第43話

「こんにちは、ノエルちゃんのお母さん!」そういった僕をノエルちゃんのお母さんは微笑みながらリビングまで通してくれた。

 今の時間は丁度正午。僕は記憶を頼りにノエルちゃんの部屋へと向かった。まずは2回ドアを叩き入っていいかの確認を取り、部屋へと侵入する。僕がノエルちゃんの部屋に入るとそこには布団にくるまっているノエルちゃんの姿があった……大丈夫?

 そう聞けたらどれほど良かっただろうか? 僕は何か恐ろしい蓋を開けたような気がして口を挟めなかった。不穏な空気が纏っていたその時、ノエルちゃんが僕に向かってまるで弱々しい病人のような声量で僕に言った。

  

「ねぇ、海里くん。 私の魅力って何だと思う? ロールプレイングができること? 

けど、それは他の人も出来るよね? 私だけが持つ魅力ってなに?……黙ってないで答えてくれないかな?」そういったときの乃恵留ちゃんは まるで壊れかけのガラスのように繊細に見えた。僕は夜空としてではなく、如月如恵留の同級生。天津海里としてノエルちゃんに言った。


「乃恵留ちゃんは乃恵留ちゃんだよ…… それ以上でもそれ以下でもないよ。乃恵留ちゃんは自分にしかない魅力を探しているみたいだけど、他の人と同じような魅力を持ってて悪いの? 乃恵留ちゃんは僕、天原夜空の目から見ても沢山の魅力があるよ? それなのに自身に魅力がないなんて言わないでよ……」

 

 喋り始めたら止まらずに長文を喋ってしまっていた。魅力がない? それは僕が常日頃思っていたことだった。でも僕はその不安を克服した。ファンのお陰で…… ノエルちゃんも必ず克服できる。僕はそう言い切ってから乃恵留ちゃんの家を急ぎ足で出発した……


「海里くん! 乃恵留ちゃんはどうだった?」僕が乃恵留ちゃんの家から出発してからやく20分が経ち僕はマネさんにそう質問されていた。僕は少したどたどしくなりながらマネさんに今の現状を伝える。

 「乃恵留ちゃんは今、危ない状態です。僕は乃恵留ちゃんに思いを伝えましたが、それを受け止めるかもわかりません……」僕がそう言い終わるのと同時に自分の目元から大粒の雫が僕の皮膚を垂れていった。

何故だろう? そう考えると答えはまるで

最初から出てたかのように頭に浮かんだ。

僕はVオフィス二期生がバラバラになってしまうかもしれないことに恐怖を覚えていたのだ。 もし、乃恵留ちゃんがVtuberとして

活動を休止してしまったらどうしよう? マネさんのことだからVオフィス二期生は続くだろうけど…… 僕はノエルちゃんが居ない二期生なんて考えられない。 僕は目元を自身の手で拭いながら、僕は延期した事についての謝罪動画を投稿した。


『友達のみんな…… ごめんね…… Vオフィス内で少し、問題があったからコラボ配信はそれが収まるまで延期になっちゃう…… ケン君のファンのみんなもごめんね……』


コメント欄 

お茶漬けっ子:大丈夫だよ! それに教えてくれてありがとう!

黒潮海流:夜空たんは同期思いだから辛いはずです。頑張ってください……

……………………………………………………

Side乃恵留

「私には魅力があるか……」私は頭の中で

海里くんが言ってくれた言葉を巡らせていた。しかも、彼は『他の人が持ってる魅力で何が悪いの?』と言ってくれた。私に向けてそう言った時の海里くんは本当に私のことを考えてくれて…… 海里くんに失礼な態度

取っちゃったかな…… 過去に思いを馳せると急激に恥ずかしくなる。同期である海里くんが魅力があるって言ってくれたんだ。

「うん!」私はほっぺを一度叩き、自身のTwitterで復活の報告をツイートした。

 @悪女ノエル

#待たせたのじゃ! 完全復活なのじゃ!


私が報告をすると1分も経たずに海里くんからリプライが届いた。

@天原夜空:復活おめでとう! 戻ってきてくれて良かったよ! 本当に大好きだよ!


海里くんからそのメッセージを受け取った時、私は胸がきゅっときつく縛られるような感覚に戸惑ってしまう。何故だろう? そう考えて頭に浮かんでくるのは私に向かって思いを綴ってくれた海里くんの顔だった。  海里くんのことを考えると何故か心の鼓動が速くなってまるで海里くんに恋しているみたいな状態になってしまっている。 

 

もしかして私は海里くんが好きになってしまったのではないか? そんな仮説が私の頭の中に浮かび、その仮説は正解だと言わんばかりに私の心の中にすっと入っていった。 「私は海里くんが好き……」そう口に出してみるとなおさら理解した。私は彼、天津海里に恋をしている。けど、それはあってはならない事。私と彼はビジネスパートナー、Vtuberという存在に恋愛は存在しない。だけど、もし出来るのなら一度だけ海里くんと

デートしたい…… そんなあるはずのない思いを抱いた私は今更ながら「私って乙女だなぁ〜」 と呟くのであった………

…………………………………………………………………………………………………………

ということでノエルちゃんの復活と乃恵留

ちゃんが海里くんのことを好きになってしまった話でした。どうでしたか? 言っときますがこれはラブコメではありません。ですが、海里くんのことを好きになってしまった乃恵留ちゃんがこれからどう配信活動に取り組むか、予想しながら次の話も楽しんでくれたら嬉しいです。


さて次の話はVオフィスとVライブとのコラボ第二弾。ヒメナ×深爪アイとのコラボ配信を予定しています。もしこの話が面白いと思ったらレビュー、フォロー、その他諸々してくださったら嬉しいです。



 





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