君は綺麗だ

千莉

第1話 体調不良

もう6時が近いのに日がまだ高い。少ししか歩いていないのに汗をかいている。家に帰ったら真っ先に麦茶を一気飲みする。絶対にだ。僕、れいは夏が大嫌いだ。暑いのも嫌だし汗をかいた時の不快感が嫌で仕方がない。まぁそんな中でも馬鹿みたいに元気が有り余っている奴も居る訳で。


「おい 怜!」


「うわっ! エスパーかよ!」


「んあ? なんか言ったか?」


「いや... 何でもないよ」


真っ黒に日焼けしてまるで小学生の様に満足そうに笑いながら話しかけて来たのが僕の幼なじみの大和やまとだ。幼稚園からの仲で気づいたら中学、高校でも一緒にいる事が多くなっていた。


「んだよ怜 元気ねぇな」


「大和が元気すぎるんだよ 暑くないの?」


「暑いから元気なんだよ!」


「訳わかんない...」


大和と下らない話をしながら茹だる様な暑さの中を歩いていたが急に目眩がしてしゃがみこんでしまった。クラクラして気持ち悪い。体がふわふわする。


「怜 大丈夫か?」


喋ろうとしたが気持ち悪くてそれどころじゃない。首を振ろうにも気持ち悪くて無理だ。


「仕方ねぇな リュック貸せ」


どうにかリュックを下ろすと大和が片方の肩に自分のもう片方に僕のリュックを背負った。リュックを持ってもられるなら大丈夫かも。家は隣同士だしこのまま甘えてリュックを持ってもらおう。どうにか立ち上がろうとした瞬間体がふわっと持ち上げられた。


「ちょっ...下ろしてよ」


「無理。だってお前めっちゃ顔色悪ぃもん」


「重いからっ...」


「お前細いから軽いわリュックあっても余裕」


「でも...」


「怜が具合悪くなったり怪我したら運んでたのはいつも俺だろ?」


考えてみればそうだ。すぐに体調を崩した僕を保健室まで連れて行ってくれたのは保健委員ではない。いつも大和だ。1回だけ先生に運ばれた事があった。その時は不安しかなくて泣きそうになってしまった。その後大和が来てくれて一気に安心したのを今でも覚えている。いつしか大和の体温や声は僕の落ち着くものになっていた。


「じゃあお願い」


「勿論 家に着くまでに寝たかったら寝とけ」


その一言で安心しきった僕はすぐに眠気に襲われてしまった。

部屋のドアをノックする音で目が覚めた。どうやら大和がベットまで運んでくれたらしい。ドアの方を向くと母が心配そうな顔でこちらを見ていた。


「怜 大丈夫?病院行く?」


「ん... 病院行くよりも寝たい」


「そう... ならいいけど 体調がこれ以上悪くなりそうなら言いなさいよ?」


「分かった」


ひたすらに眠くて適当に返事を返したが寝れる訳がなかった。汗をかいていてベタベタで気持ち悪い。着替えを適当に取ってシャワーを浴びる事にした。とりあえず母に一声かけてから脱衣場に向かう。制服を脱ぎ捨てて風呂場に入る。風呂場の鏡に真っ白でひょろっとした自分の体が写っている。大和は日焼けをして男らしいガッチリした体をしているのだろう。そんな事を虚しくなったからさっさと体と髪を洗って上がった。母に上がった事を伝えて部屋に戻る。ベッドの上に倒れ込む様に寝っ転がるとスマホにメッセージの通知が来ている事に気づいた。想像した通り、相手は大和だった。


〘起きる気配がなかったから部屋まで運んだけど大丈夫か?〙


との事だった。予想的中。


〘大丈夫だよ〜〙


と一言だけ返して可愛めのスタンプを一緒に送る。すぐに既読がついてキャラクターがほっとした様な顔をしているスタンプの後に


〘無理すんなよ〙


と一言だけ来たので了解と言っているキャラクターのスタンプを送り返したらそこでやり取りは終わった。と同時にまた眠気に襲われた。もうシャワーも浴びたし寝よう。そう思ってタオルケットを肩まですっぽりと被って深い眠りについた。




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