第5部 宇宙間ゲート編
第64話 地球への宇宙間ゲート
【316日目 中央大陸 ネフライト 午後2時頃】
マイホームの外で第1使徒グレタとカルロネ司祭長が会話をしていたそのころ。アリスとマルチナ妹はマイホームの作業ルームに引きこもって宇宙間ゲートに関しての考察を行っていた。
♢
「お姉さま、何を考えこんでいるか知らないけどフレーバーティーを入れてあげようか? お茶を飲めば考えがまとまるかもよ?」
「うん、ありがとう。実は今ね、レベルアップした後の宇宙間ゲートをどこに作るかとか、分身をそんな感じで作ろうかとか考えていたんだよね」
「ふーん。お姉さまが分身を作るならアタシも作って欲しいな。地球の分身はいつ作るの?」
「レベルアップしたらすぐにね。だけど、マルチナの分身は私と違ってね、何体も作れないと思うんだ。マルチナは神さまじゃないから分身との感覚の共有と多重思考って分身一体が限界じゃないかな。だからマルチナの分身は地球じゃなくてもう一つの地球型標準宇宙につくろうかと思っているんだ」
「ん? それはどうして?」
「マルチナの分身はイースの本体が寝ている時に活動して、イースの本体が起きている時は寝るって感じだと思うんだよね。そうすると、起きている時間に安定した生活ができるところに分身があった方が良いと思う。なので、地球ではなくてもう一つの地球型標準宇宙に作ったほうがいい。そこは、安定しているはずだから」
「そうなの? でもあんまり何にもないと嫌なんだけど?」
「大丈夫。もう一つの地球型の標準宇宙と地球は将来的には設置型の宇宙間ゲートで繋げて行き来できるようにしようと思っているから。それまでの間はその都度宇宙間ゲートを接続して地球に行くことも出来るし」
「分かった。じゃ一つの地球型標準宇宙に行くよ」
「うん。よろしくお願いします。もうひとつの地球型標準宇宙は私、亜神(時空)アリスの本拠地にするんだ。だから、妹マルチナに居てもらいたいんだよ」
「そうなの? 本拠地って。イースか地球じゃなくて?」
「イースには女神イースさんがいるからね。女神イースの世界なんだよ。地球はホントに居るのかいないか分かんない多数の神様が信仰されているし私の本拠には出来ないな~。だから何もない真っ新な世界を私、「時空神アリスの世界」にしたいなと思ってて。将来的には地球からの移民を募って人類を導入しようと思ってる」
「へー。なるほど。でも最初の居住地? 立ち上げには人手が要るんじゃないの?」
「そこは私の生命体干渉で有用な生命体を創造して使役します。大丈夫、皇女様には肉体労働はさせませんから。もちろん私もね」
お茶を飲みながら妹マルチナと話を続けていく。
悩みどころの一つは地球に宇宙間ゲートを繋げるのにどこに繋がってしまうのかということ。分身が活動しやすいところでなければならないとは思うけど、どこに繋がるかはよくわからないというか、選べないんだよね。地球儀にダーツを投げ込むみたいなもの?
悩みの二つ目は2体目と3体目と4体目の分身を送り込む宇宙をどこにするかである。でもこれはだいたい決めてしまっている。
私は第1段階のレベルアップをすると維持可能な宇宙間ゲートは最大8個となる。分身も同様に8体まで制御下に置けるようになる。制御下に置けない分身は分身としての意味はないので8体が分身の上限となる。
というわけで、レベルアップしたら地球の他にもう3か所程度に分身を送り込みたいと思っている。理由は命の予備機を確保するため。
分身を4体しか作らないのは一度分身を作っちゃうと廃棄するときは死ななきゃ廃棄できないから心理的に抵抗感があるのと、将来なにがあるかわかんないから予備として枠を残しておきたいと考えたから。
分身が複数の宇宙に4体存在していればこの本体が滅んでもあらかじめ指定しておく優先順位で分身のどれかが本体化して一年後には亜神としての第1回目のレベルアップをしてこの世界イースに帰ってこれる。
私にとってイースの人類は地球人類同様に身近で守るべき存在になっているからね。私を滅ぼすほどの強敵は人類にとっての敵だろうから放置できなので討伐する必要がある。
♢
まずは地球に「分身1号」を作るとして。地球以外に分身を作るのは地球型標準宇宙の地球型惑星に分身2号とファンタジーA型標準宇宙に分身3号。そしてファンタジーAⅠ型標準宇宙に分身4号にするかな。
ファンタジーB、C、D、Eとかよくわからないルールのところに行ったら死亡率が跳ね上がりそうだからね。これらの場所にはいずれ時期を見て分身を送り込もう。
となると地球に作る分身1号とか地球型標準宇宙に送り込む分身2号とかが魔法が使える工夫をしておくことが必要だよね。魔法って便利だから魔法無しの生活は考えられない。
攻撃魔法などの攻撃を神力消費なしに使えるのと生存率が向上するだろうし。水や光も出せるから快適性も向上するからね。
ここ、惑星イースが存在する「ファンタジーA型標準宇宙」は魔法技術を宇宙構造の中に組み込んだ宇宙だ。
空間に張り付くように存在する亜空間。この亜空間が宇宙構造に魔術を組み込んで運用するためのスペースとなっている。
時空間操作を用いれば地球型の標準宇宙においても極めて狭い範囲だけど局地的に亜空間を展開して魔術が使用できる疑似ファンタジーA型標準宇宙空間を作り出すことが可能だと思う。
ただしファンタジーA型標準宇宙であるイースにおいては疑似ファンタジーA型標準宇宙空間作成の検証が出来ない。なので頭の中で思考実験を進めているのです。
♢
なるほどー。たぶんこんな感じで時空間操作をすると地球で疑似ファンタジーA型標準宇宙空間が作れると思うな。つまり地球でも魔術が使える。
地球に分身を作って日本に帰った私。時と空間を司る亜神にして魔術も使える。究極の異世界帰りのチート野郎と言えるねえ。一応マルチナ皇女姉タイプの女性型で分身を作るつもりだから野郎ではないわけだけど。
やっぱりビックリするほどに可愛らしい今の女性型の依り代って周囲から親切にされるしチヤホヤされて気分が良いし。このマルチナさんベースの美少女の体に慣れてしまったから異なるタイプの分身を同時に制御するのも面倒かなとも思うし。
……地球において人類の敵と対峙している私。私が神であることは伏せている。
「では少しだけ本当の私の力の一端をお見せいたしましょう。魔術空間展開! 」
「なに? 魔術だと? そんなものがある訳ー」
私の放った「睡眠1」によって取り巻きの雑魚悪者どもが次々と倒れていく。
「何をした! お前は何者だ! 名を名乗れ!」
「ふふふ。宇宙人風情に名乗る名前など無いのですよ。大人しく自分の星に帰りなさい。命だけは助けてあげましょう」……
なんてね。悪くない。「魔術空間展開!」ってコールはちょっとカッコ良いねえ。それとも「マジックフィールド展開!」の方がいいかな?「Mフィールド」って言えば無駄にカッコいいかも。
しかし魔術空間の展開に比べて魔術阻害空間の作成は驚くほど簡単で展開速度が早そうだよ?
何事も作るよりも破壊する方が遥かに簡単と言う熱力学の第2法則ですね? 違うか。
しかしこの魔術阻害空間。今の私でも簡単に出来そうだし。要するに「魔法防御」の拡張だからね。えい! 魔術阻害空間展開! おおお簡単に出来てしまった。こっちのがカッコいい! 早い! 気分が上がるね。
【336日目 中央大陸 ネフライト演習場 午後4時頃】
中央大陸ネフライトに着いてから26日目。
私、妹マルチナ、グレタ、キアラ、サーラ、エミリー及びカルロネ司祭長の7人は今日も海兵第1遠征軍団ネフライト演習場の一角で訓練や検証を行っていた。
その時は突然訪れた。
「あ。 今レベルアップした。第1回目のレベルアップ完了したようです。頭の中にアナウンス流れました。誰がこんなアナウンスを仕込んだんだろう?」
「おめでとうございますアリス様。体の具合はいかがですか? 違和感とか無いですか? ちょっと休んだ方がいいかもしれませんね。今日の検証訓練は終了してマイホームに入って休みましょう」
「うん。ありがとうグレタさん。じゃ遠慮なくマイホームの寝室でちょっと横になるから。ごめんね」
妹マルチナと寝室に入った私。実は体の調子は全然悪くない。ピンピンしているし、なんならいつも以上に調子はいい。それでもマイホームの寝室で横になると言ってここに来たのはやりたい作業があったから。さっそく宇宙間ゲートを地球に接続して分身を作ってみよう。
まずは最初にレベルアップした結果、神のステータスがどうなったのかチェックしてみましょう。
名前 アリス・コーディ(有朱宏治)
種族 亜神(時空) 人(女性)
年齢 1歳(身体年齢16歳)
体力 G
神力 F
神技 時空間操作Sエネルギー操作F
ベクトル操作F物質創造F
生命体干渉F精神構造干渉F
神域干渉F
称号 神の自覚 使徒を得る
聖地を得る 司祭を得る
巫女を得る 聖女を得る
従属神イースの主神
神力レベルアップ1回済み
うん。確実にレベルアップして神力が強化されている。これで宇宙間ゲートが作成できるはず。
時空間操作のレベル毎に使用可能となる神技を再度確認する。今回のレベルアップで時空間操作がSになったから宇宙間ゲートと宇宙内転移が使用可能となった。
時空間操作A アナザーワールド
時空間操作S 宇宙間ゲート 宇宙内転移
時空間操作SS
時空間操作SSS宇宙創造 時空神創造
宇宙内転移はどこにでも転移できる訳ではなく最大4箇所のマーカーを設定した場所のみとなる。しかも一度設定のために行かなければならない。だから現在はどこにも宇宙内転移はできない。
宇宙間ゲートを地球に接続すれば私は地球の神域に干渉できる。地球の神域に干渉できれば地球に私の分身を作り出すことができる。
分身の創造は物質創造F生命体干渉F精神構造干渉F神域干渉Fの神技を組み合わせることにより可能となる。
私の分身は亜神(時空)である私の劣化型端末である。宇宙間ゲートの接続がある限り宇宙間ゲートを通じて知覚と思考を共有できる。また、亜神(時空)の神力を分身(劣化型端末)において限定的に行使できるのだ。
さて。地球に分身作るとなると、もしかしたらグレタさんとかキアラさんとか自分たちの分も一緒に作れと言い出すかもしれない。だけど最初は一人が良いんだよね。私以外の人がいるとフットワーク悪くなるし。
で。まずは宇宙間ゲートを地球に接続だね。ゲートといっても今回地球との接続に作るのは接続ラインだけで常時自由に移動できるような通路のようなものではないのだ。
ラインが一本繋がっていて私がその都度操作して物体の移送や神力操作を可能にする。ただし接続先が地球の場合は物理法則が異なるので物質の移動はできない。
では、地球宇宙へ。
接続ーー銀河系ーー地球ーー見つけた!
それで、繋がれ! ヨシ繋がった。
いったん固定してと。次には神力操作。
「時空間操作 アナザーワールド!」
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