自己正当化、責任転嫁
そして翌日。
前日の騒動に対しての断罪が行われることとなりました。
第一会場の中心に昨日の騒動の犯人が二人、間に2メートルの間を開けて床に正座させて始まりました。
「パーカー男爵令嬢シンディ。そなたは下位貴族にもかかわらず招待を受けていない舞踏会に乗り込んだ罪は重い。さらに聴取の際にエマーソン公爵家当主に対しあらぬ罪をかぶせ続けた罪は不敬罪に値する」
シンディは悲しい表情で左右に首を振ります。
彼女は後ろ手に縛られ、猿轡をかまされて発言を許されていません。
事前に聴取を受けたものの、自己正当化、責任転嫁。
挙げ句の果てに私に対して冤罪をかけてきたのです。
どうやら彼女の言い分では、私は嫉妬に狂いシンディを何度も殺そうとしたとのこと。
それには聴取をしていた役人たちが声をあげて笑ったそうです。
その理由は明かしていないため、事実を知ったときが楽しみだ、と報告されています。
「そしてクラーク侯爵子息レイロッド。そなたは 自らの立場を顧みず、愚かにも招待もされておらぬ舞踏会に下位貴族である令嬢を連れて入ろうとしただけでなく、会場内で騒ぎを起こした。負傷者は8名。そなたの罪もまた重いものである」
「お、お待ちください! 私は公爵であり、無礼を働いたのはしがない侯爵令嬢の立場であるアーリー・エマーソンの方です! 不敬罪に問われるのはあの女! 私の婚約者シンディを殺そうとしたアーリーにございます!」
「不敬罪はそなただ、クラーク侯爵子息。誰がそなたに発言を許した」
「も、申し訳ございません。ですが、私は公爵です! 真実を訴える権利はあります!」
「黙れというのがわからぬか! 衛士、こいつにも猿轡をかませよ!」
「や、やめぬか! 私は公爵だぞ!」
後ろ手に縛られて押さえつけられた姿で騒げば簡単に猿轡がはめられます。
そうして猿轡をはめられたレイロッドは憤りを隠さずに進行をしている宰相を睨みつけていますが、宰相は更なる人物を召喚することにされたようです。
「クラーク侯爵。前に出られよ」
「はい」
宰相に名を呼ばれて、消え入りそうな声で返事をすると二人の間まで進み出て
「さて、そなたの爵位は
「はっ。我が家の爵位は
「では隣にいるそなたの息子レイロッドの爵位はなんだ?」
「レイロッドはまだ爵位を持たぬ若輩者にございます」
「それは
「いいえ、我が家は侯爵にございます。公爵などと名乗ったことなど一度もございません」
「ではそなたの息子は虚言癖があると申すか? 爵位を偽ることは重罪だとわかっておるのか」
宰相と父親とのやりとりに、驚いた表情で父親の顔を見ているレイロッド。
彼は本気で侯爵と公爵を間違えていたというのでしょうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。