第312話 入院生活
病院送りになり、ほぼ一日、俺は目を覚まさなかったらしい。
バカ龍神がバカ力で抱きついたおかげで、数本のあばら骨にひびが入り、俺の体にはコルセットが巻いてある。
他にも、
ついでに、極度の衰弱状態で、注射針を刺され腕から点滴をされ続けた。
まるで重傷重病患者だ。
森の様子を見に行っただけなのに、どうしてこうなった?
仕方がない、自業自得だ・・・いや、龍神の
なんて、龍神なんかどうでもいい、早く退院して苺の墓を作ってやらないと、俺が苺の寿命を縮めたのだから。
苺の事で、時どき落ち込む俺を気遣い、桃代は毎日やって来て、午前10時の面会時間から面会時間終了の午後8時まで病室に居座る。
当主の俺は知らなかった、この病院は真貝の人間の掛かり付けらしく、真貝の会社の人を始め、その家族もよく利用しているそうだ。
なので、俺は生れて初めての個室を
桃代は個室という事もあり、毎日パソコンを持って来て、看病がてら仕事もキッチリこなしている。
相変わらず凄いヤツだ。バカな俺とは大違いだぜ。
桃代は、あのあとの事を何も喋らない、俺も聞こうとはしない。ただ、俺とは違い落ち込む様子を見せない。苺に関しては区切りを付けていたのだろう。
入院当初はヒビの入ったあばらが痛くて、寝返りも打てない俺の為に、桃代は甲斐甲斐しく世話をしてくれた。
だが、すでに入院5日目だ。数日前に点滴は外れたし、そろそろ普通にしてほしい。
「はい、あ~ん。いっぱい食べて早く元気にならないとね。はい、次はこれ、あ~んして」
「いいか桃代、おまえには本当に感謝している。だけどな【あ~ん】はやめてくれ。自分が情けなくなる。それに、もう元気になった。明日にでも退院させてくれない?」
「あのね~お医者さんから許可が出るまでダメに決まってるでしょう。それに退院日を決めてからでないと、退院祝いのサプライズパーティーが出来ないじゃない」
「いや、そんなパーティーは
「え~~みんな頑張って用意をしてるのに・・・ひとり一つずつカボチャのランタンまで作ったんだよ」
「あのな、それは退院祝いのパーティーでは無くてハロウィンパーティーだろう。俺はその手の行事に興味がない。だから、お願いだから、次の日にそのカボチャを使った料理を出さないでください」
「もう、我が儘ね。いい、みんなに心配させた紋ちゃんに拒否権は無いの。キーコなんて【自分のせいで入院した】って、落ち込んでいたのよ」
「なんでキーコのせいなんだ? 意味がわからん。どう考えても俺の自己責任なのに。いや、龍神のせいだったな・・・あのヤロウ、退院したらカボチャで殴ってやる」
「その龍神様もね、今は元気が無いのよ」
「そうなの?・・・あいつも責任を感じているのかも知れないな。カボチャは勘弁してやろう」
油断すると暗い雰囲気になるので、注意してたのに、やはり俺はバカなんだろう。
その日の桃代は、食事の介助が終わると早めに帰った。
んっ?
まして
まあ、それはさておき、売店が開いてるうちに暇つぶしになる物を買いに行こう。
桃代が居なくなれば、暇だからな。
まだ激しい動きは出来ないが、普通に歩くのは問題ない、俺はリハビリを兼ねて階段を使い、売店に行くことにした。
一階にある売店に行き、適当に雑誌とおやつを買うと個室に戻る。
もちろん戻る時も階段を使うのだが、三階から四階に続く踊り場を曲がったところで、階段の途中に座っている、パジャマを着た見知らぬ子供に声を掛けられた。
「ねぇ、兄ちゃん、兄ちゃんはなんで入院してるの? どこが悪いの? ボクは頭がおかしいんだって。だからね、検査して何も無ければ、お寺に行くんだって」
「おぅ、なんだ、おまえは? いいか、今はそういう事を聞くと逮捕されるぞ。個人情報取り扱い・・・ではなくて、なんで病院の次が寺なんだ?」
「だってぇ、【頭がおかしくなければ、お寺でお祓いをしてもらいなさい】って、先生に言われたよ」
「おお、そ、そうか、なんだかよく分からないけど、きっと大丈夫だ。あっと、食後の薬を飲むのを忘れてた。それじゃあオイラは失礼します」
ヤバい、いや、重そうな話なので俺はこの場を逃げ出した。
なんで見ず知らずの俺に、そんな話をするんだよ・・・検査の結果が気になって仕方がないだろう。
病室に戻った俺は、さっきの子供の話が気になり、買ってきた雑誌を読むことなく、あの子供のことを考えていた。
どういう意味なんだろう? 頭がおかしくなければ、寺でお祓いをしてもらう?
それって、他人に見えない誰かと喋ってる姿を見られたせいで、頭の検査をさせられるって意味なのか?
異常が無ければ、何かが取り憑いてるから、お祓いをしてもらうって事なのか?
まあ、どちらにしても俺には関係ないことだ。深入りしないようにしよう。
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