We Will

@SOPHIA-BELL

《序章》【Let it be】

5月の暖かな日差しと新緑の香りの風が吹くと俺は彼女の言葉を思い出す。



〈2003年5月〉


「ねぇ、Let it beって言葉の意味知ってる?」

俺は新宿御苑の芝生の上で彼女の膝枕の上に寝転んでいた。


「えっ!?Let it beってビートルズのLet it be?」


「うん…そう。」


「なんで?歌は知ってるけど意味はなんとなく…

って言うか、俺はビートルズよりストーンズが好きだったからなぁ。」


「初めて言うけど…

アズねぇ(梓は自分の事を私じゃなくアズと呼ぶ)高校生の…。

うーん、1年と2年の時にイジメにあってたんだ。その時にある先輩がビートルズのCDを貸してくれてLet it beって曲の意味を教えてくれて聴いてみなって言ったんだ。」

俺と梓は一緒に暮らすようになって10ヶ月くらいだった。



「んで…?」


「あるがままをあるがままに受け入れなさい。って意味らしいんだけど、簡単に言うと「何とかなるさ。」って事らしいんだよね。」

俺の髪を撫でながら言う。


「ふーん。沖縄の「なんくるないさぁ。」みたいなもんか。」


「そうそう。アズ、その言葉を聞いて頑張ろうって思ったんだ。」


「頑張るって?そんなん頑張ってなんとかなるもんなの?

俺の知ってる限り結構キツそうだったよ。」


「アズはクラスメイトとかじゃなく先輩に虐められてたから…」


「それってイジメってよりヤキってやつじゃね?」


「うーん。今話したいのは、虐められてたか?じゃなくてLet it beの話なんだけど…。」

ちょっと困ったように言う。


「ああ、そっちね。」


「トオル最近なんか悩んでない?」


「別に…。」


「あっ!?嘘ついた!」


「何が…だよ。」

当たってた。


「トオルが言葉?口数?少ないときは何かごまかそうとか、嘘ついてるっていうか…。怪しいから。何か隠してるでしょ。」


「何でだよ!?(笑)俺がお前に嘘ついたときある?」

確かに梓の言う通りだった。俺には悩み事がある。


「ほら、またそうやってごまかすー。いっつもアズには質問に質問で返すなって言うのに…。

もっとアズに話したり頼ったりしてほしいな。トオルは梓が守るから…。

それに、2人で居ればLet it beだと思うよ。」


「うーん…わかったよ。」

俺は起き上がって梓の頭を撫でてキスをした。


「うーんっ、チューでごまかさないの!」

梓を押し倒し2人は芝生の上を転がった。










どうなんだろう?

あのとき俺が話していれば今でも2人で寄り添っていれたのだろうか?


俺の弱さを見せればよかったのだろうか…。

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