第13話出会いは必然

社員さんは、優しかった。

「これ」

社員さんから渡されたのは、次の定休日一緒に食事がしたい。

それと、携帯の番号。

ドキドキが止まらない。

トキメキなのか

破滅の序曲なのか

とりあえず、今週の水曜日に食事に行く

楽しもう

私は割と能天気で無防備

着ていく服も見に行こう

チラチラ

視線を合わせながら

ドキドキ


運命の水曜日

ドキドキしながら、待ち合わせの場所に行く

白のサマーセーターにジーパン

私は、黒のワンピースにアンクレットに

小さめのカバン

何となく俯いてしまう

社員さんが紹介してくれたのは

普通のお店だったんだけど

社員さんオススメの天麩羅定食を食べる

美味しいかった

凄く優しかった

小物を見たり

スーツを見たり

何をしても楽しい

終電がなくなり、タクシーで帰ろう

と思ったけど

自分の家で仮眠したらいいよ

の声に何も疑わない

特段何も無かったし。

2人で手を繋いで寝た。

いい意味でも、悪い意味でも忘れられない人になるなんて。

ぐっすり寝れた。

次の日彼の部屋から仕事に行って、仕事が終わると着替え、生活日常品を入れて家を出る

好きな気持ち半分

家に帰りたくない半分

どちらも本当

親も探さないと思ってたし、親という観点が私にはない。

普通に、仕事をこなしていく。歳が若いからアルバイトの子に嫌がらせもされたが、気にしない。辛いけどね。

でも、壊れていくのは感じていた。

フードコートの社員にはなったけど、意欲は無かった。辞めたいしか無かったな。

仕事が終わると、店長から呼び出された。

「お前家に帰らずどこに帰っている!」

「彼氏の家です」

「誰だ?」

「本人から言わします」

店長がこんなに怒るの初めて見たなーって思いながらも、あの家にいたら窒息する。

家に帰る前に、スーパーに寄って簡単なカレーを作る。和風ベースのサラサラカレー。

私がこっちの方が好きだから。

後は帰って来るのを待つだけ。

後は洗濯物を取り込む。

サラダはお店で買ってきたものを。

カチャカチャ

という音がして、彼氏が帰ってくる。

「おかえり」

「ただいま」

ぎゅっと抱きしめられる。

今思えば、女遊びの上手な人。

馬鹿だな

未来の私が呟く。

カレーとサラダをテーブルに置く。

「すげー美味い、お代り」

私はお代わりを渡す

ガツガツ食べているのを見ているだけで、幸せ。

「店長に家帰ってないのバレた」

慌てる様子もなく

「実家に挨拶にいくよ」

出て行けと言われるかと、思っていたからホッとした。

お互い明日定休日で、休みなので実家に連絡する。明日彼氏と家に帰ると。

緊張することも無く眠る。

手土産を適当に用意して

実家に向かう電車に乗る

嫌だな

また、家族ごっこ見ないといけないんだ

電車を乗り換えて自宅に着く

開けた瞬間殴られる

頬が痛い

彼氏が、背中に庇ってくれる

庇われるなんて、初めての経験

ちょっと、かなり感動

彼氏が土下座をして

「お嬢さんとは、結婚を前提にお付き合いしています。責任は取ります」

そうなんだ。

結婚って19で?

20歳位かな?

鬼のような目で私を睨むが無視。

食卓にはご馳走が並んでいた。

鍋と、刺身と、筑前煮と、茄子料理

なんなの、この猿芝居。

私は刺身だけ食べる。

2人の家に帰りながら、馬鹿だから純粋に信じてしまう。

破滅の次曲だとは、知らずに。

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