その3「いじめとデート②」


 その後、僕と地味は二人で帰路に着いていた。

 聞くところによると、彼女の家は僕の家に近いようで中学も隣の姉妹校に通っていたらしい。


 いやぁ、まさに運命と言ったところだろう。

 こんなにも可愛い地味を生んでくれた彼女の親御さん……いや、ここはもう聖母と呼んでいいかもしれない。その聖母様にも早いうちに挨拶でもしに行かねば……。


「ぁ、ぁ……あのっ!」


「ん、どうした地味?」


 おっと、我ながら情けない。

 地味が隣にいるのにもかかわらず何を妄想してるんだ……僕は。


 隣に視線を向けると、そこには僕の制服の袖をぎゅっと掴んで立ち止まる地味。プルプルと脚が震え、緊張からなのか口もパクパクと揺れていた。


 いやぁ、チューしたい……じゃ、じゃなくて‼‼ いくら妖艶で色っぽい唇をしているからってすぐにそんなことは考えてはいけないぞ、僕よ‼‼ こういうのはもっと段階を踏んで、ゆっくりと————とその艶のある妖艶な桃色の唇に目を奪われていると彼女は今にも泣きだしそうな瞳でこう言った。


「————ご、ごめん……ほ、ほんとに……ごめんな、ごめんなさい‼‼」


「……え、ど、どうした急に?」


「わ、わ……た、私のせいで……あ、あの人に……き、きらわれたと、おもうか、ら……」


「え、いや‼‼ 別にそんなこと……だって僕、ああいう感じの女の子好きじゃないから大丈夫だよ?」


 呂律の回っていない言葉。

 実に彼女らしく愛おしさまで生まれる。


 今にも抱きしめてあげたい感情を抑え、僕は心身に聞いていく。


「で……も。でもっ——わ、私なんかじゃやっぱり……つ、釣り合わないっていうか……うぅ」


「な、なんでそんなこと‼‼ 違うよ? 君は一人しかいないよ?」


「……そうやって優しいこと言って……わ、私勘違い……しちゃ、う……こ、急に告白だってして、来るんだし……や、……君の……鈴木君のこと、何にも知らないのに……」


「べ、別に……僕はただ一目惚れしただけで……」


「わ、私になんか一目ぼれすることなんてない‼‼ ぶ……ぶ、ぶさいく……だしっ」


 うるんだ瞳。

 下唇を噛んで痛ましく言う地味は見ていられなかった。


「……わ、私になんか――やっぱり、つ、つ……釣り合うわけないっ————釣り合わないよっ‼‼」


「そんなこと……そんなことないよ‼‼」


 震える身体を揺らし、叫んだ言葉。

 僕はいてもたってもいられなくなり、彼女を抱きしめる。


「地味っ‼‼」


 バサリと空を舞ったショートボブからはほのかに香るシャンプーのいい匂いが僕の鼻腔を滾らせる。


 しかし、僕は誘惑してくる匂いには負けじとぎゅっと抱きしめる。


「地味っ……僕はお前が好きなんだ‼‼ た、たしかに……地味の事はよくは分からないけどさっ‼‼ 悪い気はしないんだよ‼‼ 一目惚れして、好きになったんだよ‼‼ だから、そんなことはない‼‼」


「……や、優しい……こと、言わないで……くだ、さい」


 じわぁっと温かくなる体温。

 今にも潰れそうな弱弱しく震える地味の体が僕の胸に収まっていた。


「事実だ……何にも問題はない」


「わ、私は……鈴木君がおも、思うほど綺麗じゃないよ‼‼ ぶさ、ぶさいくだよ‼‼」


「地味は可愛い‼‼ そしてすっごく色っぽい‼‼」


「かわ、かわいく……可愛くないです‼‼」


「違う、可愛い‼‼」


「可愛くない、です……っ‼‼」


「可愛い‼‼」


 そして、思わず僕は肩に力を入れると小さな悲鳴が耳元で響いた。


「——ひゃ」


「あ、ごめっ――」


「ん……ぐふっ……いた、痛い……よ」


「ごめん‼‼ 地味‼‼」


 恐る恐る力を弱め、離れようとすると今度は彼女が力を強めた。


「——え」


「だめ……離れちゃ、やだ……」


「え、地味……」


「……」


「地味、今……」


「ぃ……言わないで……」


「ぇ……あ、あぁ……」


 それから数分間。

 顔すら上げずに、人気のいない川辺の小道で好きな女の子に抱きしめられたことは一生で一回も忘れないないとその瞬間、確信した。








「……ぁ、ぁ……ぁりが、とぅ……」


「え、いや……別に」


 というかむしろ嬉しかった。

 ずっと言わないようにしていたが——地味の巨乳の柔らかさ具合が凄まじかったしな。気にすると揉みたい衝動が抑えられなくなりそうだったから考えないようにしていたくらいだ。


「わ、私……そ、の……ほ、ほんと……にわが、まま……わがまま……な、んだですけど……」


「ん、どうしたんd……ま、まさか胸——」


「むね……?」


「いや、いやいや何でもナイヨ?」


「……?」


 おさげの黒髪が傾く。

 その奥からこちらを覗く瞳と目が合う瞬間——かぁ‼‼ やばい、可愛い‼‼


「そ、その……やっぱり……その、すず、鈴木君のことをもって知ってから……ぉ、ぉ付き合ぃ……した、したいです……」


「え?」


「その……こ、恋人契約……というか……私のわがまま……だけど、もっと知りたいから……と、友達……まずはとも、だちから……で」


「ま、まさか僕、今振られた——?」


「ちが‼‼ 違います‼‼ そんなことじゃ、そんなことじゃないです‼‼」


「え、じゃあ……」


「わ、私……まだ頭の中がぐちゃぐちゃ……で、それで、その……もう少し、落ち着いてから……お付き合い……した、したいんです……」


「……それは振られてるんじゃないのか?」


「違います‼‼」


 そして、僕たち二人。

 地味子との恋愛関係は苦節二日にして幕を閉じ、地味静香との恋愛ラブコメが始まる二回目のテープが巻き始まった瞬間だった。





<あとがき>


 片目が赤いふぁなおです。

 いやぁ、結膜下出血のせいで見た目がね……目にできるあおたんというのはこうも派手なのが困ったものですね。



 三日目にして日間16位、週間89位? ありがとうございます。

 ここまで伸びるとは思ってもいなかったので割と動揺していますが、頑張って書いていきますね。良ければ個人的に力を入れているこの作品「清楚で巨乳な学級委員長が、実はラフであざとい幼馴染だったらどう思う?~~10万文字後に絶対に付き合いだすカップル~~」https://kakuyomu.jp/works/16816700426030022252 のフォローもお願いします。


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