TAGOSAKU
こうのと
タゴサクと鬼の宿
昔むかしの山の中、タゴサクという者がおった。
タゴサクは、山ん中を一人で歩いておった。
ちょっとした用事で隣村まで行ってたんじゃが、ちょっと遅くなってしまった。
山の道は、真っ暗で迷いやすいし、家までは遠い。
タゴサクがどうしようかと考えておるが、どうしょうもない。
その時、ボヤリと明かりが見えた。
何とか泊めてもらおうと行ってみると、古いけど大きなお屋敷。
「すみませーん、私はタゴサクといいます。一晩泊めてもらえませんか」
すると中から低い声で、
「ここは鬼の宿じゃ。泊めてやらんことはないが、土産はあるか?」
「土産ですか……」
「面白い話か肉」
「もし、何もなかったら?」
「お前を食うしかなかろう」
鬼の声が一際怖くなった。
タゴサクは、あわてて逃げ出した。
そして、すっかり道に迷ってしもうた。
すると、目の前に現れたのは、山犬の群れ。グルルと唸って、襲ってきた。
さぁ、逃げるタゴサク。
追う山犬。
さらに逃げるタゴサク。
さらに追う山犬。
何とか逃げ切ったタゴサク。
さんざん走り回ってしまった。
疲れたし、喉も渇いたしで、座り込むと、目の前にお地蔵様。
申し訳ないと思いながらも、お供えのお酒をもらって、飲みほした。
「こら! 儂の酒を盗んだなぁ」
お地蔵様が、怒って目を見開き、タゴサクの背中にしがみついた。
離れない。
もう、怖いし、重いしで、パニックのタゴサク。
何とか走ろうとするが、背中のお地蔵様が重くて走れない。
ギリギリと歩いてみるのが精一杯。
悪い事は重なるもので、山犬にも見つかってしまった。
背を向けて逃げるタゴサク。
でも、頑張っても、歩くだけ……。
山犬に追いつかれて、噛みつかれた。
「んっ、痛くない」
何と、山犬はお地蔵様に噛み付いていた。
その噛み付いた山犬のお尻に別の山犬が噛みつき、さらに、その噛み付いた山犬のお尻に別の山犬が噛み付き、またまたさらに、その噛み付いた山犬のお尻に噛み付いた山犬のお尻に別の山犬が噛み付いた。
気付けば、タゴサク→お地蔵様→山犬→山犬→山犬の変なパーティーの誕生。
そのままズルズルと這うように進んで行くと、目の前に現れたのは、鬼の家。
戸が開かれ、顔を出したのは、笑顔の鬼。
「おお、さっきのタゴサクか。面白い話と肉を持ってきたのじゃな。さぁ、一晩泊めてやろう」
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