3
登校し、教室に着いてからしばらくして、佐和子を訪ねてくる者がいた。
「佐和子」
「あ、
中学時代からの友人、
その澄香が、佐和子の手元に気を取られる。
「スマホ、変えたんだ」
「うん。ちょっとね」
佐和子が手にしているコーラルピンクのスマホを見て、澄香はぽつりと
「麻里奈が使ってたのと同じだね」
「……うん」
麻里奈。二人の共通の友人であるその名が出た途端、気まずさが漂った。腫れ物に触れてしまったように、二人は
「そんなことより」
気を取り直した澄香が、佐和子の机に手を突いてグッと顔を近づけてくる。そして。
「あのツイートは、何?」
低く押し殺した声で詰め寄ってきた。
澄香の言う『あのツイート』とは、言わずもがなあの殺人予告のことだろう。佐和子と澄香は互いのツイッターアカウントをフォローし合っている。澄香があのツイートを目にするのは当然のことだった。
間近で
「何って、書いてあるとおりだよ。もらったいいねの数だけ人を殺す。それだけ」
「馬鹿なこと言わないで。一体何を考えているの?」
澄香の声が、怒りに震えた。
「去年……あんなことがあったばかりじゃない。たとえ嘘だったとしても、ネット上の発言は取り返しのつかないことになりかねないって、私たち学んだでしょ? なのに、なんであんな悪趣味な冗談を」
「澄香ちゃん」
佐和子は一つ、訂正した。
「冗談じゃないんだ、あれ」
「……え?」
予期せぬ佐和子の台詞に、澄香は
「それってどういう、」
発言の意味を問い質そうとした澄香だったが、始業の鐘がその続きを
「……放課後、時間取ってちゃんと話そう。今日の佐和子、なんかおかしいよ」
「うん、分かった。予定空けとくね」
後ろ髪を引かれる様子で去っていく澄香を、佐和子は優しい眼差しで見送った。そしてその背中が見えなくなったあと。
「澄香ちゃんはずっとそのままでいてね」
誰に聞かせるでもなく、そう呟いた。
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