだ入れないぞ?責めて冒険者になってからだからな」


「いや、行ってはみたいけど効率よく回れるくらい強くなったらがいいな。そしたらドロップ品で楽して稼げる。」

兄よ。掲示板を見ながら言うことじゃないぞ。


周りの冒険者達は聞こえてないようだが?

いや、父が結界を掛けて聞こえないようにしていたんだ。力の使い所がおかしいよ。


「ま、そうね。そうだ!2人に偽造カード貰えないかしら?そしたら皆んなでガッポガッポ稼いでスローライフに近づくじゃない!モチもいるし護りは強いでしょう?初級か中級くらいならいいと思うのよね」


結界があるからって冒険者ギルドで喋っていいことじゃないぞママン。


お父さんも流石に笑いを堪えられない。


「お前ら!結界があるからってな!

…でも良い考えだ。俺たちにも貯蓄は元々莫大な資金あるんだがな、スローライフ貯金として稼ぐのも楽しそうだな。」


今、サラリと明かしました。

莫大な資金って何?


周りから何も聞こえないので変に思われなおようにそろそろ結界を取る


「まぁこんな感じだ。

ダンジョン行きたいならもっと鍛えてからにしないとな」


そう言い皆んなで外に出る。

ふと辺りを見渡して少年を探したがもうその場には居なかった。





何か忘れている。あっ


「チョコレート…」

私が言うと兄も思い出したようだ。一斉に振り返り父を見上げる。もちろん私たちの手にはチョコの入った袋が握られている。しっかりともらってきた。が、それとこれとは話が違う。


「いや、その、お前らめちゃくちゃ食べるだろ?!旅の時あげるとすぐなくなるから嫌だったんだ!」

父は、正々堂々真っ向勝負することに決めたようだ。


「なんて酷いんだ!お金持ってるって言ってたじゃないか!可愛い子供達に分けろよ!こんなにも俺たち可愛いのに!」

兄も大胆にぶりっ子発言で正面からぶつかる。


「じゃあ、お父さんの実家でチョコ食べ放題で話をつけましょう?私たちはお父さんの実家に貴方達の事を報告できるし、貴方達はチョコの食べ放題が出来る。どうかしら?」



「「意義なし」」ピシッ!


母の素晴らしい提案に、私たちは即座に敬礼。


「でもそれまでチョコレート足りないよ。手持ちもあんまりないし」


「どこかにお父さんのチョコレート屋さんが支店で出てるはずだから、見つけたらそこで買いましょう?」


「お父さんがチョコ食べてる所発見し次第突撃するからね。」と兄


「分かったよ。すまなかった。お店見つけたらいっぱい買おう、な?」

父が少ししおらしくなっている。仕方がないのだ。

チョコはマイライフには必要不可欠なり!!!


うむ。よろしい。兄もうんうん頷いている。

チョコレート戦争も幕を閉じ、これからはお昼を少し過ぎてしまったので

デザートを食べに行くことにした。






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