ザ・ログブック~人生を記録する魔導書~
萩ポン
プロローグ
英雄が残す物
「『聖人族』は何故ここまで堕落してしまうのか、俺は頑張った。頑張って神と創成主の理想の人族を作るために努力した。しかし、結果はこうである。人間はまたも堕落し、聖人族としての力を失っている」
王の執務室で一人になった夜に男性が独り言を喋っていた。王国の名は『オルティア』で彼の名前もまた『オルティア』であった。聖人族が元々いた大陸は『破壊神』の手先である『傲慢のネクロマンサー』により捨てざるを得なかった。ネクロマンサーを倒し、新大陸を探し出し移住を成功させた彼は皆から英雄とされていた。その英雄の名を国の名前にする、ということはどこの人間も似た考えをするのだろう。彼はそのことに関しても少し気に入らないが、皆の意見であるからこそ受け入れていたのであった。
「このままだと王国の全ての人族は『堕落人族』になってしまう。神は人間の願いには答えなれない、それはあった俺が一番知っているのではないか」
男は少し悩んだ後また独り言を話すのであった。
「『玉手箱』でも堕落が始まっていると聞いている、『ティーダ』の奴がちゃんと聖域を守っているはずだろうに人間はあんな遠い場所まで歩き流れていくものだな」
国の王である彼は何か決心したように真剣な顔になるのであった。
「そうであれば、神には悪いけど。俺の物語を『ログブック』から消して、この魔導書を後世に、人族を救える人物のために残すことにしよう。人間は堕落し続けるだろうが、数百年が過ぎるだろうがいつになるだろうが俺は人間を信じたい」
彼は身に溶かされていた魔導書を呼び出すと自分の人生の記録、つまりは彼が死んだ後に神が楽しむための人生の記録を削除し始めた。
「この魔導書を持つだけでも『
彼はおそらくこの王国で自分しか知らないだろう言語を表紙に書き始める。それは彼がこの世界での人生が初めてではなかったことを示す証拠になるだろう。この本を開ける者もまたその事実に気づくだろう。
「この本を手にするだろう後世の子孫よ。君は俺が望むような物語を描けるであろうか、それは知らないし見ることもできないだろう。『ヴェリチェド』様申し訳ございません。俺の物語はこの本を持ち込んでくる『未来の者』から聞いてください」
彼は本を閉じると封印するのであった。
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