第330話 ちょっと前の桃代
桃代は寝室ではなく、乱雑に物が
そうそう、このフォトブックの中にある写真で、桃代の制服姿を見たんだった。
桃代はページを
ページを
特に、カワウソの着ぐるみを着たユリがキャーキャー言うと、音がこもって鬱陶しい。
【静かにしろ】と注意をしたいところだが、苺とクルミ、更にキーコまで一緒に騒いでいるので注意が出来ない。
「・・・ ・・・ ・・・あった! ねぇ、紋ちゃん、小さくてわかりづらいと思うけど、ここをよく見て。この全校生徒が写っている写真、この子、この子に見覚えはない?」
「どれ・・・ ・・・なんか、小さすぎてよく分からないな。なあ、キーコ、おまえはどうだ?」
「紋次郎君はバカなの? 桃代姉さんの昔の写真に、キーコちゃんの知ってる人がいる訳ないでしょう」
「この人・・・この写真の顔は
「えっ? 知ってる人がいたの? えっ? 楓さんって、いま紋次郎君が話してくれた幽霊だよね」
「桜子はちょっと静かにしてくれる。どう、紋ちゃん。今のキーコの見立てを頭に入れて、もう一度よく見て」
「んっ?・・・本当だ。この顔を
「いいえ、わたし自身は話した事すらないよ。でも、そうすると楓の心残りはアレかな? アレを解決する為に、紋ちゃんに目を付けたのかな? だけど危険すぎる。さて、約束をしたようだし困ったわね」
「ももよさん、一人で納得してないで、ちゃんと説明をしてもらえます。桃代は知らないのに、話をした事もない楓は、どうしてあなたを知っているの? 心残りのアレって、なんのことだ?」
「紋次郎君さぁ、あんたが思うより桃代姉さんは有名なんだよ。この
「まあ、桜子の言いたい事はわかる。俺がここに来た時に聞き込みをしたら、商店街の爺婆もみんな桃代の事を知ってたからな」
「それに、オッパイが大きいから、男子連中にしょっちゅう交際を申し込まれてた。みんな玉砕してたけど、玉砕した男の子は自分の
「ひどい、完全な逆恨みじゃあないですか。桃代姉さんはすごく表情が豊かなのに、鉄仮面なんて失礼過ぎるよ。ねぇ、紋次郎兄ちゃん」
「ホントそうだな。桃代の気を
「えへへ、さすがは紋ちゃん、よく分かってる。それでこそ、わたしのお婿様よ」
黄金のマスクは嫌味のつもりだったのに、桃代のヤツ、喜んでいやがる。
更に、桃代がお婿様なんて言うから、ユリの親父もニヤけた顔して、なんか腹が立つ。
「でも、まぁ、アレよ、わたしに交際を申し込む時点で間違ってる。だって、わたしは小さい時に、紋ちゃんと結婚してたんだから」
「ももよさん、あれはママゴトですぜ。それよりも、楓が桃代を知ってる理由は理解した、鉄仮面の意味もわかった。じゃあ、楓の事を教えて、心残りのアレってなんなの?」
「楓の心残り・・・あくまで噂の
「正体って言われても、桃代の同学年の生徒か上級生なんだろう。何をそんなにもったいぶってるの?」
「あのね、以前、紋ちゃんにも話したでしょう。わたしが高校一年生の時に、三年生の子が三人、山に入って化け物か
「え~っと、なんだっけ、それ? なんか、怖い話だったから憶えてない。てか、もう聞きたくない」
「もう、ちゃんと憶えてないとダメでしょう。紋ちゃんが危険な場所に行かないように話して聞かせたのに・・・」
「桃代姉さん、あたしにもその話を教えてください。楓さんに関しては何か引っ掛るモノがあるんです」
「いいけど、愉快な話ではないわよ。それから、この話の真相はハッキリしてないの。ただ、三人の人が死に、無責任な噂が尾ひれをつけて広がってるだけだからね」
「無責任な噂っていうのが一番厄介だよな。それに真実味を加えて、面白おかしく広めるヤツがいるからな」
「そうね、紋ちゃんの言う通りよ。だから、聞いたところでキーコも参考程度にしておきなさい」
桃代が高校一年生の時の話。
ひとつ山を越え、その先にある県の所有だか国有地なのかは知らないが、化け物が出ると言われる山に男二人と女一人で探検に行き、化け物だか
桃代から一度は聞いた楓の話、もう一度聞いても気分が悪い。
楓に感情移入をしたから? そうではない。
桃代の手のひらでおちょくられ続ける、自分の過去を思い出したからだ。
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