第3話 テンプレが天ぷらしてます。

…夜が明け朝が来た。


さすが幼児というのか、あの後すぐ熟睡してしまったらしい。隣で兄もまだ寝ている。

両親はテントの外にいるようだ。

うーんまだ眠い。が眠気よりも魔法だ。

隣の兄を起こして一緒に魔法をしようと思う。


ぺちぺち…

ぺちぺちぺちぺち…


起きない


私はニヤリとする。いいことを閃いた。


「フラッシュ」


兄の目の前でカメラのフラッシュの様な光を放つ。


「うううううう。

なんだよ!まぶしい!消せよ!」

兄が毛布に再び潜ろうとしている


「お兄ちゃんッ魔法ッ練習しようよ!」私が間髪入れずにそういうと


ガバッと毛布を剥いで目をかッと開いた。


…おぅ兄よそんなに魔法に反応するのかい。


「分かるぞ兄じゃよ。魔法。その言葉を聞いただけで疼くのであろう?」

「ふっ妹よ。それはお前とて同じじじゃろ。」

「「ふふふふふふふふ」」

兄弟朝から不敵な笑みをしている。



「茶番はさておき、何から始めるか、生活魔法はどうだ?」

兄が不敵な笑みからキリリと表情を正し疑問を私に投げた。

「とりあえずやってみるか」


二人で思いつく生活魔法を唱えていく

まず「ウォーター」「ウィンド」「ファイヤ」


後はーと言い兄が周りを見渡し

「クリーン」と唱えると部屋の中がキラキラし汚れが落ちていっている


「おお!すごい!」

これには驚きだ。

私はすかさず、自分にクリーンを掛けてみた。

すると昨日転倒してついた土汚れがなくなりさっぱりした気分になった。


「クリーン。おお、これはお風呂なしの時にありがたいな。」

兄もクリーンに満足しているようだ。


「あ、お兄ちゃん。魔力は大丈夫そう?魔力なくなってくると倦怠感が出て動きが鈍くなったりとかゲームの中ではするじゃない?」


「あー。なんか大丈夫そう。まだそういうのは感じられないな。まあ確かに気を付けような。」


そんな感じで魔法をテントの中で行っていたら、母からごはんが出来たと外から声がかかった。



「「おはよう」」


「おはよう。体調は平気か?」

「うん」「だいじょうーぶ」


「二人ともおはよう。そういえばさっき二人テントの中で魔法使ってたでしょ?」

「っえ!知ってたのっ?」

まさか知られているとは。兄も私も驚きだ。


「わかってたわよ。まず昨日あんな中途半端にして寝たら朝イチで試すとも思ってたし、なにより魔力感知ですぐ分かるわよ。まあピカピカ光ってたし。」


考えてること筒抜けですかいママン鋭いよ。

にしても魔力感知か…

「ねえお母さん。お母さんとお父さん二人って魔法どこまで使えるの?」

「私もそれ気になってた!」

私たちだって馬鹿じゃない。

今なら分かる。この二人はただの一般人じゃない。護衛もいらないし魔法もちょいちょい使ってるのを見ている。宿なんてやってたが何か事情がありそうだ。

まあ今は魔法について詳しく聞きたいのだが。


二人は顔を見合わせて困った顔をしている。

「ねぇお父さん、お母さん。何も全部話す必要はないんだ。ただもう子供の時みたいに無邪気ではいられないんだ。まず魔法の事だけでもいいから教えてくれ」兄が苦笑しながら話す。


「うっ確かにそうだな。気になってることは今はまだ話せない。が、魔法の事ならいいだろう。

俺は、全属性でほとんどの魔法が使える。加えて特殊な雷の属性もある。魔力の扱いについてはこの世界だと2.3番目に上手いんじゃないか?あ、剣の扱いは世界一だ!

…とまあそんな感じだ」

うん。剣の話は自慢したいらしい。触れないでおこう。


「そんな感じだ。っじゃねーよ!」兄がわなわなしてる。

いや本当なんなんだ、異世界の両親の出自がやばい予感しかしないのだが。


「つ、つぎは私ね。

わ、わたしは水と土と光属性が使えるわ。光属性が得意で上級魔法が使えるの…」

モジモジ答えてる。


「え、何その勇者と聖女みたいな組み合わせ。もうバレバレだわ。アウト」と兄

「うん。もういっそのこと隠しておいて欲しかった。平穏さん、さようなら。」と私。二人してまだ幼児なのに遠い目をしてしまった。


「「っう``」」

二人ともうなだれている。

「だからお母さん昨日、運命だったのねとか感慨深そうに言ってたのか」と兄が追い打ちをかけた。

「ウ``ッいいじゃない!あなたたちも私たち二人が違う親だったらいやでしょう?」

少し間が空き

「「いやだ!」」

なぜか私も兄も涙目になってしまった。家族がバラバラになってしまったことを想像したからか。身体年齢に精神が引っ張られているのか。


「あらあらごめんなさい。こんな涙目になって。う...でも私もそんなに想ってくれているなら嬉しいわっ!」ガバッと私たち二人を抱きしめ3人で号泣してしまった。

父も後ろでシクシク泣いている。



そうやってしばらく泣いていたが

「でも、本当にそうなんだろ?二人ともこの世界で有名人なんだろ?」兄が聞く


「あぁそうだ。今は前世の記憶があるから恥ずかしいな。確かに俺たち王道みたいな結婚したよな。まあお母さんとまた一緒に慣れていたことに今は物凄く安心している」

父が観念したように話した。いやほんと。ここで調子に乗って何人も妻がいたり、なんてハーレムしてたら泣きじゃくってたわ。


「そうね。あなたモテてたから気が気じゃなかったわ。結婚した後でさえ寄ってくる女たち。まぁあなた興味なさそうだったから安心したけど。

あ、二人が気にしてるであろう、有名人でスローライフが出来ないじゃんッていう意味で言うと多分大丈夫よ?」


「「な…なぜそれをッ」」兄弟揃って見抜かれていたらしい


ブフォッ 父が吹いている。

「お前らそこまで考え方同じなんだな。いや~さすが俺らの子」


「ふふそうね。何故大丈夫なのかというと、私たち二人の事はどの国も不干渉って決められているのよ。」


ん。思った以上の規模のお話でした。


「それって二人が貴重な存在だから?」「俺たちの存在ってかなり標的じゃん」


「まぁ待て待て。確かにゴウの言う通り子供がいたら巨大な力を持ってるからって狙われるんだ。実際結婚した後も頻繁に子供の有無について聞かれてたりした。

だから二人で変装して姿を誤魔化し、しがない宿を経営して情報を仕入れて身を守ってたんだ。二人もネックレスつけてるだろう?それは変装のアイテム。」


「「っえ」」

「ちょっとまって。じゃあ俺らの今の姿って変装してる姿なの?」

「なんて間抜けだったんだ私たち」

兄も自身の抜けっぷりにガックリしている。


「ん?そうだぞ。まだ自分らの本当の姿見た事ないんだよな。

じゃあ、ネックレス外して見ろ」


私たちはお守りとして肌身離さずこのネックレスを付けていて、外してはダメと注意されていたため外したことさえなかった。


兄も私も外してみる。


すると…


私の髪の毛がハニーレモン色へと変化。兄は髪の毛が真っ黒な色へ変化。


二人見つめあう。


コクリと頷き二人とも合図をする。

「お前ッ目が紫だぞっ!」「お兄ちゃんもだよっ目が!目があぁぁぁぁぁ」


二人とも目を抑え項垂れながら「目が!目がぁぁぁぁ~」と叫ぶ


「その茶番私もやってみたいわっ、解除ッ」

すると母も変装を解いた。今までは茶色の瞳と髪だったが、今は私と同じ髪色ハニーレモンへと変わり、瞳も透けるようなスカイブルーへ変化した。


「あなたたち私の瞳何色!?」母が私たちに振る

「か、、母さん目が真っ青だよっ」兄も答える

「な…何てこと。目が!目がぁぁぁぁぁ!」...母倒れる。


カオスだ。


「おい俺もそれやんなきゃか?」

父が残念そうに私たちを見る。


「お父さん!テンプレをやらずにいつやるの!?今でしょっ」

私は父を巻き込もうとする。


「いやお父さんそういうの見てなかったし知らないって!社畜なめんなよっ!」

父が悲しそうに地面に両手をついて項垂れている。

おぅ闇を開いてしまった。すまんすまん。


「まぁまぁあなたったらこっちの世界でも社畜だったものね。

それよりも、変装解いてみれば?」


「そうだな」

と言い父は変装を解く。


すると平凡な色合いだった茶色の髪色と瞳から、漆黒の黒へと髪は変化し瞳も深い紫へと変化した。

しかし…

「ねぇなんかマッチョになってない?あれよく見ると、お母さんも体型細くなってる?」

「え、変装って体も変われるのか。すごいな」


「これで変装もといたしリミッターが外れた。いつもより動きやすい。

…どうだ?自分らの本当の姿は」


それぞれポーチから取り出した鏡をまじまじと見る。

「モテる。」さらっと髪をなびかせた兄。

「誘拐されちゃうッ」全身を抱きしめ、いたいけな少女ポーズの私。


「…異常なほどの自信を持ったみたいだな」

「そうね。将来モテる事は間違いないし、二人とも今は幼児でしょう?誘拐してオークションで高値で売れちゃうわよ。可愛すぎて。」


「だから、変装させてたんだな。納得。俺もセイもかわいすぎる。危険だな」


「そうよ。それと二人が持つ瞳の色、それぞれの髪色にも意味があるの。

まず瞳の色はお父さんと同じでしょう?紫の瞳っていうのは勇者の血筋を表すもので、濃ければ濃いほど、濁りがないほどその力を色濃く受け継いでいるの。魔法の力、武力、どちらともね。

お兄ちゃん。あなたがそうよ。セイと比べると瞳の色が濃いでしょう?

それは勇者の血を強く引いてるってこと。世界を探してもお父さんとお兄ちゃんくらいしかいないわ。そしてセイちゃんも同様なんだけど紫の瞳を持つ者は全属性なのよ。貴重な存在ってわけ。

そして、セイちゃんの髪色。お母さんと同じよね?これは光魔法の加護が強い証拠なの。

そしてこの髪色は王家の象徴でもあるのよ…」


「え。お母さん王族?」と私

「え。面倒な予感。」と兄。怪訝そうな目をしてる。


「おう。お母さんはこれから行く大国の姫君だったんだぞ。

だがな、俺らの事は不干渉って話しただろう?いくら姫という立場でも聖女だという方が重要らしくてな。各国の国の決定では王国も容認するしかないらしく、政治、戦争、国内の事情には一切関わらせない事になってるんだ。髪色もそうだが何より、ゴウもセイも紫の瞳を持っているから勇者の血筋だ。つまりお前ら二人にも干渉できない決まりだ。」


「「法によって守られている。感謝」」手を合わせる

戦争いやだ。争いごといやだ。


「ただ悪いことを考えて近づいてくる奴も沢山いるんだ。お父さんとお母さんはそれが嫌でな。ばれないように暮らしてたわけ。」

それもそうだな。子供が出来たならなおさら。安心な環境で暮らしたいもんな。


「なるほどな。それなのにこの後大国に行ってもいいのか?」と兄が訪ねる


「さすがに二人の事をお父様とお母さまには伝えておきたいのよね。あとお父さんの実家にも伝えてないものね」


「え、それって国王と王妃に会うってことだよね。え~重い重い。じゃあ、お父さんの実家はどこなの?」

兄が胃のあたりを抑えながら話している。


「お父さんの実家は島国だから少し遠いい。お前らが、もう少し大人になって体力ついてから会いに行ってもいいと思うぞ。まあ親父には二人の事伝えるくらいはしておくか。」


「え。スローライフは?まったり採取、錬金、クッキングライフは?」

私は両手をwhyと挙げて訴える。

「お願い!アスファルトから来る熱気、排気ガスの空気汚染なんてもうまっぴらご免だ!自然ある田舎でのスローライフを夢見てたんだっ!」

兄も必至だ。手に拳を握り力説する。

多分この世界にはアスファルトも排気ガスもなさそうな気がするぞ、兄よ。


「おぉ落ち着け。説明不足だったな。安心しろ元よりそのつもりだ。

変装はこのまま続けるんだ。一応正体をばらすのはお母さんの父君に会ってからだ。あっちに信頼できる家臣がいてな、そいつらは変装しても正体が分かるから城にすぐ入れてくれるはずだ。


そこでお前らにミッションだ。

きっと父君は大国にとどめようとしてくるはずだ。初孫だからな。

そこでお前らが父君にスローライフを懇願しろ。

そこに俺の畑ライフ、脱社畜が掛かっている。


そんな予定だ。わかったか?」

真剣な目で父が言う。


「なぁ、セイ。なんか蛙の子は蛙ってこのことを言うんだろうな。」

「うん。お兄ちゃん。お父さんも中々図々しい性格してたんだね。私たちと同じだ。」


「ふふふっ。二人とも、理解できたかしら?とりあえず大国に行く指針は変わらないとして、問題は移動手段だったんだけど…


二人とも「飛翔」


できるわよね?」


そういい母は空を飛んだ。


…「おおおお!まじか!ついに人類の夢!叶えちゃうときが来たか!!」兄、大興奮

 「ふんすふんすッ!」私は興奮で喋れもしない。


「まぁとりあえずやってみろよ」父が私たち二人を落ち着かせる。


「「うんっ!」」

しっかりとイメージをして…

風を体に纏わせて…


「「飛翔」」



ゆっくり上昇していく。木のてっぺんの高さまで来た。まっすぐ上に飛ぶのは問題なさそうだ。

次に横に移動しようとする。がどうもバランスが取れない。

兄も同様らしい。バタバタと手足を暴れさせている。

父はそんな様子を見て、焦って飛んできて私たちを回収。


「おお焦った。さすがにバランスはとれないか。でもこれなら移動が断然早くなるぞ」

「え、俺らまだちゃんと飛べないよ…」


「大丈夫よ、私たちのどこかに捕まっていればいいんだもの」

「そうか!浮いてるだけでいいんだね!

あれ?でもこの魔法って風属性だよね?お母さんどうして飛べるの?」


「それはマジックアイテムね。

本来私も使えない魔法なんだけど魔力を流すだけで発動してくれるの。

1つしか持ってないのよ。貴重だからね。」


「じゃあこれで皆空を飛んで移動できるのね!」


「ああ。まぁまずは遅くなったが朝飯だ。ちゃんと食ってから移動だ!」

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