第3部 マルチナ皇女編

第41話 使い魔



「グレタさん。みんなを集めてくれる? マルチナさんが解放される」






 マイホームやサーラホーム(サーラ姉妹専用居住区)、フィリッポホーム(男専独立居住区)には合計10名もの人数を収容できるミーティングルームがないのでやむを得ず屋外ミーティングである。


 神力に余裕ある時でも6m級の球状異空間作成には2週間ほどかかるんだよね〜。今回人数増えて神力に余裕無かったから全然作れてなかったんだ。




「それでね。今言ったようにカルロネ司祭によるとマルチナ皇女は5日後には訪問使節団と一緒にジェダイト公都をシリトンに向けて出発する予定なんだって。

公都ーシリトンは10日 シリトンー帝都は30日間の移動を見込むそうだよ。

あと弟子の受け入れ準備出来たって言ってた。サーラさん姉妹のことだけどね」


「その件ですが、ジェダイトの連中が本当にマルチナお嬢様を解放してくれると信用してもいいのでしょうか?」


「嘘をつく理由はないと思うんだけど。でも本当かって言うと断言できないのはそのとおりなんだよね。どうしたものかな」


「このグレタにジェダイト公都までお迎えに行かせてもらえませんか。そうすれば少なくともマルチナお嬢様だけでもお守りできます」


「ーなるほど」





 マルチナさんを迎えに行くのは良いかもしれない。グレタさんにフィリッポ曹長のチーム半分を護衛に付けて巫女一名が帯同すれば何かあったときに私が瞬間移動で対応できるし。


 こっちに巫女が一人いれば瞬間移動で往復も可能だし。




 すると。シリトンには私、フィリッポ曹長のチーム半分、キアラさん、サーラさん、巫女一人か。こっちの方が多いのは変だね。


 フィリッポ曹長チームは全員グレタさんに付けるか。この人たちは傭兵だから護衛には慣れてるし分割しないでチーム運用したほうがいいでしょう。





「一案だけどグレタさん、フィリッポ曹長チーム4名、巫女としてエミリーさんかラウラさんのどちらか。

この6名でマルチナさんのお迎えに。

シリトンには私、キアラさん、サーラさん、残りの巫女一名。

この4名でシリトン待機。何かあったら巫女の「神楽」で私が瞬間移動で対応ってことでどうかな」


「アリス様。全員で迎えに行くという選択肢もあるのでは?」


「うん。キアラさん。キアラさんの動物調教役に立つし全員でってのがある意味正しいとは思うんだけど。なぜかシリトンに居なくちゃいけないような気がするんだよね。

理由はわかんないけど。なので今回は二つに割って対応したいと思います。

ということでサーラさん達を弟子にするのは止めます」


「やったー! そうしていただければ私たちもアリス様のそばで役に立てます!」





「じゃ南部方面軍に言って馬車を一台ここまで用意させてくれる?ここから公都に向けて直行しよう。ついでに街で食料とか買い込んできて」


「分かった。巫女はどっちがいいの?アリス様」


「サーラさんが決めて。色々あるだろうから」


「じゃエミリー行ってくれる? よろしく。じゃあたしは司令部にあの馬車で行ってくるよ。フィリッポ曹長、あんたも来て。あなたが移動を仕切るんでしょ?」


「分かったよ。ならグレタさんも行くか?」


「いえ、私は行きません。あなたが責任もって良い馬車を引っ張ってきなさい」


「フィリッポ曹長早く行くよ! じゃ行ってきます。アリス様」


「サーラさん、フィリッポ曹長いってらっしゃい。お願いね」









「さて。カルロネ司祭(邪)の監視だけど、動物にさせられないかな。キアラさん」


「えーあいつら頭悪いから務まらないと思うよ?」


「カラスって頭いいって言ってたからさ。私の魔術転写で思考を強化して、カルロネ司祭にも動物調教与えれば?」


「それだとカルロネ司祭の言うこと聞いちゃってダメなのでは。でも複数人の多重調教はいけそうだね。だけど1キロメルト離れると私のコントロール聞かなくなるし」




「そうか。コントロールが効けばいいのか。なるほど。だけど方法は思いつかないね。

キアラさん、魔力多めのカラスでちょっと実験してみよう。適任のカラス選んでくれる?」


「分かった。カラス飛行隊集まれ!」






 演習場のあちこちからカラスが殺到する。80羽くらい居る。気持ち悪い。キアラさんはカラスを一列横隊に整列させた。




「じゃ順に見ていこう私は左から見るからキアラさんは右ね」



 泣きもせず虚でビー玉の様な目を瞬きもせずにー うげえー 白目のカラス居る! 死んで古くなったお魚みたいでキモいんですけど。


 鳥には瞬膜って言う第2の瞼があるらしい。それか。カラス達の瞬膜は白濁していて気味が悪いよ。キアラさんが言うようにペットには出来ないなー。









「アリス様、私が見た中では魔力Fのコイツが一番ですね」


「そっか。こっちは魔力Fが2羽だったよ。じゃコイツらで行くか。


 カラス強化ーー転写!  

 そして人間言語ーー転写!



名前 NO NAME

種族 カラス(男性) 

年齢 3  体力F  魔力F

魔法 水弾1光弾1土弾1風弾1火弾1

   睡眠5回復5ステータス5神託5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行5

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5

   反応速度5防御5調教耐性3

   思考強化5老化緩和5

称号 キアラの眷属



「これでどうだ。調教耐性3付けたけど調教に影響ある?」


「一応、大丈夫。念話で話してみるね」




『聞こえるかいカラス君?』


『む、ますたーか。何の用か』


『あなた。遠くへ行っても私の言うこと聞いてくれる?』


『遠くに行って指示が届かなくなってますたーの言うことを聞かないのは馬鹿な連中だけだ。我くらいになると問題ない。遠くてもますたーの指示は守ろう』


『おお、すごい。けど、あなたはあなたの意志があるでしょう?あたしの目の届かないところでサボろうとは思わないの?』


『距離があって指示が届かなくても調教は有効なのだよ。ホントは我もサボりたいが調教の効果によってサボれないのだ。残念ながらな』


『素晴らしい。そういうことならカルロネ司祭よりも遥かに信用できる。よし、このタイプの鳥ををカラスで後2羽、デザートオウルで3羽作ろう!』


『ますたー。我に名前を貰いたい』


『そう?カルロネ司祭に決めてもらった方がいいと思うな。後でね』


『分かった』





 その後、グレタさんに持たせる神器などの準備をしていると、カルロネ司祭(邪)が馬車に乗ってやってきた。


 馬車から飛び降りたカルロネ司祭。こちらに駆け寄ってくる。


「アリス様、カルロネ司祭参上しまして御座います」


「うん。ご苦労様。椅子もテーブルもないので立ち話だけど悪いね」


「とんでもございません。大丈夫でございます」


「それで、マルチナ皇女の件ではご苦労様。マルチナ皇女と訪問使節団の人達はシリトンに来てくれるってことなんだけど、心配だからこっちからも迎えに出すことにしたんだ。だからサーラさん達を弟子に出す余裕なくなっちゃった。ごめんね。

それで、カルロネ司祭には代わりに使い魔をあげようと思って。この子達だよ」



『強化カラス3号、強化オウル3号こっち来い』



 強化したカラスとデザートオウルが私と司祭の間にバサバサと降り立つ。コワい。コイツらには私が2番、カルロネ司祭(邪)が3番の命令権をキアラから指示されているのだ。



「この2羽の使い魔を使役して司祭の勤めを果たすようにしてください。貴方の言うことを聞くように指示してあります。たぶん役に立つと思いますよ?」




 カルロネ司祭(邪)はジッと強化カラス3号と強化フクロウ3号を見つめる。ステータスをジックリと吟味しているのだろう。




「むむうーー。こやつらただ者ではありませぬな。分かりました。儂がこ奴らを使役してアリス様の役に立ちますぞ!」


「頼みましたよ。では私はやることがあるのでこれで。解散です」


「ははっ。承知いたしました」



カルロネ司祭(邪)はカラスとフクロウを引き連れて馬車に乗って帰っていった。





「カルロネ司祭(邪)。カラスとフクロウがお似合いでしたね」


「まったくね」


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