Rêve et Réalité

 ……ランスロットの胸を嫌な予感が襲ったのは、夢の中にガウェインが現れた頃からだった。アーサー王を助けてほしいと、弱々しい字で手紙を記した太陽の騎士。彼は何も言わず、ただただこちらを見つめていた。

「死んだのか、あなたは……」

 明るいはずの金髪が、美しいはずの桃色の瞳が、いやに薄暗く感じられる。きっとこれは、死者であることの証だ。

「何故、私の夢に? 一体、何があった」

 蝶の羽ばたきは無数に存在するが、その大半は同じ結末を導き出す。ランスロットはアーサーと決裂し、モードレッドがその裏をかくのだ。どうあがいても、強固な物語を捻じ曲げることができない。現に彼は、モードレッドが謀反を起こしているにも関わらず、中々アーサーと合流することができずにいた。

「……答えはなしか。何かと思ったが、蝶の些細な戯れか」

 ランスロットはどうにかしてガウェインの口を開かせようとしたが、ついには諦めて顔をそむけた。夢の空間は実に曖昧で、変に気味の悪い色をしている。

「何度も何度も繰り返したが、一向に良くなる兆しは見えないな。出口とやらは、一体どこにあるのか……」

 独り言をつぶやきながら、彼は現実の自分が目覚めるのを待つ。うんざりするほど顔を合わせた仲のガウェインだが、何も話さないのでは居心地が悪かった。

「もう少し、心の軽くなる羽ばたきも経験したいものだ。そうだな、意味のない戦いをするのはどうだ。スポーツや遊戯にふけるというのも、面白いとは思わないか? 最も、騎士らしくはないがな」

 苦々しく笑って、彼は小さくかぶりを振った。このような話は、夢よりも夢のようだ。

 ――その直後、今まで何の反応もなかったガウェインの口が、微かに動いた。

「……の誕生だ」

「……? 何だ?」

 掠れるような彼の声は、しかし聞き返した後にははっきりと、ランスロットの耳に残った。

「新王の誕生だ」


「――っ!!」

 ――大仰に起き上がり、辺りを見回す。ランスロットの横には、驚いた顔のボールスが突っ立っていた。さあっと吹き抜けた涼しい風が、彼の暗い藍色の髪を揺らす。

「ランスロット卿、そんなに勢い良く起き上がって、一体どうされましたか? もうしばらく、休憩時間のはずですが……」

 穏やかな日差しとは裏腹に、ランスロットの気持ちは静まらない。ただの夢であるはずの、あの冷たく短い言葉が、恐ろしいほどに襲い掛かってくるのだ。

「……ボールス卿。悪いがすぐに出発する。他の騎士にもそう伝えてくれ」

「は、はい! すぐに出発の準備を!」

 ボールスが駆け出していくのを見ながら、彼は銀掛かった青い髪を押さえ、指にグッと力を入れる。そして兜を取り、焦る心を遮るかのように被り直した。

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