第06話 父と継母を殴る
「ジオルグ、貴様一体何をしているのだ!!」
ガーゼルの刺々しい声に私は冷笑をもって迎えた。
「な、なんだ!! その態度は!!」
私の嘲りの感情を察したガーゼルは怒りの感情を爆発させた。
「カイン、ライド……ガーゼルとアルマダを捕らえよ」
「「はっ!!」」
ガーゼル達に付き従う二人の執事は私の命令を即座に実行に移した。三秒も経たずに二人は床に組み伏せられる。
「何をする放せ!! 貴様ら一体何の真似だ!!」
「お前達!! 誰に何をしてるかわかってるの!!」
当然のことではあるが、組み伏せられた二人は自分を組み伏せている執事二人に向かって罵った。
「「黙れ!!」」
二人の執事の一喝にガーゼル達は驚きの表情を浮かべた。カインとライドは忠実な執事であると思っていたからである。
「ガーゼル、アルマダ……これよりお前達を断罪する」
私の言葉に二人は驚きの表情を浮かべるが次の瞬間には怒りの表情に変わった。
「ふざけるな!! このザーフィング侯爵に貴様ごときが何のつもりだ!!」
「ジオルグ!! あなたごときが何の真似よ!!」
二人の罵る声を私は当然のながら無視して話を続けた。
「罪状は前ザーフィング侯爵であるエルフィル殺害、並びにザーフィング侯爵家簒奪だ」
私の発した言葉に応接室に激震が走った。その様子を見てニヤリと私は嗤いながら視線を向けた。
私の視線を受けた者達は身を震わせる。既に金の動きを私が掴んでいるのは知っている以上、ハッタリでないことはわかっているのだ。そして当然ながらそれに自分達も逃れることは出来ない事もわかっているのだ。
「元代侯ガーゼル……貴様は前ザーフィング侯爵エルフィルを妻アルマダと謀り暗殺したな」
「な、ふざけるな!! そんなことはしない!!」
「そうよ!! どこにそんな証拠が」
「だまれ」
私の一言にガーゼル達は口を閉じる。
「私がいつお前達に発言を許した? つけあがるなクズ共が」
「な……お前、父親に」
「だから黙れと言っているのだ。ザーフィング侯爵の言葉を遮るとは頭の悪い男だ」
私はそう言って立ち上がるとガーゼルのもとへとスタスタと歩く。その途中で壁に掛けてある展示用の剣を手にする。鞘はついたままである。
私の意図を察したカインはガーゼルの頭をぐいと掴むと無理矢理引き起こした。
私は満足気に頷くと手にした剣でガーゼルを殴りつけた。
バギィ!!
異様な音がしてガーゼルの顔が高速で横を向く。もちろん十分に手加減したがガーゼルの口から血と砕けた歯がこぼれたために手加減したとわかるものは私の部下ぐらいであろう。
「ひぃ」
アルマダの口から恐怖の声があがる。
「立場を理解したか? それでは話を続けようか」
私がそう言うと今度は口を差し挟むようなことはしない。
「ガーゼル……貴様が毒を仕入れた証拠もある。毒の種類はエケール。無味無臭の遅効性の毒だ。仕入れた商人はアル=ガルゴ。……ここまでで何か訂正はあるかな?」
「あ、ああ……」
「母に毒を盛った侍女の名はアンナ=カルゼス。アルマダの侍女だったな。母と話し合いの場を称して毒を盛った。エケールは先ほども言ったが遅効性の毒だ。その場で毒の効果が現れない。毒の効果が現れたのは五日後だ」
私の視線を受けてガーゼルとアルマダは顔を青くしている。
「アル=カルゴは既に捕らえてある。一応生きている。まぁそう長くはないだろうがな」
「え?」
「当然だろう……侯爵暗殺の共犯だ。無罪放免というわけないではないか。あぁ……そうそう最近、アンナ=カルゼスを見ないだろう?」
「そ、それは……まさか」
「ああ、尋問に少々力が入ってしまってね」
「まさか」
「不幸な事故だったよ」
「ひっ!!」
アルマダが短く恐怖の叫びをあげた。
「今さら何を恐れる? お前達は母を毒殺したではないか。たかだか侍女が不幸な事故にあったからといって大した事ではないだろう?」
「ま、待ってくれ!! ジオルグ!!」
バギィ!!
再び私はガーゼルの顔面を剣で殴りつけた。再び血と歯が飛び散った。
「本当に頭の悪い男だな。多少の痛みでは学ぶことはできんか。私の聞いたことだけに答えろ。あまりイラつかせるな。うっかりと力加減を間違えそうだ」
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