第23話 聖 地

【33日目 朝 シリトン】




 翌朝。南部方面軍司令部の控え室に入ってお茶を飲んでいると司令官と痩せた小男が金貨を持ってきてくれた。



「皇女姉君殿下、ご要望の品です。お納めください」



 お盆の上に乗った金貨10枚を薄い高級紙で包んだ塊を10個、キレイに見栄え良く俵積みにレイアウトしてある。皮袋付き。ありがたい。



「ありがとう。助かります」



 グレタさんに受け取ってもらいキアラさんに持たせる。



「皇女姉君殿下。ロードナイトの風という傭兵パーティが来ておりますよ。如何されますか?」


「ありがとうございます。お手数ですがこの控室まで連れて来て頂けますか?

それからロードナイトの風の4名は常に私達と同行して夜も同じ宿屋のどこかに宿泊してもらうように手配して頂きたいと思います」


「承りました。その様に手配いたしましょう。では失礼致します」





 しばらくしてロードナイトの風が案内されて来た。



「おはようございます。皇女姉君殿下。仰せのとおりロードナイトの風4名、参じました」


「おはようございます。ところで皆さんのお名前を聞いていなかったので教えてください。それと昨日の様な話し方で楽にして下さい。会話に時間がかかると護衛任務に支障が出ますので」


「はい了解です。私はリーダーのフィリッポ35歳の軽戦士です。順番に自己紹介」


「ニコラ20歳です」


「ジョルジュ18歳です」


「ルイージ16歳です」


「アレキサンドライト帝国マルチナ皇女の姉アリスです。改めてよろしく」


「アリス様の侍女頭 グレタ・アルタムラです」


「同じくアリス様の侍女 キアラ・アルタムラです」



 フィリッポさんは35歳。身長180cm細マッチョなおじさん。髪色はダークブラウン。



名前 フィリッポ・パチーノ

種族 人(男性) 

年齢 35  体力F  魔力F

魔法 光弾4風弾3光生成

身体強化 筋力1持久力1防御1

称号 パチーノ準男爵家3男



 ニコラさんは20歳。身長175cm、中肉中背。髪色はダークブラウン



名前 ニコラ

種族 人(男性) 

年齢 20  体力F  魔力F

魔法 水生成1

身体強化 筋力1持久力1



 ジョルジュさんは18。身長175cm、ガッチリ骨太ラガーマンタイプ。髪色はダークブラウン



名前 ジョルジュ

種族 人(男性) 

年齢 18  体力F  魔力F

魔法 光生成1

身体強化 筋力1持久力1



 ルイージさんは16歳。身長180cm痩せ型、髪色はダークブラウン



名前 ルイージ

種族 人(男性) 

年齢 16  体力F  魔力F

魔法 無し

身体強化 持久力1



 雇用したのでステータスは確認しておく。自己申告と相違ないね。よし整理出来た。



「まず雇用条件ですがザックリと一人当たり月額金貨3枚。行動は共にしてもらいますが夜は自由にして下さい。


「お休みは不定期に都度調整します。とりあえず今日からの一か月分は先払いします。

今後も基本的に先払いとします。突然に精算する暇なくお別れということも有るからです。


「それから私たちの個人情報を始めとする知り得た全ての情報は秘匿してもらいます。守秘義務ですね。


「勤務時間の管理や賃金の支払いなどはグレタさんが担当しますので今後のやり取りはグレタさんと行って下さい」


「分かりました。我らロードナイトの風、しっかりと努めますよ。任せて下さい!」


「よろしくね」







 司令官の概況説明を聞きながら考える。

よく考えたらこれからの5日〜6日間。午後だけ暇になってもなんにも出来ないね。市街地だから目立つし訓練も出来ない。方面軍の練兵場を借りるのも不味いし。


 そうだ。食糧買い込んでアンバー高原にこもろう。6日〜7日程こもってからシリトンに出て来ればいい。公都からの責任ある人は待たせればいいし。


 失礼ってこともない。そもそも襲撃した挙句に大規模検索まで実行して私達の行動を著しく妨害したんだからまだまだ生温い。

 相手の言いなりだと舐められるかもしれないしね。そしてもっと金貨を強請ろう。





♢♢





 私たちは南部方面軍の馬車に乗って市街地の市場に来ている。概況説明を途中でぶった切って明日以降の予定も全てキャンセルして食糧を調達してそのままアンバー高原に向かう。


 6日〜7日後に戻るからロードナイトまで馬車で迎えに来てもらう予定だ。


 南部方面軍は作戦部隊だから予定の急変は戦闘の常。何の問題もない。


 これから出かけると言った時は司令官とかビアンコ中尉とかロードナイトの風の4人は唖然としていたがスルーする。


 フィリッポさんには1か月分の賃金として金貨12枚を渡しておいたよ。自由にしてて良いからねって言っておいた。


 市場でグレタさんが鍋、フライパン、パン、まな板、包丁、その他料理用器具と、芋、人参、小麦粉、塩、砂糖、胡椒、オリーブオイル、唐辛子、ニンニク、干し肉、ベーコンとありとあらゆる食材を大量に買って行く。南部方面軍の支払いだから遠慮はない。





 昼前には大型馬車をぶっ飛ばしてロードナイトへ。アンバー高原から撤収する部隊の列がまだまだ続いている。


 撤収部隊とすれ違いながら進んで夕刻にはロードナイトへ至るもそのまま通り過ぎてグレタさんたちと出会った洞窟まで走ってもらって到着。既に日没。


 荷物を降ろした後ビアンコ中尉とお別れ。ちょっと寂しい。




 司令官には「追跡したり監視しないでね。分かるからね。それから今度は金貨600枚準備しておいてね」と頼んでおいた。1日あたり金貨100枚の計算である。


 私達の行動を制約する対価としては妥当な金額だろう。彼らは知らないだろうが私は神なのだから。


 監視は無いとは思うけど、しらばっくれて誰かが勝手に実行した体で追跡監視する者がいるかも知れない。



 食糧と資材をマイホームに放り込んだ後3人と一匹で走り出した。グレタ、私、キアラの一列縦隊。ボブはキアラさんが抱っこするいつものパターンである。既に日没後で夜間走行となるが構わずに走り続ける。巨大な三日月が西の空にあって十分に明るい。





 2時間ほど走ってボブが怪我をして倒れていた場所を通り過ぎ私が転生したと思われる場所に到着した。









「ここまで来ればとりあえず良いかな。

みんな注目して。ここが私、亜神(時空)アリスがイース世界に降り立った場所です。私としては記念の場所ですよ」




 グレタさんとキアラさんは私が思ったよりも何かを感じているようだ。二人とも目を閉じて立ち尽くしている。




「ここが。ここにアリス様が降臨されて。あの時この場所だったからー。私たち親娘とボブが救われたのですね。感謝します」




 グレタさんはしゃがみ込んで地面を触る。




「お母さん。この場所は亜神(時空)アリス様の降臨の地。要するに聖地だよね。何か目印欲しいね。モニュメントとかモノリスとか。

そうすれば後々、巡礼の人とか信者の人達の目印になるし教会やメモリアルパークとか建設できるよ」


「それです! さすがキアラ。私の娘。凄く優秀です。これは是非とも何かお造り頂けると我々使徒としても鼻が高いですね。

アリス様、恐れながらお力の一端をここで解放して頂いて後世の信者達の道標となる記念碑的なものをー」




……この発言を聞いていて私の心の奥底のさらに奥 神域から非常に心地良い 喜びの波動が湧き出してきた


……これが神の本能なのか

本能的に求めている 信者を欲する そして崇めて欲しいという根源的な心の渇き

良いでしょう 作りますよ 全力でね




「我が第1使徒たるグレタ、第2使徒たるキアラよ。そして我が御使の神獣であるボブ。

あなた方の導とするべくここに我が神力を結集しイース世界に降臨した最初の一歩。その足跡を記す事としましょう」




    「ーーー 光あれっ ーーー」




 神技「光生成」で暖かく優しい光の波動を広範囲に生み出す。


 神技 エネルギー操作による光生成は神域から無限に、ノーコストで光を生み出す永久機関である。神力の負担はほとんどない。



「出よモノリス! 我が足跡の徴となせっ!」



 直径20m厚さ1mの円盤状の台座がゆっくりと姿を見る。引き続き高さ10m底辺の一辺が5mの五角柱をブッ立てていく。高さ9m以降の先端は五角錐となっている。


 そしてこのモニュメントの内部には光生成で均一に柔らかなイース世界の満月のような光を発生させる。


 神力ギリギリになってきた。転生の瞬間に私が向いていた方向。恐らく例の洞窟の方向。その面に私。その下にグレタさんとキアラさん。そしてボブをそれぞれ象ったシルエットを一際明るく表示していく。神力後ちょっと。


 最後に台座の裏から幅10cm長さ20mのアンカーを地中に3本打ち込む。自宅の石膏ボード製壁にフックを取り付ける時のアレです。



 以上全て障壁使用である。エッジ部分は全て安全処理をした安心設計。巡礼者が怪我したら困るからね。そういえば、ロードナイトで緊急展開した障壁には安全処置施す暇なかったね。


 よし。これでモノリス型神器の完成だ。神力はほぼ底をついており神力の運用としては危険状態だが私の奥底の神格の部分は痛く満足しているような。


 クルリと振り向いてグレタさんキアラさんを見る。2人は立ち尽くしてモノリスを只々見ている。





 日本語で

「アースの亜神アリス この世界イースに降臨す」


 英語で 

ALICE DEMI GOD OF EARTH DESCENDED THIS WORLD EETH




 と書いてみた。文法超怪しいけど誰も指摘する事は無いだろう。多分。


 更にイース世界でのこの地域で使用されている言語、仮にイース語とする。それで書いておく。




 イース語

『アースの亜神アリス この世界イースに降臨す』




 イース語でも書くのは私の中の神格がどうしようも無く求めるから。布教せよと。


 これを見て私の情報が広がるならしょうがない。神の仕業としか思えないでしょう? このモノリス。亜神アリスですよ。信者になってくださいね。という気持ちな訳です。



 これで良いでしょう。2人と一匹には存分に感動に浸って貰いたい。



名前 アリス・コーディ(有朱宏治)

種族 亜神(時空) 人(女性)

年齢 0歳(身体年齢15歳)

体力 G

神力 G

神技 時空間操作Aエネルギー操作G

   ベクトル操作G物質創造G

   生命体干渉G精神構造干渉G

   神域干渉G

称号 神の自覚 使徒を得る

   聖地を得る



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