33話 調査開始

「未知の植物に行方不明者……。調べてみた方がいいか」


 一気に【魔物モンスター】が絡んでいる要素が追加されたな。

 十中八九絡んでいると言ってもいいだろう。

 にしても、それは解析終わるまで待つのは、仕事を増やされたくないからか。自分たちの管轄外と分かれば直ぐに公表しただろうにな。

 全員が全員、立花りっかさんのようには考えないか。


「ただいま」


 リビングに入ると、昼寝から目覚めたガイが寝ながらテレビを見ていた。相当熱中しているのか、俺の挨拶には返事もせずに画面に食いついていた。


 なにを真剣に何を見ているのかと気になった俺は画面を覗いてみる。

 見ているのは昼ドラのようで、「あなたの行動は監視アプリで筒抜けなのよ」と、冴えない男に証拠を突きつけていた。

 不倫の証拠でも押さえられたのだろうな……。

 にしても、不倫ドラマを見る異世界人って……。

 ドラマがコマーシャルに切り替わったことで、ガイはようやく俺が帰宅していたことに気付いたようだ。


「おお! リキ、どこ行ってたんだよ!」


「ちょっと……【開発部隊】にね。そこで、気になる情報が手に入ったんだ……。川津 海未はいないの?」


「ああ、海未なら、まだ、トレーニング中だ。自分も【ダンジョン】に挑みたいって。滅茶苦茶張り切ってんな!!」


「……オーバーワークにならなければいいんだけど」


 俺が出掛けている間もずっと鍛えているのか。

 それほどまでに――川津 海未の【探究者】への思いが強いのだろう。過去を聞いた今、彼女の努力を止めることは俺には不可能だった。

 似たようなことを、俺もしていたしな。


「んで、その気になることってぇのは、一体なんだよ?」


 俺はガイに子供達が行方不明になっていること。

 その事件に巻き込まれた隊員の家に未知の葉が発見されたことを告げた。


「なるほどな。そりゃ、【魔物モンスター】が絡んでるだろうぜ」


「だよね。だから、この事件について調べてみようと思うんだ。もうじき、【ダンジョン防衛隊】も動くと思うけど――先に俺達にも出来ることがあるかも知れないしさ」


「ま、ここでダラダラしてるよりは、そっちの方が楽しそうだしな。で、何をするか当てはあるのか?」


「ああ」


 俺達に出来ること。それは情報収集からだ。





 俺が最初に連絡を取ったのは佐々木さん。

 自分の部下が被害にあっているからか、隠すことなく情報を教えてくれた。

 現在、行方不明者が確認できているのは5つの市とのことだった。

 人数は7人。

 年齢は小学生から高校生。

 性別もバラバラ。

 なるほど。

 事件と呼ぶにはいささか人数が少ないし、統一感もない。

 【魔物モンスター】よりも家出と言われた方がしっくりくるな。だからこそ、未知の【葉】が判断材料として有効なのだろう。


 手に入れた情報を元に俺は行動に移す。

 俺達は都立小久江こくえ小学校に俺達はやってきた。

 行方不明者が出たという小学校の一つだ。

 果たして、どの生徒がいなくなったのか。

 それを知るために職員に話を聞こうとしたのだが、「個人情報なので」と教えてはくれなかった。


「俺が隊員だったら話は聞けたんだろうな……」


 今の俺達は無職であり、後ろ盾はなにもない。

 身分の証明って大事なんだな……。

 失って初めて分かる隊員証の偉大さだった。


「たく、不甲斐ねぇな、リキ。海未を見習えよ、今回の海未のやる気は半端ねぇぜ?」


「確かにね」


 大人から情報を得ようとした俺に対して、川津 海未は子供たちから話を聞こうとしていた。

 下校している子供たちに積極的に近寄っては話しかける。

 殆んどの子供は逃げていくが、中には足を止めてくれる子もいるようだ。


 因みに俺も話しかけたのが防犯ブザーを慣らされ、周囲の人たちに説明するのに苦労した。最終的には立花りっかさんにテレビ通話で俺の身分を証明して頂く形となったのだった。

 忙しいのに申し訳ない。

 その代わりに「その事件、早急に解決しろ」と命じられてしまった。

 立花りっかさんにしても、隊員達の手が足りていないから俺が解決すればラッキーと思っているのだろうか。


「ねぇ、あの子がいなくなった子の家まで案内してくれるって!!」


「おお! すげぇな海未! マジで名探偵みたいじゃんかよ!」


「ありがと。私はこれから行ってみるけど、リキ先輩とガイ師匠はどうする?」


「俺はこの後、行方不明者の親である隊員に話を聞きにいくから、そっちは任せてもいいかな?」


 今日の夕方。

 俺は【佐々木班】の隊員である礼の男に話を聞かせて貰う様にお願いをしていたのだ。

 それまでの時間を有効活用するために調査を進めていたのだが、川津 海未のお陰で順調だ。


「うん! 私に任せてよ。子供たちが事件に巻き込まれてるなんて、許せないからね!」


 川津 海未は言いながら子供たちの元へと駆け寄っていく。

 相手は高学年くらいの生徒だった。

 きっと、彼らも友達で心配なんだろうな。

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