第276話 重たい

三人寄れば文殊もんじゅの知恵。

せめてあと一人、まともな思考の持ち主に相談したいところだ・・・・一部まともでないが、まずは桃代だ。

しかし、桃代を引き入れて危険な目に遭わせたくない。桃代に相談をしてろくでもない目に遭いたくない。

【また無茶をしてッ!】そんな感じで怒られて、寝ずの説教や手錠をはめられて母屋に監禁される俺の姿が見えるから、桃代は無理だな。


次に相談できそうなのはキーコなんだが、この件をキーコに相談する事は出来ない。

あの子には余計な心配を掛けたくないからな。


あとはユリと桜子、それから梅さんなのだが・・・もしも、この件をユリに話せば、全て桃代に筒抜けになる。

桃代は否定をしていたが、スッパイ3号はキーコではなく、ユリなんだと思う。


残りは桜子と梅さん。俺と龍神、それと同じレベルのバカだから、桜子に相談しても意味が無い。桜子は一番ダメだ。


最後は梅さん。梅さんは桜子と違い頼りになるのだが、年寄りに重たい相談をしたくない。梅さんもダメだな。


さて、どうしよう? 龍神は仕方がないと思うが、他に相談できる相手が居ない俺は、不味い気がする。

龍神にボッチなんて言ってる場合では無い。


「なあ龍神、確認させてくれ。苺って水神の遣いなんだろう。水神に頼んでなんとかならない?」

「そう言われても・・・水神って何処どこにおるん? ワシはうた事もないけど」


「そうなの? じゃあ無理だな。それから、このままだと苺はどのくらいの時間で、みずちに身体を乗っ取られるの?」

「それもわからんのう。苺の精神力がどのくらい持ちこたえられるか、それ次第じゃ。じゃが、幸いなのは、苺も水を操るという事じゃ。みずちと同じ特性じゃから、苺の能力が高まるだけで、取り憑かれても破裂はせんし、耐性が高いんじゃ」


「なるほどな。じゃあ、森で行方不明になってから二日経ったから、このまま耐え続ける事は出来ない?」

「紋次郎、それは甘い希望じゃ。あんたは何事も甘く考え過ぎじゃ。その甘い考え方でみずちを自分に移して祓う。それだけは考えんようにしんさい。破裂するのがオチじゃけぇ」


「う~ん、やっぱり同じ思考のバカが二人居たところで、良い方法は思いつかないな。でも待てよ、苺に聞いたらどうなる? 水神の事とか、直接アイツに聞くのはどうなんだ?」

「う~ん、それかぁ? まあ、それもひとつの手じゃけど。じゃが、上手うまく聞くようにせんと、苺にも取り憑いとるみずちに悟られるのも不味い。紋ちゃんはバカじゃけぇ、すぐボロを出しそうじゃし・・・」


「おめえが言えた義理かッ。それじゃあ、母屋に戻ってさっさと聞こうぜ。対策をたてるのに時間が掛かるかも知れないからな」

「今はダメに決まっとるじゃろう。桃代さんに聞かれたらどうするんじゃ。あの人は勘が鋭い。ワシ等の思惑なんぞ瞬時に見破るで」


「そうな、そうな、龍神の言う通りだな。もしも、桃代にバレたら、俺は折檻の嵐だ。おまえもわやくちゃに怒られると思うぜ」

「イヤじゃ~ 桃代さんの怒り方は、あまちゃんさんに似て、もの凄く怖いんじゃ。紋ちゃん、苺が一人の時間に聞く事にしようか」


「そうだな。明日の午前中、桃代が仕事をしてキーコが勉強をしてる時間にしよう。それだったら聞かれないと思う。それでいいか龍神」

「そうじゃな。それしかないのう。あとは何処どこで話を聞くかじゃが、母屋はダメじゃ。あそこは桃代さんに筒抜けになる気がする。なんでじゃろ?」


「そうなんだよ、俺もそんな気がする。もしかすると、母屋の中は盗聴器だらけかも知れない」

「怖ッ、ええか紋次郎、あんたは考えとる事が顔だけじゃのうて、実際に口からだだ漏れしとる。そこんとこを気を付けんさい。ワシにとばっちりが来るけぇね」


「そうだな、そこは気を付ける。あとな、おまえもそうだから。デカい図体のくせに、桃代に強く問われただけで、おどおどするのはやめろよな。俺も一緒にとばっちりを受けるからな」


とばっちり、飛び散った水が掛かること・・・相手がみずちだけに水の扱いには慣れている・・・って、全然関係ないか。


龍神の内緒話は、想定外に重たい内容だった。

できれば聞きたくない内容だった。

だが、苺を助けてやらないといけない。

苦手ななヤツだが、俺に気を遣ってくれて本来の姿を見せることなく、みんなの輪に溶け込んでいる。


そいつを見捨てるなんて出来るはずもない。


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