雨と透明人間
シチセキ
第1話
学校の帰りだった。
雨が降り出した。
それはもう痛いくらい、
急で、
強くて、
重かった。
傘はいらないと思った。
やっと、気づけたから。
わたしって、ちゃんと私なんだなあって。
生きているという実感が、ボツリ、ボツリと体を打つ。
天から与えられる生の感覚に酔いしれて、
このまま、帰りたくない。
天と私とを繋ぐ唯一のもの。
もう少し、
もう少し……。
ああ、このまま止んでしまうくらいなら、
いっそ、そこまでつれてって。
雲の間から漏れる光に手をのばして——
雨が止んだ。
わたしは、どこに行ってしまったのだろう。
雨が止んでしまったら、
もっと手首を切らないと、わからない。
雨と透明人間 シチセキ @sichiseki
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