第259話 死蝋
龍神に連れられてしばらく移動すると、前方にある少しひらけた場所に、落ち葉にまみれた真っ白な何かが倒れているのを、俺は見つけた。
なんだアレは? ヘビの姿の苺ではない。
では、人間か? それもおかしい、人間はあんなに白くなれない。
もしかすると全ての血液が流れ出た
じゃあ、マネキンや人形の
まさか!
仮に
気味の悪さを強く感じた俺は、龍神に止まってもらい背中から下りると、少しずつ、ちょっとずつ近付く。
今は風が止まっている
死臭がしないだけかも知れない。
ただ、アレがチーズ化した遺体ならば、しばらく俺はグラタンが食べられなくなる。
近付いて確認するが、うつ伏せで倒れているそれは、余りに異質で恐怖の対象でしかなかった。
どうしよう? また見つけちゃった?
いやいや、俺が見つけたのではない。今回は龍神に連れられて来ただけだ。
俺が呼ばれた訳ではない。
それよりも、コイツは誰なんだ? 見た感じ若い女のように見える。
可哀想に、身包みを
警察に連絡を入れたいが、スマホは圏外・・・連絡も出来ない。
俺は遺体に手を合わせて冥福を祈ると、リュックの中から線香を取り出し、一本そこに供える。
遺体の発見を警察に連絡するのは、苺を見つけてからにしよう。
中途半端な供養を済ませ、苺の匂いがある場所へ移動するよう龍神に頼むと、ヤツは顔をしかめた。
「なんか、関係の無い死体を見つけたけど、この
「あのな~紋ちゃん。あんたは何を言うとるんじゃ。苺なら目の前におるじゃろうが。おいッ苺! あんたもそろそろ死んだフリはやめんさい」
「へっ? 苺って? この
「ええか紋次郎。ヘビは死んだフリが出来るんじゃ。まして、苺は狡猾な婆ヘビじゃ。白ヘビの色だけ残して人の姿に化けとるんじゃ」
「えっ、じゃあ、こいつは生きてる苺なの? 死んでないの? 俺は明日からもグラタンが食べられるの?」
「はぁ? なんじゃぁ、それは? なんでグラタンが出て来るんじゃ? まあええ、今日の晩御飯はグラタンにしてもらおう。チーズたっぷりでな」
「おっ、いいね~ キツネ色に焼き上がったチーズを、パンの上に乗せて食べても旨いよな」
「そうそう、さすがは紋ちゃん。ワシと好みがおんなじじゃ。早う帰って桃代さんに作ってもらおう」
「おっ、いいね~ 桃代の作るグラタンは絶品だからな。ついでに食後に食べるティラミスも、一緒に作ってもらおうぜ」
「か~~ さすがは紋ちゃん。ワシも、丁度ティラミスが食べたかったんじゃ」
「ふ~~ あなた達って、わたしが危険な目に遭って死んだフリをしてるのに、よく晩御飯の話で盛り上がれるわね。もう少し、心配してくれても良いでしょう」
「へっ?・・・・あ、あのね、苺さん。そういうつもりでは無いですぜ。俺も龍神も心配してましたぜ」
「あ~~ッ! 何をやってるんですか龍神さん! あなたッ、わたしの下着をツノに引っ掛けて、それの
「ほへっ? ワシ? あ~~ッ、紋次郎あんたッ! 何をしてくれとるんじゃッ! これじゃあ、戦利品に喜ぶ下着泥棒みたいじゃろう!」
「いいから二人とも落ち着け。苺は早く服を着ろ。元はと言えば、脱ぎ散らかした苺の責任だ。俺たちは拾って届けただけなのに、非難される覚えはないぞ」
「うっ、確かにその通りです。下手に握りしめられて、紋次郎さんの体温が
「生々しい表現をするな。それよりどういう事だ? いや、先にこの森を出た方が良いな。嫌な感じが強くなって来た」
「そうですね、ここはマズいです。紋次郎さんと龍神さんが来てくれて、助かりましたわ。急いでここから出ましょう。今すぐ服を着ますので、二人とも見ないでくださいね」
「何を今更。見られるのがイヤじゃったら、乳をブルンブルンさせて文句を言う前にさっさと着んさい・・・って、紋ちゃんが言うとりました」
「あっ、テメエ! また俺に責任転嫁をしやがって。いいから苺は早く着ろ」
俺と龍神はなんとか苺を発見し、無事も確認できた。
あとは、この森を抜け出せば、任務完了だ。
苺がどういう
それよりも、暗くなる前にこの森を抜けださないと、悠長にしてる場合では無い。
暗くなるとヘビが出る。
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