第7話

「ふぅ、良かったわ」


 次の日の朝、ボロネーゼが再びチラシを2人に見せる。


「王子、意中の相手は見つからず・・・まだ王子と話していない方は再び舞踏会にお越しください・・・だって!!」


 ゆっくりと字を追っていたデネブはしり上がりに声を荒げて喜ぶ。


「じゃあ、二人とも頑張りなさいね」


「「はいっ」」


 椅子に座っていたマルガリータがとても優しい母親の顔で、優しく二人に声を掛けると二人の姉妹は元気な良い返事をした。それをまた遠くから、昨日の夜に汚れた場所を掃除しながらレイラは聞いていた。




「じゃっ、行ってくるわ」


「はい、行ってらっしゃいませ」


 カタコトカタコトッ


 今日も再び舞踏会に向かうために馬車に乗ってお城へ向かう3人。

 早めに行って、香水やらもっと豪華なアクセサリーやら買ったり、ご飯を食べてくるそうだ。

 今日も・・・。

 そう、舞踏会は毎日のように開催されたが、一向に王子の花嫁は決まらずにいた。


(王子様って人はすごいなっ)


 レイラは洗濯物を干しながら考える。


「私なら、自分を愛してくれる人なんかいてくれたら二つ返事でOKしちゃうわ、きっと。それにかわいい妹たち

がいたら、選ばないなんて・・・。んーーーっ、ボロネーゼやデネブが話せれば決まっちゃうのかしら?」


 舞踏会は少しずつではあるけど、訪れる女性が減っているらしい。

 話してしまった人は二度と姿を現せないのだからそれも当然だ。

 

 舞踏会に訪れるだけでも楽しい、とはボロネーゼ達はいうけれど、遠路でもあるせいか疲れた顔をして帰ってきて、そのたびに綺麗になった部屋を散らかす。

 

「まっ、いいわ。みんなと遊びましょっ」


 レイラは最後の洗濯物を干し終わると、森へと向かった。

 すると、ひょっこりっと、リスやシカや小鳥、うさぎなんかも現れてレイラは囲まれる。

 レイラはそんな動物たちを撫でてあげると、嬉しそうにすり寄ってくる。


「みんな、ごきげんよう。さぁ・・・舞踏会を始めましょう」


 小鳥と共に歌いながら、みんなと踊るレイラ。

 社交ダンスには程遠いけれど、レイラも動物たちもとても楽しそうに飛び跳ねる。


 レイラは手の抜き方を覚えた・・・というか、仕事が早くなったのもあるし、汚す人たちが家から離れて外食までするのであれば、レイラがやるべき仕事はかなり減る。そんな余った時間は動物たちとこうして戯れていた。

 ボロネーゼや、デネブが現れると、慌てて逃げ出す動物たちもレイラの優しさが本能でわかり、レイラと一緒にいることで確信に変わる。


 レイラは動物たちとの愛する喜びと愛される喜びを感じ、次第に王子への想いも薄れていき、人生を楽しんでいた。

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