第2話 理由
キャサリンはヴィルヘルムの王妃になるために厳しく教育されてきたが、婚約の相手に致命的な事があった。肝心のヴィルヘルムが恋愛観や結婚観が凡そ君主のそれでなかった。思春期を向かえてから、与えられた婚約者ではなく自分でお妃を探そうとしていた。それもこれもキャサリンとの相性は最悪だと思い込んでいたこともある。
これが王族同士の政略結婚だと割り切れる事が出来たら問題はなかったが、ヴィルヘルムはなおも自分が好きになった相手、真実の恋が出来る女を王妃にしたいと夢見てしまった。結果、キャサリンは思春期を向かえてから彼と会うのは義務でしかなかった。彼女もあきらめてしまったわけだ。
またヴィルヘルムの周囲も王妃はキャサリンでなくてもいいという空気が漂っていた。隣国との縁を強めるために婚約したものの、王朝が断絶したため、その目的も弱くなっていた。王妃になる教育だけは続けられたが、実際に結婚する話は全く進んでこなかった。そのため、キャサリンの存在はどうでもよい婚約者でしかなかった。
婚約破棄を告げられたが、会場は祝福する歓喜の声で満たされた。キャサリンは嫌であったが理由を聞きたいと思い中央へ向かった、断罪されるのを覚悟していた。そもそも、婚約者の立場を破棄されるには理由は必要であるから。
キャサリンはこんな風に考えていた。きっと婚約者のヴィルヘルムは私を悪者にするだろう。ただ他に好きな人が出来た、真実の愛を見つけたから婚約者を変えるというのは王族であっても許されないだろう。結婚して子供が生まれなかったとかなら理由になるかもしれないけど、ただ好き嫌いで婚約者を変えたら国民にしめしなんかつかないだろ。だから・・・私は犯罪者!?
「申し訳ございません、殿下。なぜ私との婚約破棄をされるのですか? 理由をお聞かせください」
キャサリンの言葉に会場内は静かになった。もし、ここにヴィルヘルムの両親である国王夫妻がおられたら、こんな事にならなかったかもしれないが、この日国王は風邪で寝込んでいて王妃も体調がすぐれなかったので最初から欠席すると公表されていた。それにいつも親身になって相談してくれる宰相ウォルフ・ハインリッヒも帝国へ急な政治折衝のため出張しているので、全てヴィルヘルムの好きにできた。
「理由か? お前は不義密通を働いていただろ! それと隣にいる彼女に嫉妬して呪詛していただろ! そんな事をするお前は婚約者として相応しくない!」
そういわれたがキャサリンは内心呆れていた。ヴィルヘルムの婚約者になってから恋愛をあきらめてきたのにそんな男と付き合うこともなかった。それに呪詛? 呪いの藁人形でも使ったとでもいうのだろうか? 全てでっち上げに違いないと思った。
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