第17話 交流1

三、四時限は学校オリエンテーションがあるため、チャイムが鳴る前に大体育会館に行かなければならなかった。

怜央とは普段通りに接することができるようになったが、まだ少し苦い過去を引きずっているようだ。表面上では明るく取りつくろっていても、はたから見ればまだ心残りがあるのだと読み取れる。


そう簡単に前に進むことはできないし、自分の弱さをすぐ克服できるように人間は作られていないため、地道に向き合っていくしかない。




_______




「学校説明等は以上になります。教師及び全校生徒の皆様は、しばらくお待ちください」


スクリーンで学校の制度、設備や生徒会、文化祭などの行事を三十分くらいで軽く説明され、オレたちはそのまま待機するようにと伝えられる。


説明された内容は昨日生徒会室でスズタツ先輩から聞いたものと酷似こくじしていたため、またもやオレにとっての復習の機会が設けられた。


去年までは学校探検という名目で、生徒会役員が引率で校内を見学するオリエンテーションだったらしいが、今年から説明のみに変更されたのはいったいなぜなんだろうな。


「なぁ残り時間何するんだろうな?」


「去年と違うけど、今回何するんだろうね…」


様子からして二、三年生の人も去年とは違うオリエンテーションをすることを知らされていなさそうだ。


一限の時間は六十分のため、二限分のオリエンテーションにおいて残り約九十分も余っている。進行役の生徒から全校生徒へ待機するよう指示されているし、これで解散ということはまずないだろう。


疑問を抱く全校生徒が騒めく最中、ステージ上に菊池先輩や今田、美玖先輩、今泉先輩、生徒会メンバーが続々と姿を現す。


「みなさんお待たせしました!僕は生徒会会計の今田吉樹です!

これから全校生徒のみなさんと交流を深める簡単なゲームをしていきまぁーす!」


どうやら残りの時間は「交流会ゲーム」というものをやるらしく、それを聞いた生徒から歓声や叫び声が上がる。なんなんだ。ゲームをやるとなれば今どきの高校生は、そんなに興奮するものなのだろうか。


「はいはい!落ち着いてくださいね!順にルール説明していきまぁーす!

まず僕たちから、適当に三から十二の数字を言っていきます。

そしてみなさんは指定時間内にその数字の数と同じ人数の生徒とグループを作ってもらいます!会話の時間も十分に確保していますので、互いに自己紹介したり、適当に雑談したりして構いません!自由にやっていきましょう!で、このゲームを三回やりたいと思います!

ですが…残念なことに二回目以降は、前のグループで一緒だった生徒さんとは組んではいけません!もし人数が足りないとかの問題が出た場合は生徒会メンバーや教師も参加してうまく調節していきますのでご心配なく!」


なるほど。今田たち生徒会メンバーが五の数字を言ったら、自分を含めて五人の生徒とグループを作らないといけないというシンプルなゲームだ。

オレにとっては学年問わず、他のクラスや先生たちから情報を得るには好都合。


「ルール説明は以上になります!みなさん準備OKでしょうか?」


((うおぉ〜!!))


これから始まるゲームに対し、男子生徒から獰猛どうもう猛獣もうじゅうさながらの雄叫びが体育館内に響き渡る。


「すごい熱気だな…正直俺あんな先輩たちのようになりたくない」


影山は比較的おとなしいというか、ふざけるときはふざけるし、しゃべるときはしゃべる。まぁ毒舌すぎるところがよく目立つが。


だけど自分を表現するのが苦手という印象を暗に受け取れるものがある。入学して間もないし、警戒心があるのもいなめないか。


「あぁ…なぜこんな本能的になれるのか不思議だ」


さてと…気持ちを切り替えて、いざグループができた時の話題を考えておくことにしよう。


「威勢がいいね!では!気になる数字はぁ〜……六!」


ゲームスタートの合図とともに一斉に生徒たちが行動し始める。

大勢が一度に移動するため、多少人とぶつかったりして怪我する可能性が大きいのではないかと少し心配なんだが…


「おい!まずオレたちで一回集まっとくか?」


序盤じょばんはオレと影山、武士、そして怜央の四人で組むことに。さて…残り二人は…


「君たち、僕たちと同じ一年だよね?よかったら混ぜてもらえないかな?」


「おう!いいぜ!ちょうど二人探してたんだ!助かったぁ~!」


これでまず一回目のゲームはクリアか。なんだかあっけないな。こんなゲームをあの生徒会が前日の放課後居残りで用意していたとなると、少なからず違和感を感じる。生徒会役員は際立った行動していないし、こんな簡単なゲームを行うのに、わざわざリハーサル練習を行う必要はまずないだろう。


…何か怪しいな


この考え事は後でゆっくりしておくことにして…グループに入ってきてくれた同じ学年の二人の男子生徒と話し合うことにしよう…ってもう怜央とその二人はもう仲良くなっているのか。


初対面の相手でも物怖じせずにうまく会話できるところは、素直にすごいな。会話をリードしたり、相手の好感を掴むテクニックも意図せず駆使している。


話の区切りがいいところを見計らい、警戒心を隠しながらも二人に話しかけてみる。


「オレは佐渡陸人だ。よろしくな」


「よろしくね!僕は一組の辺見正人へんみまさと。こっちは田代春樹たしろはるき。同じ一組さ」


辺見は片目が二重、片方が一重なのが特徴的で細身で爽やかな印象がある。

一方、田代はオレより少し身長が高く、目が鋭い。目がつり目なせいで悪人面と思われそうな第一印象だが、見た目とは裏腹に内気で、何かと人に合わせるタイプの性格だと分かった。


「そういえば陸人君。たまたま見かけたんだけど今朝一緒に登校してた人ってもしかして…彼女だったりするの?」


「あ!俺も見かけたよ。青春してるねぇ」


辺見や田代まで…


「違うぞ!陸人は、まだ彼女はできていない!本当だ…嘘だと思うなら俺を殴れ!」


オレが弁明しようと思ったところ、意外なことにあの怜央が代弁してくれた。

さきほどのオレの説教や仲間たちに鼓舞こぶされた影響だろうか。自身の弱さを克服するための大きな一歩を踏み出したに違いない。


それに…


「なんで怜央君がそんな必死になってるのさ!あはは!殴るわけないさ!」


「二組って面白い人多そうでいいな。一組は真面目な人が多くて、面白さにいまいち欠けるんだよね。お互いクラス隣だし遊びに行きたいよ」


「おいおい田代。まだまだ僕たちは同じクラスの全員と話してないし、面白さに欠けるってことは今の段階で決めつけちゃあいけないよ」


「そうだね…ごめん。口がすべったよ」


「まぁ気にするなよ、二人とも!俺が休み時間の時とか、直々に遊びに行ってやんよ!」


「やったー!あはは!」


自身の弱さを克服していくと同時に笑いも巻き起こす。

ちゃんと自分の持ち味を生かしながら、着実に自分の改善点を見極めている。

同年代とは思えないほどの成長ぶりだ。いや、頭が柔軟な若い人ほど目を見張るほどの成長を見せるのかもしれない。今後、急成長するとなると目が離せない存在になりえるだろうな。



_______



時間が経ち、二回目のゲームに移る。


「では次の数字は〜……十!みなさん十人のグループを作ってくださぁーい!さっきのグループの人たちとは一緒になっちゃいけないですよ!」


「じゃあね!楽しかったよ!」


二人とも友好的な人間で、すぐ仲良くなることができた。少し名残惜しいが怜央や辺見たちとも別れ、一人になったオレは、どのグループに入るべきか、いろいろ歩きながら探してはいるのだが、声をかけづらい空気がどことなくただよっている。


はぁ…このままボイコットしたいんだが


表面には出さずとも、心の内では深いため息がでてしまう。

周りには大勢の生徒がいるものの、なかなか話しかけるタイミングが計れないでいる。


自分を客観的に見ると存在自体認識されていなさそうな寂しいやつだろうな。


「やぁ!君新入生?良かったら俺たちのグルに入らない?」


「ぜひ入らせていただきます」


「おぉ…!よ、よろしくな」


思わず即返答してしまい、声をかけてくれた本人を驚かせてしまった。


たしか顔写真付きの名簿で見た…


やや大きめな体格で包容力を感じさせる眼鏡男子生徒、二年の小梅太郎こうめたろう先輩。

他には小梅先輩と同じクラスの磯貝賢人いそがいけんと先輩と大原拓海おおはらたくみ先輩が一緒にいた。


「磯貝先輩と大原先輩もよろしくお願いします。ちなみにお二人はハーフですか?」


「みんなによく言われるけど俺も大原も純日本人だよ」


「そうそう。今まで数え切れないほど言われたものさ」


磯貝先輩と大原先輩は、どちらもハーフ顔のイケメンで二学年の中でツートップを争うほどのルックスを誇っているらしい。


「よし!狙い通り、新入生を確保できたし、残りのメンバーを集めていくぞ!」


頼れる先輩、そんな言葉が良く似合うのが小梅先輩のアイデンティティなのかもな。


他の二人の先輩は、小梅先輩の後に続いて、どことなく調子を合わせているように見える。



_________



小梅先輩が先頭になって早足に生徒間をくぐり抜けていくと…俗に言う修羅場しゅらばというものだろうか、


「ねぇ〜私たちのグループに入らなぁ〜い?」


「ちょっと!ウチらが先に勧誘してたんだから横取りしないでよ!」


上級生らしき女子生徒たちで口論になっているのが目に入った。

この事態を収拾しゅうしゅうするべく、生徒会メンバーである菊池先輩がおもむいていたが、手も足も出なく、めんどくさそうな顔をしながら突っ立っている。


「陸人!助けてくれ!俺ら上級生相手に…結構な人数の女子たちに一気に勧誘されて困ってんだ…」


被害者であるオレと同じクラスの生天目なまためたちが必死な形相でこちらに助けを求めてくる。


「自分たちでなんとか出来ないのか?」


「無理無理!やべぇほど囲まれてんだよ。まじで怖いわ」


女子生徒たちから勧誘を受けてた男子生徒五人のうち三人はオレと同じクラスの生天目喜一なまためきいち柏木智かしわぎさとし永野雄也ながのゆうやだ。他の二人は…確か三組の小笠原明日人おがさわらあすと鴫原優希しぎはらゆうきだったな。


「俺たち運動部の男子メンバーで集まりたいんで申し訳ないんすけど、お引き取りください…」


「えぇ~!いいじゃ~あん。私たちとおしゃべりしようよぉ~」


小笠原は懸命に粘っているが、多勢に無勢。簡単に引き下がってくれるそぶりもない。

なぜこれほどの女子生徒がこの五人に執着しているのかがよく分からないが、大変そうだ。


「どうしてこんなことになったんだ?お前ら何かやらかしたのか?」


「柏木と鴫原のせいだな。美人の先輩見つけてナンパしてアタックしてみたら、倍返しでアタックされたわけなんだけどよ…面食いの女子生徒たちが集まりだしてこんな風になったんだ。

なぁ陸人…お前ならこの騒ぎを止められるよな?怜央を助けたみたいに俺たちを助けてくれ」


「無茶言うな。今さっきここに来たばかりでこの状況をまだみ込めていない」


「ここは先輩にまかせろ…一年生…」


「え、えっと…」


小笠原たち五人の前に出て、多くの女子生徒相手に真向面まっこうめんから向かっていく、勇敢な小梅先輩の姿があった。


それは……


「困っている後輩のためにこの場をなんとかしようと、先輩としての威厳いげんを示そうとしているようだ…」


「大原先輩…オレのアテレコとかしないでください。実際その通りに思ってたんで少し驚きましたよ」


「あはは!いやぁ、悪い悪い」


「それより二人は小梅先輩のところに行かないんですか?」


「いや!…行きたくない…帰りたい…」


「ごめんな…頼りない先輩で。今回も同じ事にならなければいいんだが」


「どういうことですか」


「……」


過去に何か辛い経験でもしたのだろうか。

お互い顔を見合わせながら、苦渋くじゅうの色を浮かべている。

どうやら大人数の女子の集団を相手にすることは愚か、直接目にするだけで拒否反応が強く出るのかもしれないな。


「あれっ!見て見て!『海が似合うイケメンコンビ』大原くんと磯貝くんいるよ!キャー!」


「本当だ!ラッキー!運動部の後輩イケメンくんたちと『海が似合うイケメンコンビ』…もぉう最高!」」


そんな変な肩書きがついていたのか…この二人。通りで嫌がるわけだ。


「おいっ、あの二人は今関係ないだろ。新入生たちおびえてんだから、早く別な生徒捕まえて来いよ」


「ちょっとぉ〜小梅くん?あなたに用はないんですけどぉ」


「そこどいてください!体が大きいあなたは邪魔なんですよ!」


女子生徒たちに立ちふさがる小梅先輩に向けて「デブ」「ゴリラ」「メガネ」などとがった口調で罵倒ばとうされ続ける。見なくとも彼への精神的ダメージは大きそうだ。周りの男子生徒たちは今すぐにでも加勢したい気持ちがあるようだが、いざ自分が大勢の女性にあんなこと言われたら、メンタルが崩壊する現実を見てしまって、それが恐ろしく怖いんだろうな。ただ立ち尽くすしかなかった。


歯を食いしばり、両手を広げ、必死に耐えしのぐ小梅先輩は本当に後輩思いの先輩、頼れる先輩だった。


「小梅先輩まじでかっこいいな!なぁ、永野!」


「あぁ、それに比べてお前は女子に対してデレデレしすぎだ。変態柏木」


「なんだとぉぅ!?」


「つまんないこと言ってないで見てみろよ!小梅先輩ボコスカ殴られているのに、びくともしねぇよ!すげぇな…」


暴言にとどまらず、ついには女子から暴力が振るわれることになってしまった。なんて恐ろしい女子生徒ばかりなんだ。


暴走している肉食女子たちに異常事態として駆けつけた複数人の先生が注意拘束こうそくしても、ただ徒労とろうすだけ。手のほどこしようがない。


…どっか別のグループのところに行くか


フェーズアウトするかのように、オレはこの場から逃げようとするも、


「おい、陸人!トイレなんか後でいいだろう。観戦しようぜ!」


…まじか


生天目たち一年の五人は目を輝かせながら、小梅先輩の勇姿をしっかり見届け、まるでスポーツ観戦しているかのように声援を送っている。


「頑張れ!小梅先輩!」


「負けるなぁ~!先輩!」


肉食系女子からの総攻撃に手も足も出ない小梅先輩…いや、女性相手に手を出すことができないからこそ防御態勢しか取れないのだろう。

女子からは容赦なく、無造作に髪の毛を引っ張られたり、アッパーや平手打ちなど次々と繰り出される。苦しいことにどれも生半可な威力ではなさそうだ。

そして最後の攻撃が効いたのか、悶絶もんぜつし倒れた彼はとうとう苦渋の選択を迫られることに。


「くぅっ……一年共逃げるぞ!」


小梅先輩の合図とともに一斉にオレたちは逃走。こっそり別のグループを探しに行くか迷ったが、流れに飲まれてしまった以上彼らのグループに参加せざるを得なかった。


「ちょっ…ちょっと!待ちなさいよ!」


女子たちに目もくれずオレたちは走り出す。


「大丈夫ですか?小梅先輩」


「……」


オレが安否を尋ねても返答できないくらいに彼は意気消沈いきしょうちんしていて、青ざめた顔をしていた。最後のクリーンヒットした蹴りが効いたのか、彼は股間を押さえながら走り続ける。同じ男として痛ましい気持ちを抱きながらも、オレたちは共に逃走。


「…なんとか逃げ切れたな」


一緒に逃げた先輩たちや小笠原、鴫原、生天目らも運動部に所属しており、足が速かったおかげで難なくあの女子たちから逃げ切ることができた。って言っても全校生徒がいる体育館内をろくに走ることは出来なかったが。


周りはもうすでにグループを結成してるところが多く見受けられる。

オレたちのところはまだ九人しか集まっていなく、あと一人探さなければなかったが、時間切れになってしまった。まぁ時間内に人数分集めないと罰ゲームがあるなどのルールはないし、自然と焦りはないが、なぜかみな悔しそうな顔を浮かべている。


「…みんなお疲れぃ…はぁはぁ」


生徒会メンバーである菊池先輩がオレたちのグループの残りの枠を埋めることになり、無事解決したわけなんだが…


「…ったく、いきなり走ることになるとはなぁ〜俺、運動苦手なのよ……」


途中で菊池先輩だけが逃げ遅れそうになったが、小梅先輩が頑張っておんぶしてここまで来たというのに、まだ息が上がっているなぜだろうか。運動習慣がほとんどない人の特徴にピッタリ当てはまっているな。


「拓海!賢人!……お前らぁ!」


「げ…、なんだよ!小梅」


「……おい、大原。嫌な予感しかしないな」


「……あ、あぁ」


二人のもとにゆっくりと近づき、精悍せいかんな顔つきから険しい顔つきに変貌へんぼうした小梅先輩。周りにいるオレたちもその豹変ひょうへんさにすぐ気が付き、ただ事ではないと察せられる。


小梅先輩が彼らに怒りを覚えた原因は一体……恐らく友達である彼らが、一緒に女子生徒たちに対抗しようとしなかったことに腹を立てているのかもしれないな。暴力沙汰ざたにはならないと思うが、少し注意を払っておこう。


「なぜ…困っている後輩を助けようとしなかった?なぜ……先輩としての意地を見せつけなかったのだ!?」


怒声を上げ、更に彼らに歩み寄り、片手で彼らの胸倉を掴み上げて顔を近づける。


「…何とか言えよっ!お前ら!」


おいおい、まじか


「おい…陸人。先輩たちやばそうな雰囲気じゃね?」


「あぁ。殴り合いとか起きるかもな」


「いや!そうなればやばいだろ。なんでそんな冷静でいられてるんだよ」


「お前たち五人なら小梅先輩止められるだろ。それにさっきの騒動から先輩に助けられた恩も残ってるはずだ。行って来い」


「それはそうだけど…怒った小梅先輩やっぱ怖ぇーよ。体格すげぇし、絶対敵わないって」


ここにいる一年の生天目と永野、小笠原は標準体型でやや筋肉質。その他のやつらは細見で同様に筋肉質っぽいが、力はあまりないと見受けられる。


五人一斉で取り掛かれば、確実に抑えこむことはできるが先輩相手に、それに今日初めて会った上級生の怒りをしずめること自体難題だと感じているだろうな。無理はない。


怜央のように考えを改めさせる方法を叩き込み、五人を改心させることも一応考えてはいるが、複数人相手では時間がかかるし、得策ではない。まぁ長期的に考えれば、得になるんだが。


「…ねぇ、あのグルやばくない?先生呼んできた方が…」


まずいな…


近くのグループから痛ましい視線がこちらに向けられ、伝播でんぱして続々と視線の数が集まる。こんなところで目立つのは避けたいし、何か手を打たなければならない。


生徒会である菊池先輩を頼り、増援を呼ぶのが賢明だが、声をかけても彼は微動だにしない。何か考えがあるのか、ずっと黙り込んで小梅たちを観察している。


…先生たち全員は近隣グループ以外で参加しているみたいだな。この状況じゃすぐに駆け付けることは難しいだろうし、オレが止めに入った方が無難に防げる。極力目立たないように、穏便おんびんに済ませるか。

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