第4話 それだけじゃないんだ

 嬉しくなってオフィスに戻る。

 でも、おしりはチェックしないと…。不器用に何度も振り向いた。


 大丈夫、全然汚れていない…。やったね、でも、昨日は少し汚れが残っているように思ったんだけれどもな…。家に帰って、スーツを吊るして、ちょっと見て、でも眠くて…。


 案の定、朝は急いでそのまま着て、穿いてきちゃったんだよな…。

 汚れてなくてよかった。昨日は確かに汚れていたのに…ツイてる。


「朝からなにしてんだよ…」

 吉沢が声をかけてきた。

「昨日のだろ…、汚れていないみたいだぜ…」

 当然覚えているんだね、吉沢は。でも、半分お前のせいなんだけれどな。強引に酔っ払いを助けて、僕のほうに引っ張ったから…。まあ、事故にならずによかったよ。


「そうだね、よかったよ…」

「あの変なふわふわしたよっぱらい、無事に帰れたかな…」

「大丈夫じゃないかな…、意外とはっきりしていたしね…」

「ああ…」

 吉沢がデスクにつきながら、でも、まじまじと僕を見つめながら言った。

「なんか小杉、うわついてないか…。いいことあったのか…」

 いいことはあった。すっごくいいことがあった。


「うん、ほら、見積もりね、条件のむって…」

「へぇ~」

 吉沢も笑顔になる。

「よかったじゃん、へぇ~、たまにはいいことあるんだな、昨日まではツイてないって言ってたのにな」

「ああ、そうだね」

 でもね、ツイてるのはそれだけじゃないんだよね。へへ、それだけじゃないんだ…。

 

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