第107話 手形
穢れの結晶がどんな色で、どういう形状なのか、あまちゃんに教えてもらう為に俺と桃代は居間に行く。
桃代と話した赤い石が、穢れの結晶なのか確認したい。
しかし、あまちゃんは一番風呂に入り、居間には居なかった。
廊下を見るとお
覗くつもりはさらさらないが、見張りのお供に睨まれて近付くことも出来ない。
別に急ぐ理由もないので、のんびりと待つようにする。
座布団を二つに折って枕にすると、俺は寝ころんで考える。
そのつもりでいたのだが、疲れていたのだろう。
目を閉じると、眠気のヤツが思考の邪魔をする。
半分眠りかけたところで、桃代に肩を
あまちゃんも風呂から
俺は急いで桜子の隣に座ると、桃代の【いただきます】で食事が始まった。
桃代と桃香は、あまちゃんと楽しそうに会話をしながら食事をしている。
しかし、俺はお供の人に睨まれて、桜子はあまちゃんに対して畏怖の念を
俺は苦痛を紛らわす為に、小さな声で桜子に話しかけた。
「おい、桜子。おまえは桃代の交友関係に明るくないのか? あまちゃんの正体を知らなかったのか?」
「知る訳ないでしょう。どうやったらわかるのよ。そもそもどうしたら神様と知り合えるのよ」
「なんで? 山頂にもトボけた神様が一匹いるだろう。【お供え物を頼むぞ】って言われたんだろう。約束は守ってやれよ」
「お願い、その時は一緒に行って。じゃなくて! 紋次郎君は龍神様に襲われたんでしょう。それなのにお弁当を持って、のこのこ行ける訳ないじゃない」
「あのヤロウ、今日はやられたけど、明日は酷い目に遭わせてやるぜッ」
「紋次郎君はバカなの?
「安心しろ桜子。俺はおまえより先に死なない。だから、おまえも俺の枕元には立つな」
「本当ね? って、わたしを巻き込まないでよ! 紋次郎君が早死にすると、桃代姉さんが悲しむのよ」
「なぁ桜子、本当にそう思うか?」
「うっ、悲しんだあと、紋次郎君のミイラに黄金のマスクを
「あのな桜子、ファラオが死ぬと従者も一緒に埋葬される。そんな話を聞いたことがある。もしも俺が先に死んだら・・・待ってるぜ」
「もうッ! そういうのは冗談でもやめてよね。桃代姉さんって、本気でやりそうなんだもん。庭にあるピラミッドに、二人とも埋葬されちゃうよ」
しかし、バカのレベルが合うのかもしれない意外と話が弾む。
桜子のおかげで口が滑らかになった俺は、穢れの結晶について、あまちゃんに質問をしてみた。
うすぼんやりとした記憶を
それから、見つけた時の状況を説明していると、桃代が余計なことを喋り【なんでもかんでも口に入れるな】と怒られた。
当たり前なのだが、俺は口には入れてない。
それなのに、拾い食いが事実のように思われて、桃香と桜子に憐れんだ目を向けられた。
明日、春之助との決着がついたあと、俺は桃代との決着もつけようと思う。
桃代、テメーは調子に乗り過ぎだ。
そのあとで、今度はあまちゃんの方から話をふって来た。
【立場上、この件には加担しない、俺が死にそうでも手助けはしない】そんな忠告をされた。
あとは、禊の方法なのだが【ただ、水を掛ければいい】そういう事でも無いようだ。
【ヤツの穢れは特殊で特別、そうは簡単に落ちないだろう】と助言をくれた。
え~~~ッ、それって助言になるの? 不安を
う~~~嫌な感じ。
頭の中でそんな事を思っていると、怖い顔をしてあまちゃんが立ち上がり、パンッといい音がして、今度は反対側の頬に俺は赤い手形を付けていた。
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