第194話 悪魔祓い
誰だ? この子は? なんて考えても仕方ない。
さてさてどうしよう? 声を掛けるべきなのか? それともこのまま襖を閉じると、何も見なかった事にして、羊と一緒に算数の勉強をするべきなのだろうか?
迷う俺に、電子機器ではない女の子は、どろんとした力のない目をして見詰めてくる。
さてどうしよう? 悲鳴を上げると、みんな出て来てくれるかな? でも、男が悲鳴って・・・ちょっと、カッコ悪いよな。
それに、悲鳴を桜子に聞かれると、座談会のネタを提供する事になる。
悩む俺に、生者とは思えない女の子は、力の無い、音の無い
どうしよう? 距離が詰り、バカを考える余裕がなくなってきた。
こういう時は、お経を唱えると消えてくれるかな? でも、
よし。開き直ろう。
初めて幽霊と遭遇した訳でもないし、こんなのは今更だ。
俺が逃げないと感じたのか、
「あなたが、わたしの
「おまえは、もしかして百合か? おまえの願いを聞く前に、先に俺の質問に答えろ。桃代はどうした?」
「ももよ? ごめんなさい、誰のことだかわかりません。わたしの呼び掛けに気付いてくれたのはあなただけ。なので、あなたの魂だけをここに呼んだのです」
「魂を呼んだ? ちょっと原理がわかんないけど、俺の
「はい、すでに手遅れですので、諦めはすぐにつくと思います。その代わり、わたしの仲間になれますから、ふわふわプカプカできます」
「おまッ、ふざけんなよッ。幽霊になると、キーコを助けられないだろう。それに、桃代が悲しむ・・・? 悲しむのかなぁ、ミイラにされて喜ばれるのかなぁ」
「もちろん冗談です。魂だけを呼ぶ、なんて器用な真似は出来ません。わたしが他者を認識してないので、見えなくなってるだけです」
「本当だな。もしも、ウソを
「ふふ、ウソを
「俺か? 俺は紋次郎だ」
「そうですか、あなたが紋次郎さんなんですね。ホオズキがお花を供えてくれた時に、あなたの事を告げられました・・・確か
「ヘヘッ、この鉛入りのサイコロで、今晩ひと儲けするぜ。って、違う違う、なんで
「も~~怒んないでよ。だって、わたしに気付いてくれたのは、紋ちゃんだけなんだもん。少しくらいふざけてもいいでしょう」
「なんだ、急に変わりやがって。おまえ、なんかキーコと似てるな。キーコがあんな性格なのは、おまえの影響なんだろう」
「キーコ? キコのことね。そう、もう名前を教えてもらったの。わたしでさえ苗字のホオズキから名前のキコを教えてもらうのに、ひと月も掛かったのに・・・紋ちゃんばっかりズルい」
「だからッ、なんだそれは、面倒くさいヤツだな。いいか百合、おまえとは今日が初対面だ、紋ちゃん言うな」
「え~っ、だって、お墓にお線香を供えてくれたから、初対面の気がしなくて。あの時は本当にうれしくて、取り
「怖い怖い、なんで取り
「ほらそれ、幽霊のわたしをちっとも怖がらない。だから、紋ちゃんの
「おまえ、ホントしばくぞッ! 勝手に同居人になると、割高な家賃を請求するからな」
「なんで? こんなに可愛くて、いたいけな少女が同居してあげるのよ、普通は喜ぶことでしょう」
「
「うっ、紋ちゃんがカラス神父になろうとしてる。わたしはただの幽霊なんだから、パズズの真似が出来る訳ないのに」
「
「紋ちゃんが悪霊なんて言うから、合わせてあげただけなのに・・・名前はね、この家にわたしと同じ名前の女の人がいるでしょう。その人が、やたらと悪霊とかミイラとか、そういう
「そうですか、ミイラですか・・・」
どうやら桃代に毒されたユリの影響で、三百年前のいたいけな少女の幽霊が、現代に毒されているようだ。
早く話を進めないと、コイツの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます