うちのばあさんが隣のじいさんと飯食ってた話【2:2:0】15分程度

嵩祢茅英(かさねちえ)

うちのばあさんが隣のじいさんと飯食ってた話【2:2:0】15分程度

男2人、女2人

15分程度


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「うちのばあさんが隣のじいさんと飯食ってた話」

作者:嵩祢茅英(@chie_kasane)

じじい♂:

隣のじじい♂:

ばばあ♀:

隣のばばあ♀:

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(カタカナ用語はたどたどしく言ってください)


ばばあN「昔々、ある所に二組ふたくみの老夫婦がおりました。

家も隣同士、皆仲が良く、平和に暮らしていました。」


(間)


じじい「ばあさんや、今日の夕飯はなんだったかのぅ…」


隣のばばあ「もう、おじいさんたら、忘れてしまったの?今日はカレイの煮付けでしたよ」


じじい「…はて…そうだったかのぅ…今日はばあさんが張り切って、コース料理を作るって言っておった気がするんじゃが…」


隣のばばあ「おじいさん、何を言ってるんですか。もうボケたの?まだここにお皿があるでしょう」


隣のじじい「(外から)おーい!!!」


じじい「おや、隣のじいさんだ。あんなに大きな声を出して、一体どうしたんだ?」


隣のじじい「おい!ばあさん!なんで隣のじいさんと飯食ってるんだ!」


隣のばばあ「え?…あら、いやだ。私ったらどうしたのかしら」


じじい「ええ?それじゃあ、うちのばあさんはどこに行ったんだ?」


ばばあ「よいしょ、っと。おじいさん、ただいま。やっと大きな鹿が獲れましたよ

…あら、みんな揃って何かあったの?」


じじい「ばあさん!言ってくれれば手伝ったのに…一人で山に行って、危険な目に遭ったらどうするんだ!」


ばばあ「大丈夫よ。知ってるでしょ?私は昔から狙った獲物は外さないのよ」


隣のじじい「猟銃!」


隣のばばあ「え、今って何時代?」


ばばあ「という訳で、今から夕飯の支度をしますね…あら?」


じじい「それがなぁ、もう夕飯は食べてしまったんじゃよ」


隣のばばあ「カレイの煮付けをね、多く作ったからお裾分けに来たら、そのまま食べてしまったのよ」


隣のじじい「カレイの煮付けなんて、多く作りすぎる事ないだろう!二人分なんだから二切れ煮付ければいいだろうが!」


隣のばばあ「いやぁそれがね、昼間近所のデパアトでカレイが一切れ20円だったものだから、奮発して50切れ買って来たのよ」


隣のじじい「そんなに?!っていうかデパアトってなんだ?!20円のカレイを50切れ…そんな金、一体どこにあったんだ」


隣のばばあ「しちにね、指輪を入れたんですよ」


隣のじじい「指輪を!?!?ま、まさか…その指輪って、わしとお揃いの…」


隣のばばあ「うちの家に代々伝わる、呪いの指輪よ」


じじい「呪いの指輪?!」


隣のじじい「初めて聞いたぞ…」


隣のばばあ「だから、おじいさんとお揃いの指輪はホラ、ここに」


ばばあ「んん?その指輪、薬指と小指が入ってる?」


隣のばばあ「若い頃に買ったものだから、サイズが合わなくなっちゃって…」


ばばあ「それにしても、指二本に指輪をめるなんて、聞いた事がないわよ」


隣のじじい「ばあさん…苦労をかけるな…それで、しちに入れた指輪で、いくら手に入ったんだい?」


隣のばばあ「50円よ」


隣のじじい「しちに入れた意味!!!」


じじい「あー…ところで…みんな夕飯は食べたかい?ここで集まったのも何かの縁だ。一緒に食べて行きなさい」


隣のばばあ「もうおじいさんたら、夕飯ならさっき食べたでしょ?」


隣のじじい「うちのばあさんとな!」


じじい「おお、おお、そうじゃった…でも安心してくれ、腹八分目に抑えておいたから」


隣のばばあ「30切れも食べて、まだ腹八分目だったの?」


隣のじじい「そんなに食ったのか!てことは残り20切れ…うちの分のが少ないじゃないか!」


ばばあ「おじいさんは若い頃、フゥドファイタァとして賞金を稼いでいたから、30切れなんて朝飯前なのよ」


じじい「そうそう、だからまだ入るぞ!…うっぷ…ちょ、ちょっとかわやに行ってくるわい…」


隣のじじい「おい、無理してないかアレ?!」


ばばあ「ふふふ、そんな所が、かわいいのよ」


隣のばばあ「もしかしてその獲ってきた鹿も、一食で無くなるのかい?」


ばばあ「そうよ。おじいさんは鹿肉が大好きでねぇ…ほら、うちの壁に鹿の首の剥製が所狭ところせましと飾ってあるでしょう?」


隣のばばあ「あら、本当だわ。気がつかなかった」


隣のじじい「気がつかなかったの?!ばあさん、視力がだいぶ落ちたな…」


隣のばばあ「なんだか、デコボコした壁だとは思っていたわ」


隣のじじい「それのせいで部屋がだいぶ狭くなっているぞ」


ばばあ「さて、これから鹿をさばくから、みんなで待っててちょうだい」


隣のばばあ「私も何か手伝おうかしら?」


ばばあ「大丈夫よ、素人しろうとは引っ込んでて」


隣のじじい「言い方!うちのばあさん繊細だから!もうちょっと優しく言ってあげて?!」


隣のばばあ「まぁまぁ、仕方がないわ。私に鹿はさばけないもの…人間なら話が別だけれど…」


隣のじじい「ばあさん、人間をさばいたことがあるのかい?!初めて聞いたぞ?!」


隣のばばあ「ええ、昔ちょっとね…ヒットマンをしていたのよ。この事は墓まで持っていこうと思っていたけれど…ついうっかりだわ」


隣のじじい「全然可愛くないうっかり!!

…しかし、ばあさんにそんな過去が…

いや、まぁ…それでも愛しているよ」


隣のばばあ「ふふふ、私ったら、おじいさんの心臓までブチ抜いてしまったみたいね」


隣のじじい「急に怖いな!言い方ってものがあるだろう!」


隣のばばあ「まったく、そんな細かい事はどうでもいいでしょう?」


じじい「昔からロマンチストだからなぁ、ソイツは」


ばばあ「あらおじいさん、もう大丈夫なの?」


じじい「あぁ、もうすっかり大丈夫だよ。ついでに体重計に乗ってきたら、十キロ減ってたから」


隣のじじい「減りすぎだろう!本当に大丈夫なのか?」


じじい「なぁに、いつもの事だよ」


隣のじじい「いつもの事なの?!不健康だよねそれ?!」


隣のばばあ「おじいさんは心配性ね。もう私たち若くないのよ?いつおっちんでも悔いはないわ」


隣のじじい「だから言い方!…今日はばあさんの意外な一面を知って心臓がバクバクしてるぞ…二重の意味でな」


ばばあ「(重たいものを震えて持ちながら)さぁ、鹿のお刺身が出来ましたよ」


隣のじじい「大船にお頭付き?!おい、腕がプルプルしているぞ、重たいんじゃないのか?!」


ばばあ「つい張り切ってしまったわ」


じじい「重いものはわしが持つと、いつも言っているだろう!」


ばばあ「大丈夫よ。鹿一頭に比べれば、こんな重さ、なんともないわ!」


隣のばばあ「まぁ、豪快な盛り付けね!それにまだ身がピクピクしてる…とてもいい刃物を持っているのね」


隣のじじい「ばあさんの得意分野出ちゃった!」


ばばあ「昔住んでた村にね、小高い丘があって、そこに刺さっていたものなのよ」


じじい「おお、あれはすごかったなぁ!色んな人がよその村から大勢来て、その剣が抜けるか力自慢をしていたんだ。けれどどんなに屈強な男共が抜こうとしても抜けなくてなぁ…」


隣のじじい「それってあの有名な、伝説の剣じゃないのか?」


ばばあ「その頃、おじいさんには許嫁がいてねぇ。だから、私がその剣を抜いたら許嫁を解消して、私と結婚してくださいって言ったのよ」


じじい「あの時のばあさんは本当にかっこよかったなぁ」


隣のばばあ「素敵ねぇ!」


隣のじじい「素敵ねぇ、で済ませていいのか?」


じじい「ワシは、ばあさんと一緒になれて、幸せだよ」


ばばあ「あら、私もよ」


隣のじじい「二人とも、とんでもないばあさんだったんだな…」


隣のばばあ「ホラ、あなたも若い頃のアレ、言ってやりなさいよ」


隣のじじい「何?ワシは何もないぞ!無茶振りするんじゃない!」


じじい「いやいや、たくさんあるだろう。流しの吟遊詩人ぎんゆうしじんと言われたお前だ」


隣のじじい「流しなの?!吟遊詩人ぎんゆうしじんが急に庶民感出ちゃったけど!!」


隣のばばあ「おじいさんは昔っから、ロマンチストだったからねぇ…思い出すわ…あれはプロポーズの時…」


隣のじじい「よせよばあさん…恥ずかしいだろう…」


隣のばばあ「あの…なんだったかしら…お前を…えっと…あれ…アレしてやるから、俺とアレしてくれって…」


隣のじじい「ほとんど覚えてないじゃないか!それに、大事な所にアレが入っちゃったから、ロマンチックどころか卑猥に聞こえるぞ!」


じじい「(しみじみと)みんな、色んな事があったなぁ…よくここまで長生きしたもんだ」


ばばあ「そうですね」


隣のじじい「色々言ったけど、みんな、これからもよろしくな」


隣のばばあ「まだまだこれから、残りの人生を楽しみましょう」


(間)


ばばあN「次の日。鹿肉に当たった四人は食中毒で苦しみながら仲良くあの世へと旅立ちました。野生の鹿肉は十分加熱をした上で食べましょう。めでたしめでたし」

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