17話 予知にもすがる思い
「ご馳走様でした」
食事を終えた俺は【開発部隊――佐々木班】で起こったことを川津 海未に説明をした。
テーブルを囲み食後のお茶を呑む。
「青い炎で全てを焼き尽くす竜の剣! なに、それ、格好いい!! 絶対、ハリネズミが鎧になるよりも強いじゃん!!」
そりゃ、竜とハリネズミ。
誰が比べたってそう思うわな。
俺だってそう思う。
だが、当の本人のガイは気にしているようで、「あれ、俺、ディスられてます? リキさん?」と敬語で聞いてきた。
「適当に言ってるだけだよ、気にしないで下さい、ガイさん」
俺はガイを励ましながら、今回の成果である200万の束と、望月 朝日から渡された【
ここまでは計画通り――いや、それ以上のデキと言えるだろう。
もっとも資金集めは比較的目途が立っていたからこそ、順調に進んだのだ。
だからこそ、先の見えない次の課題こそ本題であり難題だ。
それはガイも川津 海未も言わなくても分かってるだろう。
「次に俺達がやるべきこと。それは――」
俺の言葉を遮って2人は言う。
「竜にも負けない格好いい必殺技」
これはガイ。
「私が戦うための【特殊装甲】と強い【
これは川津 海未。
「いや、2人とも全く違うよ!」
自分のことしか考えていなかった。
それでも強いて言うのであれば、惜しいのは川津 海未の方だった。
ガイはカスってもいないし、カスと呼んでもいい考えだった。
俺は次に優先すべきことを二人に告げる。
「次に必要なのは情報だよ」
「情報?」
「そう。【
【
「そんなことか......。ふっふっふ。些細な問題だったね、ワトソンくん」
川津 海未は「ずずっ」と渋い顔でハードボイルドを気取ってお茶を啜る。
誰がワトソンくんだ。
「その余裕、まさか、海未は解決する方法あるって言うのかよ!!」
ガイが大仰に立ち上がり指差す。
それはまるで追い詰められた殺人犯のような態度だった。ガイって面倒くさがるくせに、ノリはいいんだよね。
「ええ。それは勿論!! 往年の探偵の如く足を使って調査するのよ!! こう見えて私、名探偵って言われてたのよ」
「足を使って調べるのは情報があるからできることだよ」
そもそも事件が起こってから現場に行ったら遅いのだ。
「改めて考えると大変だな」
「ねえねえ、私、名探偵って呼ばれてるんだよ! 凄くない!? 凄くない?」
どうしても、そこに反応して欲しいのか、上半身をひょこひょこと動かし、キセルを吸う振りでアピールする。
「はいはい。めーたんてい、めーたんてい」
「なんて雑なあしらいを」
目を見開いて椅子にもたれ掛かかった。
大人しくなった川津 海未に代わり今度はガイがアピールを始めた。
「なるほど。つまり、俺のハリネズミが持つ何かしらのレーダーが必要になるんだな」
両手を組んで肘をテーブルに置く。
どこかの組織のトップのような雰囲気を醸し出す。
「そんな機能があるの!? 凄い!! 格好いい!!」
「だろ?」
「残念ながら人形のガイにそんな機能はない。竜より弱そうって言われたからって嘘を付かない」
「だ、だってよぉ」
見栄を見破られたガイは泣きそうな顔で背中を丸めた。そんなに竜との差が気になるのか。
今まで気付いてやれなくて悪かったな。
俺は好きだよ? ハリネズミ。
「いい案はないよね。おとなしく
【
本来は
俺が逃げた本当の理由を説明すれば、もしかしたら、許しを得られるかもしれないが――
そうしたら、良からぬ奴らが絶対に現れる。
悔しいが、今は余計なことに手を裂く余裕はない。異世界からの現れる【
だから、俺達でなんとかしなければ。空になったカップに新たにお茶を注ぐ。
お湯に溶けた茶葉が濁りをもって渦を巻く。カップの中は今の頭の中のようだ。
不鮮明にグルグルと考えが無意味に回る。これを飲み干したら俺の頭もクリアになるといいんだけど。
手詰まりになり、考えることにも飽きたのか川津 海未が【
被っては外して被っては外してを繰り返す。
改めて考えてみると望月 朝日の発想は驚かされるな。
体組織を活性化させ回復を促す能力を、人の体内に流しいれることで脳内を活性化させようとは。
成功すれば武装でしか戦う術を持たない【ダンジョン防衛隊】に取って新たな戦力となるだろう。
最も今の機能は殆どない。
試しに使ってみてと渡されたものの、俺達の身に変化が起こることは無かった。
「あ! 閃いた」
ヘルメットを被って遊んでいた川津 海未が唐突に立ち上がった。
「今度はなによ?」
また下らないことを言うのだろうと想像は付くが、俺は何も思いついていない。
そんな奴が人の意見を却下する権利はない。
打開のきっかけになるかも知れないしな。
「これだよ、これ!」
川津 海未は【
これがあれば、【
「脳を活性化できるんでしょ? だったら、元々、凄い力を持った人が使えば、その能力を伸ばせるんじゃないかな?」
これを付けても俺達が何かを得ることは無かった。
川津 海未は0から1には出来なくても、1から2に、2から10に出来るのではないかと言う。
「例えば――予知とか」
「予知?」
「うん……。これとか!!」
川津 海未はスマホを操作してある特集がなされたページを俺に見せる。
そこには「未来を予測する漫画作者!?」と嘘くさい文言が嘘くさいフォントで描かれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます