第42話 信じているんだよ

「“推測”でいいからさ…、何かあるんだろう、言いたいこと…」

 駅への道をゆっくり、ゆっくり歩きながら僕は訊いた。


 ガブちゃん、ときおり星も見えない都会の夜空を眺めながら歩いている。

「気になりませんか…?教えられませんが…、継続する割合、拒否する割合…。あと新計画実行の基準値。勿論推測ですが…」


 教えてくれないことは訊いてもね…。

「気になるけれどさ…、ひょっとすると最後の審判に関わることだから…、気になるけれどね…」

 教えてはくれないだろうが、何を言うのかは気になるね。

「50%…」

 え…!おい、そんなんでいいの…!なんだよ!継続すればよかった…、いやいやそれは…

「40%、30%、20%、10%…」

 なんだ、例えばの数字か…

「5%、3%、2%、1%…」


 しばらく天を見つめてから、ガブちゃん、ニコって笑った。

「わかりません! 何%の生物が継続したら新計画を実行するのかは不明です」


 驚いたけれどさ、その回答は想定内だよ、不明だよね、わからないよね。

「ご参考に、私の経験上の数値、継続される割合をお伝えしたいのですが、これも言えません、すいません」


 そうだよね…、

「でもね、小杉さん。上司は基準を持っています。それが先ほどあげた数値ではないと思いますが確実に基準を持っています、確実といいながら、推測ですが…」


 なんか、ギリギリの話をしてないか…、無理しなくていいよ、ガブちゃん。

「絶対になにかしらの数値はあるのです。そうでなければ、調査自体に意味がありません…」


 そりゃそうだね…、なんか怖いよ。

「基準の数値はわかりません…、ひょっとすると小数点以下、0.5%以上の生物が継続したら新計画実行…なんてあるかもしれません…」

 また天を見上げるガブちゃん。僕はちょっと立ち止まった。ふと、自分や生物がとんでもない狭い道を歩いているんじゃないか、そんな気持ちがしたから…。


 足元を見た。アスファルトはしっかりと僕の両足の下に硬く広がっている。

「0.3%、0.2%、0.1% なんてこともありえます…」


「数値として、基準としては、ありえます。どんな低い割合でも…」


 わかるよ、

「だけどさ、あくまで数値だろ、ガブちゃん…。僕はね、ガブちゃんの言いたいことがわかるよ…」


 暗いのでよく見えないがガブちゃん、ニコって笑っているのだろう。


「神様はさ、きっと生物をね、信じているんだよ…。ガブちゃん達の報告を読めばそれがわかるし、自分の意思で生きている生物がほとんどなのも神様は知っているんだよ」


 僕も天を見上げた。見えないよ、薄暗い都会の空しかね…。


「ガブちゃん、言いたいんだろ。新計画を実行に移す基準は確実にある。非常に低い割合だけど、自分の意思で生きない生物がある数値以上に増えたら、きっと神様は新計画を実行する…」


「コメントはできないです…」


「神は人を、生物を信じているが、けして驕り高ぶるな!そうじゃないかな、天使様の言いたいことは…」


「きっと、“推測”ですが、この報告書を上司は何度も読み返すことでしょう」


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