第42話 降 臨


【50日目 午後2時頃 シリトン市街地】



「それじゃグレタさん、気を付けて。行ってらっしゃい」


「お母さん、気を付けてね。マルチナお嬢様によろしくね」


「はい。お任せください。このグレタが。第1使徒のグレタが間違いなくマルチナお嬢様をお迎えし、安全にご案内いたします。行ってきます」





 グレタさん、エミリーさん、フィリッポ曹長のチーム4名の合計6名は一台の大型馬車に乗ってシリトン郊外演習場のキャンプ地からジェダイト公都に向けて出発していった。


 ジェダイト公都とシリトンは概ね300Kmの距離があって馬車でも10日ほどを見込む必要がある。マルチナ皇女たちとは途中で落ち合うことになると思われる。


 グレタさんには動物調教5を転写してカラスを使役できるようにしてある。キアラさん支配下の強化カラス2号と強化フクロウ2号とそれぞれの配下として10羽ずつをグレタさんとの重複調教状態にして馬車周辺の警戒監視をさせることにしている。



名前 グレタ・アルタムラ

種族 人(女性) 

年齢 35(身体年齢35)体力G魔力F

魔法 水弾5光弾5土弾5風弾5火弾5

   闇弾5回復5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行5

   睡眠5神託5動物調教5

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5

   反応速度5防御5老化緩和5

称号 マルチナの侍女頭

   亜神(時空)アリスの第1使徒

   亜神アリス軍団少佐

   動物の王



 グレタさん達に持っていってもらう神器としてマイホームの代用として新たに作り出した亜空間ルームを2つ。




 亜空間とはファンタジーA型標準宇宙の空間に張り付くように存在する準異空間である。


 魔法技術を宇宙に組み込む際に魔力の操作運用空間として設定された。闇弾で物質を消滅させるのはこの亜空間に物質を弾き飛ばすことによって実現されるのだ。


 私は時空間操作を用いて亜空間を操作。直径6mの球状亜空間を作り出した。その開口部を開閉するための神器をグレタさんとフィリッポ曹長それぞれに渡した。地球の携帯用スマートフォンと似ている板状の神器です。




 亜空間ルームはマイホームに比べると神力負担は無いも同然だけど、内部を居住用に加工することが出来ないうえに闇弾の攻撃が当たってしまうという弱点がある。


 しかし短期間使うなら問題は無いと思う。闇弾を使う敵なんてそうそう居ないと思うし。


 亜空間ルームの中には乾いた砂礫を敷き詰めてその上に地球の日本で建築作業の時の養生の時なんかに使うプラスチック段ボールを二重に敷き詰めて床とした。


 宿屋の備品のベッドその他の椅子、テーブルや備品を失敬して亜空間に運び込んじゃった。マイホームでも使っている球状異空間を使ったトイレと排水設備も設置。神器「イース大気」「燭台」「擬装用障壁」があれば長期間立て籠もることも出来るでしょう。






「さて、今日は4人だね。たまには町のレストランで夕食をいただこうかな?」


「いいですね。南部方面軍司令部に頼んで司令部ご用達のレストランに予約してもらいますよ。任せて」



 サーラさんは南部方面軍の伝令のところに小走りで駆けて行った。


 なんかめちゃくちゃ南部方面軍におんぶに抱っこだね、私たちって。まいっか。私は亜神アリスなのだから。人の奉仕を受ける事に遠慮は必要ないのです。









 夕刻の5時になったから予約してもらったレストランに向かうことにする。


 身支度といっても私たちは戦闘用の軍装しか持っていないし自衛のためにも軍装が安全で適している。デザートコンバットブーツ。4人全員が砂漠迷彩のフィールドジャケットとジプシースカートにハット。89式神器といういつもの完全武装で宿屋を出る。





 500mくらいの距離だということでサーラさんの案内で歩いて向かう。


 夕方の5時頃はまだ明るい。日没まではあと1時間ほどはあるのではないだろうか。街の通りは多くの人が行きかっていた。仕事帰りの職人や商人。労働者たち。私たちのように夕食に繰り出す者たち。




 意外と子供たちがそこかしこで遊んでいて微笑ましくなる。平和だなあ。「守りたい、この笑顔」なんちゃって。陸上自衛隊のキャッチフレーズです。いや違った。陸上自衛隊のは「守りたい人がいる」だった。









 通りの東側から行列を作って行進する騎馬の一団がいる。




「サーラさん。あの騎馬の集団って何か知ってる?」


「あれは教会の神官戦士じゃないかな。珍しいね。教皇庁の大聖堂の守護戦士たちですよ。聖女でも居るんですかね」


「聖女? そんな人いるんですか」


「女神イース様の巫女のことですね。キアラさんはよく知っているでしょ? 帝都で暮らしていたわけだから」


「うん。知ってるっていうか、あの列の真ん中あたりの騎馬に神官戦士に抱えられるように乗ってる子達ってあたしの知ってる聖女だわ。声かけていいかな?」


「え、そうなの? いきなり声かけるとトラブルになるかもだからあたしが南部方面軍中尉の肩書を使って神官戦士に話しかけるからちょっと待って」





 サーラさんかっこいいな。サッと決心してススッと実行。仕事できる系だよねえ。見惚れちゃう。





 サーラさんが神官戦士に話しかけている。話は聞いてもらえているようだ。





 お。話がついたかな。サーラさんが手招きしている。行ってみよう。





「アリアンナ! ノエミ! どうしたのこんなところで!」



 キアラさんが呼びかけると騎乗の聖女?のうちの一人が振り向いた。



「えっキアラちゃんじゃないの! あなた無事だったの? ちょっと待って降りるから。ごめんなさい降ろしてください」









 キアラさんと聖女の内の一人が話し込んでいる。神官戦士達は大人しいね。



 オラオラ俺たちを誰だと思っている! 教皇庁神官戦士様だぞ? お。そこの上玉女。大人しく付いて来い。大聖堂で聖女にしてやる。ひひひ。



 とか言わないんだね。立派な人達なのか。

「そこの上玉女」とかロードナイトのこと思い出しちゃった。アレ結構私の暗黒史なんだよ。亜神に転生していきなり終了するところだった。今思い出しても悪寒がする。









 暇だね。


 聖女2人をジッと見る。

もう一人の聖女は騎馬にまたがったままだがけど表情からして疲れ切って騎馬から降りる元気もないみたい。体調も悪いのかもしれない。



 しかし聖女かー。女神イースの巫女って言ったよね。ということはエミリーとラウラ両巫女は私亜神アリスの聖女とも言えるのだろうか。


 なんかピンと来ないね。良い子達で好きだけど。サーラさんの妹だけあって可愛くて綺麗だけど。


 ぶっちゃけ私が巫女にするよって言っただけの子たちだからね。何か聖女って人格優れて慈愛溢れるみたいなイメージあるから。何せ聖なる女の人だから。




 こっからだとちょっと遠くてステータス見えない。まだ話し続くなら近寄ってステータスでも鑑賞させてもらおうかな。



 ゆっくりと。神官戦士達を刺激しない様にそっと歩いていく。ラウラさんも私の陰に隠れて一緒にそっと近づいていく。



 騎馬に乗ってる聖女のステータスが見えた。



名前 アリアンナ・クレメンティ

種族 人(女性) 

年齢 15  体力G  魔力F

魔法 光生成 水生成

   神託0

身体強化 筋力1防御1

称号 クレメンティ伯爵家次女

   教皇庁大聖堂の巫女

   女神イースの巫女



 ふーん。ステータスは神託0が有るだけで後は普通か。それで称号はっと。



 教皇庁大聖堂の巫女


 女神イースの巫女



 称号の巫女がふた通りある。意味合いが異なるわけですね。


 「女神イースの巫女」って称号は、私がエミリーさん達に任命したことでついた「亜神アリスの巫女」って称号と類似のものかもしれない。表記が似てるからね。


 つまり、女神イースが巫女に任命した(仮説1)


 しかし魔法「神楽」を持っていない。神託のレベルが低いから?(仮説2)





 アリアンナさんは疲れ切って気の毒だな。助けてあげようかな? そして神託と神楽をあげたらどうなるんだろう。無性に試したい。



『キアラさんちょっといい?』


『あ、アリス様、すいません。もうちょっといいですかね。今いろいろ説明の最中で。聖地のモノリスの事とか教えていいですよね。聖地だし』


『ああいいですよ。聖地だし。あれは目立って良いのです。そのように作ったのですから。

それで馬に乗ってるアリアンナさんですけどキアラさんの友達ですか? ちょっと体調悪そうだし、色々助けてあげようかと』


『お願いします。友達です。アレキサンドライトから1000キロルも馬に乗ってきて体調悪いらしいです。助けてやってください』




 よし。ではまずこれで聖女二人まとめて。


ーー転写 念話 ステータス!



『アリアンナさん。聞こえますか』



『ああ これは イース様の神託でしょうか。私は遠く異国の地で疲れ果てて信教に殉じて死ぬのでしょうかイース様』



 む。イースじゃ無いけど取りあえず助けてしまうか。



『我が愛子よ。そなたの頑張り見ておりましたよ。貴方に恩恵を授けましょう。その前にー神技 生命体干渉 治癒!』



 アリアンナの外見は変化ないが、体内の疲労と損傷そして栄養不足は瞬時に回復した!



『イース様! 身体が! 元気になりました!ありがとうございます!』


『ふふふ。まだまだこんなものじゃありませんよ。ふたりまとめて』



ーー転写 神託 神楽!



 神楽は神域からは転写できないが隣のラウラさんからは転写できるのだ。



『アリアンナよ。あなたに魔法をいくつか恩恵として与えました。あなたは魔法「ステータス」が使えるのでステータスを見なさい』


『はい。ああ! 魔法がこんなに! 神託がレベル5になってる!』



名前 アリアンナ・クレメンティ

種族 人(女性) 

年齢 15  体力G  魔力F

魔法 光生成 水生成 念話5

   ステータス5神託5神楽5

身体強化 筋力1防御1

称号 クレメンティ伯爵家次女

   教皇庁大聖堂の巫女

   女神イースの巫女



 アリアンナはしばし絶句してステータスを確認している。





 まだかなー。ステータスの確認長いな。






 ……チリチリチリ……


 はて。この感覚は?


 むむむ!!魔力が動いている!!


 この魔力の波動はー。



 これは誰かが神託を使っている! そして私は神託を使っていない。


 女神イースだな!


 女神イースが巫女アリアンナと!(仮説3)


 という事はアレがあり得る。(仮説4)


 私だってまだした事ないのに!





 騎乗の巫女アリアンナの更に上。空中に柔らかな光の波動があふれ出してきた!


 光は凝縮していき12歳位の子供(女)の姿に変化した! 身長は155cmくらいだ!




 白いゆったりとした法服。足元は白いサンダル。髪はブラウンで肩までのポニーテール。瞳もブラウン色の杏眼。パッチリとした黒目と丸みを帯びた眼はピュアで無邪気な幼なさを感じさせる。かわいい。


 これが神なのか? かわいいけど、あんまり神々しくないぞ。



 神のステータスは見れないが依り代部分のステータスは見えるはずだ。女神イースは亜神のはずだから。なぜなら真の神とはあの時空神の様な神を言うのである。


 レベルが8以上違う。比較するのも阿呆らしい絶望的な差があるのだ。



 空中に出現した女神イース(仮)はゆっくりと降下していき地に足を付けた。



「女神イース様です! 皆の者、騎馬から降りて姿勢を低くしなさい!」



 巫女アリアンナの凛とした声が響き渡る。

神官戦士達が慌てて下馬して跪いていく。



 どれどれ。ステータスを拝見。



名前 イース

種族 人(女性) 

年齢 6011(身体年齢12)体力G魔力D

魔法 水弾7光弾7土弾7風弾7火弾6

   闇弾5回復5ステータス5

   浄化5結界5念話5

   探知5魔法防御6

   睡眠5魔獣調教1

身体強化 筋力7持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性7麻痺耐性7毒耐性5

   防御7老化緩和6

神技 時空間操作Pエネルギー操作M

   ベクトル操作Q物質創造R

   生命体干渉K精神構造干渉K

   神域干渉K

称号 亜神  魔獣の調教師




 うわっ! 強い!!

 レベル7攻撃魔法持ってる!!



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