帰還した古代の宇宙船、生還者一名

百田なつめ

百年後の、未来へと


『新世界を共に見に行こう!』


 仰々しい見出しとともに、乗船員が募集された光速宇宙船『アフェリオス号』。


 宇宙旅行が一般化していた新暦2159年においても、それは革新的なプロジェクトだった。

 宇宙で限りなく光速に近い速度で航行し続けることができれば、時間の進み方が遅くなり、地球に戻ったときに相対的に若い状態でいられる——たった一年の運行時間で、五年先の未来へ行く計画などは当時としてもすでに成功していた。だが、アフェリオス号の計画はもっとスケールが大きいものだった。


『トゥザネクスト計画』とは、一年の航行期間で百年後の未来に向かうプロジェクトだ。乗船者はたった一年間の準光速宇宙飛行を楽しむだけで、百年後の未来へ行くことができる。


 最先端技術を結集させたこのプロジェクトは、スペースネクスト社の野心的なCEO——アロン=スミス氏によって立案され、実行に移された。

 乗客に途方もないリスクが伴うことから、発表されたときには世界中から非難が巻き起こったものの——乗船者には何百という人間が応募する。その中から選抜、抽選が行われ選ばれた乗船員四十三名。彼らを抱えたアフェリオス号は、新暦2161年、ついに宇宙へと発進する。







 新暦2261年、アフェリオス号が地球に帰還した時、生還者はたったの一名だけだった。

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