第578話 プライバシー
明日の日曜日は紋次郎兄ちゃんの叔父さんの所へ、ユリさん達が交渉に行くのだと思う。
それが片付けば、凶悪な呪物から紋次郎兄ちゃんが呪われることは無くなるから、よかったわ。
りんどうさんが泊まるのは、紋次郎兄ちゃんが内緒でユリさんに付いて行かないように、桃代姉さんの作戦なんだろうなぁ。
もちろん、お泊り会はあたしとりんどうさんの為でもある。
お泊り会で友達と一緒に眠るのは、鬼恵ちゃんと鬼美ちゃん以来だし、りんどうさんは初めてらしい。
あたしもそうだけど、りんどうさんはお泊り会が決まった時から、ずっと笑顔を絶やさない。
そのりんどうさんは隣で横になっている。だからなのか、鬼恵ちゃんと鬼美ちゃんの二人が泊まった時を思い出した。
あの時は二組の布団をくっ付けて、三人で眠りについたけど、お喋りが止まらなくて
二人とも元気かなぁ?・・・って、黄泉の国に居るのに元気も何もないわね。
「キーコさん、今日はありがとうね。キーコさんが手をつないでくれてたから、水に
「そうなの、それはよかったわ。でもね、りんどうさんが一緒に居てくれたから、あたしも楽しかったの。だって、紋次郎兄ちゃんがずっと
「そうだね、今日は一日中紋次郎君が一緒で楽しかった。だけどトランプをしてる時は、ちょっとかわいそうだったよね」
「アレは仕方がないよ。紋次郎兄ちゃんったら、ババを引く
「ジョーカーだけでなく、何を引いたのかも
「うっ、知ってたの? だって、なんだか可哀想でしょう。それなのに指に力を入れて、あたしには引かせてくれなかった。どうしても桜子さんに引かせたかったみたい」
「ビリになると、桜子さんにずいぶん
「そんなことないよ。二人とも言いたい事を言い合ってるから、実は一番仲が良いかも知れないよ。それよりもりんどうさん、お風呂の中でずっと桃代姉さんを見てたでしょう」
「見てたけど・・・だって、あれも仕方がないよ。前に紋次郎君がね【桃代さんは、鉄仮面とは無縁のやわらかさ】って言ってたの。今日初めて見たけど、本当にやわらかそうなんだもん。ボクも桃代さんみたいになれるかな?」
「そうだね~なろうとしないとなれないよね。だから、桃代姉さんみたいになるには、たくさん食べてたくさん勉強をする。外見だけでなく中身が伴わないと、紋次郎兄ちゃんみたいな人と出会えないよ」
「 そうか、そうだよね。なろうとしないとダメだよね。キーコさんも桃代さんになる為にあんなに食べてたの?」
「あら、あたしだけじゃないでしょう。りんどうさんだってたくさん食べてたよね?」
「だって、桜子さんが変なことを言うから、たくさん食べないとイケない気がしたんだよ」
「そうね。だけど、あれは良くない言い方だよね。だって、ぽっちゃりだけど桃代姉さんはデブじゃない。あたしから見てもフワフワしてて可愛いもん」
「わかる~真面目な話をする時の桃代さんと、紋次郎君と話をしている時の桃代さんは別人みたいだよね」
「そうそう、真面目な時はキリッとして、紋次郎兄ちゃんと話をする時はフニャっとなる。表情もコロコロ変わってギャップがあるよね。だからね、あたしの理想は桃代姉さんなんだ」
「あっ、それだったらボクも、ボクも桃代さんを理想にする」
「よし、じゃあ、お互いに桃代姉さんを目指して頑張ろうね」
もちろん聞くつもりは無かった。
ただ、ちょっとトイレに行こうとキーコの部屋の前を通っただけ。それなのに、とんでもない会話が聞こえて来た。
おいおいおい、キーコとりんどうは桃代が理想の女性なのか? いや、まぁ、確かに俺の理想は桃代だけど、やめておいた方がいいぜ。あいつは自分の意にそぐわないヤツには、とことん冷淡な人だから、せっかく出来た友達が離れていくぜ。そして、将来はピラミッドを作ることになるぜ。
てか、桃代を目指すと、あいつの子分になって、将来はミイラに一直線だぜ。
もちろん聞くつもりは無かった。
ただ、気になる会話だったので、つい聞き耳を立ててしまい時間が経ったせいで様子を見に来た桃代に見つかり、耳を引っ張られながら寝室へ連れ戻されると、【女の子同士のプライバシーは尊重しなさい】って、至極まっとうな理由で怒られた。
桃代さん、確かにあなたの言う通りです。二度と聞き耳を立てないようにします。
だけど、盗聴で俺のプライバシーをわやくちゃにするくせに、あなたがそれを言いますか?
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