21話 褒められるのは気持ち悪い
「さぁ、早くここから出ようか!」
恐らくこの【
俺は手に持っていた棍棒を投げ捨てた。棍棒は地面に落下する前に光となって消えた。能力に耐えられなかったのだろう。
「ガイ、もう少し耐えられる?」
『既に眠いけどな、だから、さっさと頼むぜぇ!」
「分かったよ!
「駄目。まだ、腰が抜けて……」
【
「ちょっとごめんよ」
俺は座ったままの
「へ、ちょ、きゃっ!」
お姫様だっこをして【
「もう少し!」
徐々に入口を照らす光が狭くなっていく。
俺は最後の力を振り絞り、全力で飛び出した。飛び出すと同時に墓石に黒く渦巻く【
『間一髪だったな……』
その言葉と共にガイはハリネズミの姿に戻ってしまう。
地面に倒れ込んだまま死んだように動かない。相当無理をしてくれたのだろう。
「ありがとうね、ゆっくり休んでくれ……」
能力が解除されたことで、身体能力も元の人間状態へと戻る。
「良かった。皆無事だったんだね! 時間もギリギリセーフだよ!」
川津 海未がそう言いながら
どうやら俺達が【
「さてと……。
「ま、まさか、【
「じゃあ、力が奪われなければ【
「それは……無理だけど」
普通の人間一人では力をこちらの世界に来て力を失っている【
今回、全員が無事だったのは奇跡とも言っていいだろう。
俺の言葉に
「ご、ごめんなさい……。もう、絶対に【
「うん。そうしてくれるとありがたいな。あ、そうだ。それともう1つ伝えたいことがあるんだけど?」
「そ、その。結構、本気で反省してるから、これ以上怒らないで貰えると嬉しいんだけど……?」
うん?
俺は別にそんなに怒ることはないぞ?
伝えたいことは別だ。
「いや、そうじゃなくてさ。あの時、【
俺が【
あれがなければ逆転することは出来なかった。
ありがとうと今度は俺が頭を下げる。
「へ? な、なんでお礼を?」
「だから、助けてくれてありがとうだってば」
顔を上げて、助かったと笑いながら手を差し出す。握手を求めたのだが、
「へ、お、怒らないの? 言いたいことはそれだけ?」
「いや、助けられたのになんで怒らなきゃいけないのさ」
「で、でも。私、助けることなんて――」
背を向けた
「あー、なんで
俺の手を掴んで上下に揺さぶる川津 海未。
「それは普通だ」
「なんと! ずるい! 差別だ! 人権侵害だ!!」
「分かった。分かったよ! 言いつけ守ってくれてありがとう。助かったよ!」
「ふっふーん。海未ちゃんご満悦です」
掴んでいた両手を話してガイを頭に乗せる。
まあ、確かに言うことを聞いてくれて助かったのは事実だ。
「あれを見習えとは言わないけど、感謝は素直に受け取ってくれると嬉しいよ?」
俺は
【
「い、いやああ!!」
俺の言葉に
扉を開き後部座席に座ると、一瞬俺に視線を向けるが勢いよく扉を閉じてしまった。視線から完全に隠れる
「あれ……?」
そんな嫌われること、俺したかな?
それとも本当は怒って欲しかったのか?
ふむ。
確かに怒られる場面で褒められたり、優しくしたりすると気持ち悪く感じるときあるもんな。俺はどんな場面でも褒められるの好きじゃないし。
「にしても、ここで苦戦してるようじゃ――「世界、守らせて貰います」は、まだまだ理想だね」
改めて自分に言い聞かせた俺は運転席にへと乗り込んだ。
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