番外編13話、女神の訓練

「くそっ・・・才能ないのかな」


コバヤシは女神の神殿で魔術を学んでいた。現代日本から異世界に来て三か月、基本がようやくできてきたところだった。魔術の習得はとても大変だ。


「当然です。あなたは所詮一般人。神のもとで学べるだけで運がいいと思いなさい」


魔術は具現化の才能があるかで決まる。俺は凡人だったので習得にはかなり時間がかかるらしい。


「魔術において詠唱はイメージを固める為に必要なことです。しかし詠唱は皆と同じものでなくても構いません。」


そういわれればそうか。と理解する。


要するに魔力を具現化できていればどんな言葉を選んでもいいのだ。


「しかし自分の得意な魔術で、イメージ通り魔力を固めることができれば詠唱をする必要もない、あるいは短く済むこともあります」


パチン!女神イシュタルが指を鳴らすと床に魔法陣が展開され木でできた人形を召喚する。


木刀のような木でできた剣をもっている。カタカタと動き、命令を待っているようだ。


「これは一般的にこちらの世界で訓練に使われるパペットドールという人形です。倒してみてください」


カタカタとした動きで待っていた人形が急に跳躍する。


「うわっ!」


こういうのはゆっくり動くものではないのかと思うのだが、そんなことを思考する余裕はない。


「すこし私が普通の人形より強化しています。攻撃に当たればものすごく痛いですよ」


「やるしかないか」


術式展開。検索開始。


手ごろな剣を召喚する。いまはこのウェポンサモナーという魔術しかつかえない。


カン!パペットドールの木刀を受け止める。軽い、このくらいなら・・・。


魔力を腕に通し、膂力を強化する。


本来強化の魔術は物質を強化する魔術だ。しかし、


「うおおっ!」


パペットドールを大きく吹き飛ばす。コバヤシは魔力で身体強化も行えることができた。


体に魔力を通すのは難しい、常に意識していないと魔力は霧散する。魔力を通した部位を意識し続けないといけないのは魔力を流し続け、強化するからだ。


「魔力のコントロールだけは得意ですね。そこはさすがだと思います」


イシュタルは珍しく賞賛の言葉を述べる。


足に瞬間的に魔力を通し、駆ける。


ガシャン!パペッドドールの核動力源を貫いた。機能が停止し崩れ落ちる。


「このくらいにしましょうか。すこし休憩です」


今日は女神のキゲンがいいのか・・・助かった。












コバヤシは1つここに来てからあたらしい魔術の使い方を閃いていた。言葉の魔術と呼んでいる。


太古の人間は言葉に霊が宿り、その力が働いて現実化する。という考えがあった。


言葉は不思議だ。感情に作用し、人に最もわかりやすい変化を与える。


「言葉を発音するときにその言葉自体に魔力を込めれば・・・変化がおきるんじゃないか?」


「そうですね。それは十分にあり得ると思います。・・・わたしで試すのはやめてくださいね」


女神から太古の人間の話をきいてみた。どの程度この魔術が効果があるのか、聞いてみたかった。


「ルーン魔法、というものがあります。特殊な言語を使った魔術です。すこし似ていますね」


「言葉に意味がある。というのはみな知っていることです。歌ったり詠唱することは意味合い的におなじです」


「難しいな・・・でも可能ではある。ってことでいいのか?」


「そういうことです。自分で実践して試してみてください」












半年後・・・女神の神殿を追い出され、いきなり実戦に放りこまれるのを俺は知らない。

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