第225話 月明かり
ヘビに見つからないように浜辺へ行くと、砂浜に腰を下ろし、月明かりの下で桃代と二人で話をする。
誰も居ない静かな砂浜で、思いの通じ合っている男女が一組。
誰がどう見ても、良い雰囲気に見えるだろう。
しかし、実情は違う。
こういう時の桃代は、訳のわからないネタをぶち込み、会話と雰囲気をわやくちゃにする傾向がある。
なので、俺はスウィートなプロポーズの言葉をいまだに言ってない。
役所に婚姻届は出しているので、このまま言わないでやり過ごそうと思う。
桃代がわやくちゃにする前に、俺は明日からの予定を先に話すことにした。
明日は黒い服装を揃える為に、昼間の内に買い物に行くと伝えて、
遺骨探しに関しては、正直に行き当たりばったりだと伝えると、桃代は何も言わず、黙ったままで
不気味だ! ひたすら不気味だッ! 遺骨探しに関しては、もっとよく考えなさい。
そんな、注意をされると思っていたので、何も言われないとかえって不安になる。
伝える事は伝えた、次は桃代の番なので、今度は俺が何も言わずに待っている。
桃代も話があると言っていた、それなのにどうして何も喋らない。
待てよ、水神の遣いの白ヘビが苺の姿になった時に【裸で俺に抱き付いていた】って龍神が言ってたな。
もしかしてそれを怒ってる?
下手に話をふると、ヤブヘビになる可能性がある。
吹き出す汗を手で
すると、桃代はハンカチを取り出して、俺の汗を
「紋ちゃん・・・あの時は、守ってくれてありがとうね。龍神様が
「へっ? そっちの件ですかい? いえいえ、桃代さんを守る事が出来て、オイラも本望ですぜ」
「ありがとう。でもね、ああいう無茶はもうしないでね。紋ちゃんが崖から飛び降りた時ね、わたしは心臓が止まるかと思ったのよ」
「そうだな、それについては謝るよ。ごめんな。でも、おまえを守るのだけはやめない。何度でも繰り返す。それが嫌なら危険な真似はするな。俺にとって、桃代は一番大切な人だからな」
「えへへ、も~~っ、今夜の紋ちゃんは妙に素直ね。普段そういうのは、恥ずかしがって口に出さないのに・・・何か、後ろめたい事でもあるの?」
「とっ、とんでもないです。俺の方こそ海の中では助けられました。桃代さんにはガキの頃から助けられてばかりで、ありがとうございます。さてと、みんなが心配するから、そろそろ帰りますか?」
「うん、そうだね、帰ろうか」
苺が抱き付いてた話が出る前に、早く切り上げた方がいい。
俺は先に立ち上がり、座っている桃代に手を差し出すと、その手を握ってもらう。
そのまま強く握り返して立ち上がらせると、桃代は勢いよく俺に抱き付き、くちびるを重ねてきた。
まあ、誰も居ない浜辺だし、人に見られる心配はない。桃代の好きにさせるしかない。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・
・・・ ・・・ちょっと待て、長いぞ、長過ぎないか? 時計を見てないので、確実ではないが5分以上は経過した気がする。
誰も居ない浜辺だが、何かに見られてそうで、そろそろ恥ずかしくなってきた。
そうは言っても、俺の方から離れると、桃代が不機嫌になる気がする。
耐えるしかない。
更に5分くらい経過すると、やっと桃代の方から離れてくれた。
「よし、紋ちゃんが少しも抵抗しなかったから、これで許してあげる。本当はねっ、海の中から引き揚げた時に、裸の苺が抱き付いていたから凄いショックだったんだよ。だけど、わたしに抱き付かれて、嫌がる素振りを見せなかったから、浮気の罰は無しにしてあげる」
「そうですか、それはありがとうございます」
なんだッ、浮気の罰って! 気を失っていた俺に浮気が出来るかッ!
なんて事は言わない。
言えば、不毛な言い争いが始まり、最後は
帰りつくと門の前では、キーコと苺が俺と桃代の帰りを待っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます