第9話 『四天王の力』



 私たちは早速山に登り、凶暴化した猛獣と戦うことにした。




 山の頂上に着くと、虎の群れが道を塞いでいた。あれがこの森を塞いでいる猛獣のようだ。

 数は五匹。元四天王である私にとっては、問題なく倒せる。




「よし、見てなさい」




 私はアベルにカッコいいところを見せようと、アベルを後ろに引き連れて、虎たちの前に出る。




 虎は私を見るなり怯え出し、姿勢を低くする。




 さすがは私だ。魔王軍の四天王だっただけはある。気迫だけで猛獣すら恐れされるとは!




 私は自信満々に、振り向きアベルに言う。




「どうよ! 私ほどの力になれば、こうして何もしなくても恐れていくのよ!」




 しかし、そんな私をアベルは心配そうに見つめる。




「し、師匠……。あたま、食われてます」




「え…………」




 私は頭がなんだかズキズキするのに気がつく。そして赤いものが垂れてくる。




「こ、これは、愛情表現的な?」




 他の虎も私に飛びつき、足や腕に齧り付く。




 そんな光景を見ながら、アベルは目を輝かさせる。




「師匠!! 凄いです!!」




 この尊敬を失うわけにはいかない。私の金のために!!




 私はアベルに一瞬こちらを見ないように指示する。アベルが山の下を見ている間に、私は虎たちを倒し、茂みに隠した。




「あれ、師匠? さっきの猛獣は?」




「ああ、もう帰ったみたいだよ」




 とりあえずこれで誤魔化せた。しかし、なぜ虎は怯えていたんだ。私には攻撃してきたのに、私よりも脅威がいたということなのかしら?

 そういう人間に心当たりは〜、うん、やめときましょう!





【後書き】



 虎使いの魔物ってどんなのなんだろう?



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