第13話 体育祭4

「ゼェ……ゼェ……」

あれ?

校庭の一周ってこんなに長かったっけ?


いつの間にか後ろにいたやつらは前を走っている。

ちらりとクラスの方を見てみると、それでもみんな懸命に応援してくれている。


そんなみんなの応援に後押しされながら、何とか次の人へバトンをつなぐ。

俺はレースの邪魔にならない場所で倒れこむ。


「よく頑張ったよ太郎!」

「お前の頑張る姿には胸が熱くなったぜ!」

「本当はもっと遅れる予定だったから頑張ってくれたよ!」

皆が俺を褒めたたえる言葉を言ってくれる。

……あれ?なんか俺、最初から期待されてなくない?


まあ、そんなことはないだろう。

だって中には俺の勇姿に感涙している奴もいるのだから。

ああ、また俺のファンが増えて——


あれ?目から汗が……

おかしいな、汗はさっき拭いたはずなのに……

次々と溢れてくる。


そしてしまいには嗚咽していた。

「泣くなよ太郎!悔しいのは分かる!でもお前は良くやってくれた!」

クラスの子がそう元気づけてくれる。

「でも!俺は一位が取れなかったのが悔しくて!」

いつの間にか俺はそれに答えていた。


「いいんだ!それでも俺たちは救われたんだから!お前は俺たちのヒーローだ!」

そこで思いだした。

彼らたちが俺にしてくれていたことを。

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