コミュ障の二人

立花 ツカサ

第1話 二人の出会い

じいちゃんが、体調を崩してもう長くないらしい。


 母さんと父さんと一緒に、季節外れの里帰りをした。

田舎の春はまだまだ寒かった。


 病院へ行って、ばあちゃんから教えられた病室へ三人で入った。

椅子に座ったばあちゃんと、ベットに横たわりながら、ばあちゃんと話しているじいちゃんの顔が見えた。

父さんが

「父さん母さん、帰ってきたよ。父さん大丈夫か?」

と言ってベッドに近づいた。

近づいてじいちゃんをみると、体はひとまわり小さくなったように感じた。


去年の夏に帰った時には、畑で野菜の世話を楽しそうにしていた人が、こんなに(言い方は悪いが)ヨボヨボになってしまうのだと思うとじいちゃんも歳だったんだなと感じる。

「おぉ幸志か。俺はまぁ元気だ。心配するな。

おっ、愛子さんも楓も来てくれたか。ありがとな〜」


母さんは

「お義父さん心配しましたよ。でも元気そうでよかったです。

お義母さん、これどうぞ。羊羹です。」

小柄で髪が真っ白のおばあちゃんは

「まぁまぁ、愛子さんごめんなさいねぇ。

家に帰ったら食べましょう。

じゃあお父さん幸志たちと一緒に帰るからね。」

「おう、気をつけてな。」


車の中で、ばあちゃんは先生から聞いたことを話した。

「老衰」ということになるらしい。

まあ、じいちゃんもばあちゃんも、もう80過ぎだから仕方ないだろう。


都会では考えられないほど大きい家に着き、中で羊羹を食べながらお茶を飲んだ。

「楓くん、大学はどう?」

「あっえっと・・・楽しいです。」

「そう、なら良かったわ。」

それから、いろんな話をした。

僕のこと、家族のこと、じいちゃんの付き添いのこと

 ばあちゃんが「あっ」と言って話し始めた。

「楓くん明日ねぇ、絃ちゃんがウチに来るから。」

「・・・はい。」

「あっ絃ちゃん分かるわよね。

私の従姉妹の孫の夏川絃ちゃん。もう中学生よ。」

めっちゃ遠い親戚だし、僕は多分1回か2回ぐらいしか会ったことがない子だろう。顔も思い浮かんでこない。

「で、明日幸志と愛子さんには買い出しに行ってもらうから、絃ちゃんに勉強でも教えてあげて。」


えーなんでなんでなんで

僕、無理ですよ。


「楓、よろしくね。」

母さん?何言ってるの?

見ると、父さんも母さんもなんか微妙に笑っている。

いじめではないか。



次の日

「じゃあ、行ってきます。」

「そんじゃ、楓がんばれよ。絃ちゃんによろしくな。」

「・・・」

「いってらっしゃい。気を付けてね。」


九時からその子は来た。

「おはようございます。」

「はぁい。絃ちゃんいらっしゃい。また背が伸びたんじゃない?」

「そうかもしれません。おじさんは大丈夫ですか?」

「あ〜元気そうよ。相変わらず口数は多いわ。」

「それなら良かったです。」

「さぁ、上がってちょうだい。」

「お邪魔します。」


勉強をしていた僕はばあちゃんに「ほら、絃ちゃん来たわよ。」と言われ、慌てて居間へ行った。

そこに立っていたのは、身長は150cmぐらいで、シュッとした顔立ちに肩より少し長い髪を一つにまとめ、メガネをかけた女の子だった。

「おはようございます。お邪魔しています。」

斜め四十五度の綺麗なお辞儀をし、僕の方をスッと見上げてきた。

慌てて僕も

「どっどうも」と言ってお辞儀をした。

「じゃあ絃ちゃん、楓くんに勉強教えてもらいなさい。

楓くん大学生だから。」

「よろしくお願いします。」

夏川さんがまた僕に言った。

「うっうん。じゃあ筆記用具持ってくるわ」

「あっいや、私がそちらにいきます。その方が、楓さんの勝手がいいでしょう。」

はっはぁ・・・

「あっじゃあ、こっち・・・」



じいちゃんのお見舞いだと思ってきたら、中学生の勉強を見なければならないなんて・・・僕って、運がないな・・・


おばあちゃんが出かけるからって、なぜ私が遠野さんの家に預けられなければいけないのだろうか・・・ていうか、勉強わかるんだけど・・・













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