第5話初めての魔術
「・・・おどろいた」
スラ子があの不審なクスリを飲んでからすぐに魔力の発現・・・体内の魔力が分かったようだった。
「僕は天才だからね。君たちの話をきいていたら困っているようじゃないか。だからたまには協力しようと思ってパパっと見合うクスリを用意したわけさ」
錬金術の技術だろうか。魔力を感じるのはイメージトレーニングや特殊な魔道具を必要とする。気づきを与える薬品なんて作ることができるのか・・・。
「まさかあの手紙・・・観察するために何か仕込んでたな?」
「いま君は魔物である彼女、スライムと行動している。不思議な組み合わせだし気になって当然だろう?」
「そして僕が飲ませたのは魔力を一時的に爆増させるクスリだよ。多分人間なら死ぬと思うね!彼女はスライムとはいえ魔物!一度試してみたかったのさ」
たしかに自分のもっている魔力が爆増すればいくらなんでも実感はできるが危険すぎる。
「そういえば、なんでスラ子と一緒に行動するようになったんだい?君は魔物とはあまり関わっていないようだけど」
ああ・・それは此処にきて少し経った頃だったか。
「もうあなたは魔術を学ぶ必要はありません。魔術師として経験値をこの世界で積んできなさい」
女神の宮殿・・・神殿というべきか。そこから女神のチカラで瞬時に転移する。
「うわっ・・・」
光で視界がいっぱいになる。重力を無視した動きで見知らぬ場所に放り込まれた。ワープ、ではない。
「神のチカラですからこんなこともできます。普通の魔術では再現できませんよ」
光ってるだけでじつは首根っこ掴まれて投げられたような・・・。
「おいおい。こんなとこで大丈夫なのか・・・」
強い魔物はいない、とは聞いていたがいきなり森に放りだされるらしい。
この世界に来るきっかけになった女神、イシュタルは無情に言い放つ。
「あなたのレベルを考えてここにしたんですよ?優しいと思ってほしいくらいです」
最後に忠告する。
「この世界に魔物はオスとメスがいますがメスとはなるべくかかわらないようにすることです。」
この世界において魔物はかなりつよいと聞いたが理由がわからない。たしかに向こう(現実世界だったところ)でもメスの動物や昆虫がオスより大きいこともあったが・・・。
「たしかにオスよりは弱いでしょう。しかし魔物はいつでも発情期、タイプなら襲われますよ」
こうして森に俺を一人のこし神は消えたのだった。
「いつまで続くんだこの森・・・」
水と軽い食料くらいはあるがジメジメして蒸し暑いこの森では消耗が早い。
虫も多いし最悪だ・・・。ムカデとナメクジは勘弁なんだが。
「むっ・・・」
とても小さな声だが聴力を魔力で強化してるのではっきり聞こえた。
「なんかおいしそうなひとがいるね。」
「襲っちゃう?いま周りに魔物見当たらないし」
「やっちゃお!」
3匹か・・・いきなり魔術を使うことになるとは。
森はうっそうと生い茂り、さすがにどこにいるかはわからない。しかもここに住んでる魔物だとすれば。
「相手の庭だ。隠れても無駄だろう、迎え撃つしかないな」
落ち着かせるために口に出す。どんな魔物なのか、緊張で体がこわばる。
「えーい!」
「うわっ!」
ふいに草むらの下のほうから青い水のような・・・スライム、というべきか。そんな粘着性のある塊が足元に絡みつくように広がった。
とっさに魔力で強化した足で絡みつく塊を蹴り上げる。
ギリギリ間に合ったがこの視界の悪さは最悪だ。薄暗く、まったくどこから仕掛けて来るか予想できない。
「くそっ!えーとなんだっけ・・・術式展開!」
武器を検索し、詠唱する。足元に魔法陣が広がる。
「ウェポンサモナー!」
うまくいくんだろうか、実戦は初だ。
魔力を具現化し、刃渡り30センチくらいのナイフのような武器がカタチになる。
「魔力つかえるの!?やばっ!」
草むらを移動する音が聞こえる。
どうやら彼女?らは逃げていったようだ。
「・・よし!」
初めて実戦で異世界の魔術をつかった・・!すごい興奮だった。心拍数が上がるのも感じる。
強化の魔術も初めてで成功した。
「やった・・・!できた!」
おもわずテンションもあがってしまった。
ん・・?
まだ草むらを揺らす音がする。なんだ?一応見回すことにした。その前に・・・
「術式展開・・・エンチャント、燃えよ」
ナイフ?ダガーというべきだろうか、の刃に炎を付与する。
これですこしはマシになるはずだ。松明がなくても良いのはありがたい。
「二人とも・・・どこー?」
これはさっき話していた敵?の1人か。どうするか・・・
「でてこい」
「ひっ・・・」
声がしたほうに草を分けて歩いて行くとかわいげのある少女?がいる。腰が抜けてるのかうごけないのだろう。体は青く透けていて・・・魔物か。
「お前はなんだ?精霊かなにかか?」
「ス、スライム・・・です」
「そうか・・・なぜ俺を襲った」
「精を奪うためです・・・ごめん。ゆるしてください」
なんとなく、手を伸ばした。怯えている。こちらに悪意がないことを証明したい。
「わかった・・・ほら」
「うわっ・・・!」
武器を持ってる、怖い。と魔物の少女は恐怖した。
ぐじゅぐじゅと青い肉体の一部が形を変えて槍のように飛ばそうとする。
「こないで!助けてください!」
「大丈夫だから」
俺はダガーを捨てた。手元を離れてすこしたつとウェポンサモナーで召喚した武器は消える。
スライムは思わず驚いた。殺されるとおもったからだ。
「え・・・?なんで・・・?魔物なのに」
頑張って優しく伝わるように口に出す。魔力を込め言葉を放つ。
「(殺すつもりはない)」
これが初めての魔物との出会いである。
「コバヤシ君は意外と優しいんだね。」
「そんなことはない、ただ・・・かわいそうだったから優しくしただけで普通だよ」
自分らしくない。マリーンに茶化されて恥ずかしくなった。
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