第11話 勘違い...

ふわふわとした眠りから目が覚める。毎度の事ながら大和は起きるのを待っていてくれた様だ。ベットにもたれかかってスマホをいじっているらしい。そっと画面を覗き見ると「かっこいい告白の台詞」だとか「理想の告白シュチュエーション」だとかいう言葉が並んでいる。好きな人が居るんだ。そうとしか思えなかった。泣きそうになるがどうにか涙をこらえる。我慢しようとしたのにその我慢は一瞬しか持たなかった。ポロポロと涙が落ちる。せめて声を出さないようにしないと。声を出さないようにしていたつもりがいつの間にか出てしまってしたらしい。ゆっくり大和が振り返った。


「お〜 怜おはよ... ってどうした!? 」


「だって... それ...」


「へ? それってどれだよ? 」


「大和のスマホの画面 」


「あっ... 見えたのか」


まぁそうだろうとは思った。だって大和モテるし。男と付き合うより可愛い子と付き合った方がいいに決まってる。


「別れよっか ありがとね付き合ってくれて」


「ちょっと待て」


「もういいよ」


それだけ吐き捨てるように言うと下を向いて泣き続けた。泣いてる顔なんて見られたくないに決まっている。幼なじみだとは言っても元彼である人に泣き顔なんて見せたら弱みを握られるだけだ。だからといって泣くのを止められる訳でもない。


「あぁ もう」


その一言が聞こえたのとほぼ同時に抱き締められた。こんな事されたら泣くのを止められるわけがない。


「大和 離してよ」


そう言っても簡単には離してくれない。何回か繰り返し言ったり腕を叩いたりしても無駄なようだ。大和を引き剥がそうにも力の差のせいで出来そうにない。必死になっているうちにいつの間にか涙も止まっていた。そのままどのぐらい経っただろうか。いくら粘っても離れてくれそうな気配がない。


「これで分かっただろ」


「何が?」


我ながら泣いた直後にこんなに冷たい声が出るのかと感心する。


「怜 勘違いしてんだろ?」


「は?」


どういう事だ。付き合ってる相手がいるのに告白の仕方とか調べてるのに勘違いも何もあるものか。大和に他の好きな人が居る事以外に考えられることなんてないだろう。そんなグルグルと回り続ける思考を大和の一言が断ち切った。


「俺が好きなのは怜だけだ。初恋も怜だし、付き合ったのも怜が初めてだ。」


「じゃあなんであんな事調べてたの?」


「もしかして怜気づいてねぇの? 服の中に見てみ?」


とりあえずその言葉に従って服を捲って見てみると鉱石がひとつも無くなっていた。昨日お風呂に入った時はまだ少しだけ残っていた筈なのに。


「無くなってる...」


「だろ? だからあんな事調べてたんだよ」


「え?」


「だからその... 仕切り直しというか まぁ完治した記念に本格的に告白しようと思って」


「ちょっと待って? じゃあ今日食べてたのって」


「あぁ あれはただの飴」


「飴!? いつの間に!? 」


「無いのが分かったからこっそり開けた 笑」


「えぇ〜 マジシャンみたい」


「だろ? 」


いつもみたいな笑顔を向けてくる。さっきまでの真剣な顔もかっこよかったけどやっぱりこっちの方が好きだ。


「ん? という事はさっきまで僕が考えてた事って...」


「完全なる勘違いだな」


「...... 穴があったら入りたい」


後悔しながら発したその言葉も大和に軽く笑い飛ばされた。しかもめちゃくちゃ爽やかに。


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