アイリーンはホームズの夢を見たのか?
アイリーンはホームズの夢を見たのか?
作者 山田湖
https://kakuyomu.jp/works/1177354055246856735
雪山で事件が起き、変態の粋に達した刑事神之目透と犯人逮捕補助AIのアイリーンが協力して事件を解決する物語。
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を連想されるタイトルがつけられている。
第三次世界大戦後、放射能灰に汚染された地球では、生きている動物を所有することが地位の象徴となっていた。人工の羊しか持っていない賞金稼ぎリックは「本物」の羊を手に入れるため、火星から逃亡してきた奴隷アンドロイド六体の首にかけられた莫大な懸賞金を狙って命がけの狩りを始める、映画『ブレードランナー』の原作としても知られる、「人間とは何か、人間らしさとは」をテーマにしている著者フィリップ・K・ディックの有名なSF小説だ。
ホームズは御存知、シャーロック・ホームズのことだし、アイリーンはホームズの小説に登場する、ただ一人名探偵を出し抜いたアイリーン・アドラーのことだ。
本作はSFミステリーかしらん。それは「読んでみてからのお楽しみ」である。
文章の書き方、誤字脱字は目をつむりたい。
ミステリー小説は何気ない書き方をしているところにヒントが隠されていたりするものだから、伝わりづらいとミステリーの出来にもかかわってくると思う。
冒頭、「君はただ眼で見るだけで、観察ということをしない。見るのと観察するのでは大違いなんだ」シャーロックホームズシリーズ『ボヘミアの醜聞』の一節が書かれている。
ホームズを名探偵足らしめている要因は二つ。
「優れた観察力」と「有益な情報のストック」である。
先入観を持たず注意深く観察することや、有益な情報のみを脳の中に蓄え、いつでも引き出せるホームズの長所を、わたしたちも身に着けたいものである。
そして、『ボヘミアの醜聞』に登場するのがアイリーン・アドラーだ。
三人称の文体。凝った文章を書いている。
ミステリーを主にするなら、平易な文章のほうがいい。
ミステリーで見られるのは、登場人物のキャラが立っているか、トリックに目新しさがあるか、トリックに破綻や矛盾がないか。ミステリー作品が好きなひとはたくさんいるし、目の肥えた読者も多いだろう。
それでも上手い文章は好まれるにちがいない。
前半は、興味を持って面白く読み進めることができる。
猟師が吹雪の中を歩いている。「顔には絶え間なく雪が吹きつけ、体から体温を奪っていく」なぜ顔だけなのだろう。向かい風をうけて歩いているのを表している。でも体にも吹きつけてくるから、体温を奪っていくのだろうに。それに体温を奪うのだから、体からに決まっている。
そもそも猟師は吹雪の中、どうしてふらつきながら歩いていたのだろう。体力の温存や道から外れることを避けるために動かないのが無難だ。
どんなに体力がある猟師でも、三キロほどある猟銃と水や食料を持って五時間以上歩く猟はかなりしんどい。何より安全第一で、決して深追いしない指導を受けているものだ。
体力の消耗の激しい吹雪の中を「天気予報を見て大雪が降ることは百も承知」「この程度、今まで潜った修羅場に比べればどうということはない」など、過信と慢心に走るこの猟師は、本当に猟師なのだろうか。そうしなければならない目的が、この猟師にはあったのだろう。
冒頭で事件が起き、刑事登場。「登山道を一台のGT-Rが登っていった」とある。栃木県警にはR35「GT-R」パトカー、埼玉県警にはR34「スカイラインGT-R」が導入されている。なので、警察車両だ。
同クラスのクーペと比較すれば、雪道でもGT-Rは強い。北海道で見かけるのは、コルベットやSLクラスのベンツ、BMWのM4クーペではなく、GT-Rだ。ただGT-Rの最低地上高は十一センチ。積雪が多いとバンパーが接触してしまう。路面で十五センチほどの窪みがあると走行にも支障が出かねない。大雪が降った次の日は快晴で、新雪が積もっている状態だ。登山道の除雪が終わっていたのだろう、きっと。
運転手以外に同乗する二人は、「背広の上」に「ダウンコートを」羽織っている。車中でダウンコートを着ていないとならないほど寒い地域なのだろう。
同乗しているのが、神之目透と中村章。この二人は、運転してもらうほどの人物なのだ、きっと。
神之目透は「変態の域に到達した刑事」で、変態ぶりが紹介されている。
そんな彼と一緒にいる同僚、中村章は「誰にでも敬語で話すような穏やかな性格の刑事」だという。奇抜な主人公が登場してくるだけでも、本作は面白そうだ。
事件は昨日の夕方、「猟師である夫が猟に行ったきり」で心配した妻が警察に連絡。翌朝、「警察と消防団の合同捜索隊により遺体で発見」された。
猟師の「額に引っ搔き傷のようなもの」から「熊に突進され内臓が破裂したことによる事故」と現段階では判断されているという。
事件現場の検証に最初に入るのは刑事ではなく、現場の観察や証拠品の収集を行う鑑識係である。鑑識の中にも順番があり、 一番は足痕係である。次が写真係で、その後で指紋係が現場に入り、遺留指紋を採取する。
なので、これらが終わったあとで、「もしかしたらと念には念を」と呼ばれた二人が、現場に入ったのだろう。
現場に到着した二人は周囲を見ている。
「左右は木々で囲まれ」「登山道の真ん中に件の猟師が仰向けに倒れ」「額には引っ搔き傷のようなもの」「熊らしき足跡が木々の方向に」「木々の手前で途絶え」「雪に埋もれたのか、その足跡はつま先が無かった」
最後に、「大きさから考えて大人のクマのものだろう」としたのはだれだろう。中村かしらん。鑑識からの報告は聞いたのだろうか。猟師は、警察と消防団の合同捜索隊によって発見されている。消防団のメンバーはおそらく山にも詳しい現地に暮らしている人達もいたはず。
「これはもう、熊じゃないですか?」
中村は誰に話しているのだろう。
このあと、「スマートフォンを取り出した」とあるので、まわりの刑事にではなく、AI・アイリーンに話しかけていたのだ。
きっと彼は、なんだかクマっぽいと思って、ドラえもんに話しかけるのび太くんみたいにスマホのアイリーンに「クマだよね?」と聞いてみたのだろう。
現場にいた刑事が「でもこんな時期に熊出るかなあ? 冬眠してると思うんだけど」と漏らしている。そもそもこの事件が起きたのがいつなのかわからないが、ツキノワグマの場合は十一月から四月までのおよそ五カ月冬眠する。
だが、冬眠しない熊もいる。二〇一九年、冬眠期間とされる十二月には三百七十四件、翌年一月に百件、二月に六十三件、三月に九十四件の報告がある。
冬でも比較的気温の高い西日本だけでなく、厳寒の東北での目撃もある。
なので、「クマは冬眠する」と一概には言えない。
神之目は「……もうそろ回収しなきゃだな」とつぶやく。
「もうそろ」とは「もうそろそろ」を意味する言葉である。そろそろと「そろ」が並ぶことを面倒くさいということで「もうそろ」と略したもので、ネット上で中高生が多用した。注目を浴びたのが二〇一三年ごろなので、彼はその頃、中高生だったとおもわれる。いまは二十代後半くらいだろうか。
中村のスマホを通して、「犯人逮捕補助AI・アイリーン」が『事件の可能性が高いです』としゃべりだす。このとき中村は現場におかれた遺体の近くにずっといた。
変態の粋に達した主人公の隣で、いつも穏やかな人柄の中村は、彼に頼ることなく、スマホをかざしながらカメラを通して現場の状況をAIへ伝えていたのだ。おそらくそれが彼の仕事なのだろう。職務に忠実なのか、神之目を出し抜いてやろうと腹積もりをしているのか。
ちなみに現在のAIは機械学習。データを何度も学習することで、ある種の「パターン」を発見し、より正確な予測を立てている。
AIとは「人間と同じような知的な処理をコンピュータ上で実行するもの」という定義があるが、人並みとはどのくらいか? 知的な処理とは何か? があいまいで、よくわからない。人の行動を見て理解したり嘘をついたりできる幼稚園児よりも遥かに劣っているので、AIの年齢はいまのところ、一歳にもみたないのではないだろうか、という意見がある。
AI・アイリーンは、神之目がいいたかったことを先に言ってしまう。
先を越された彼は、「まるで今日のごはんがハンバークから野菜炒めに変わった子供のように」スマホのアイリーンを見つめ、負け惜しみのようなことをいい、終いには「ちょっとー誰かハンマー持ってない、ハンマー?」と叩き壊そうとしている。たぶん、スマホを壊しても本体サーバーは警視庁にある(作者コメントより)ので意味はない。
彼もそのことは知っているはず。なぜなら、アイリーンの解説を聞いた周囲の刑事と反応が違っていたし、「いや~さすがだな~。この僕と同レベルの推理ができるなんてさすがだな~」と言い返している。
もし今回が初対面なら、別な対応をみせるはず。
のちに彼が犯人の説明をする場面で「これから僕が説明する間は、口を挟まないでもらいたい」といっている。口を挟もうものなら、「口を挟むなーっ! 人がしゃべろうとしている時に口を挟めと学校で教えているのか?」と怒鳴り散らしている。
説明しようとしていた彼を遮ったのがAIだろうと、怒鳴り散らしたはず。それをしなかったのは、それ以前にAI・アイリーンを知っていたからに他ならない。同僚の中村とコンビを組んでいるようなので、彼から話を聞いて知ったのだろう。
『なんですか? あなたの脳はお子様なんですか?』とアイリーンに言われている。「脳」がではなく、「性格や発想が幼稚な一面」が、彼にあるだけだ。この辺りに、AIレベルがまだまだなのが伺える。
アイリーンが捜査員全員にインストールが義務化された。
今回の捜査から、試験運用の実験が決まっていたのかもしれない。この事件をアイリーンが解決に導くと、全国の警察にも導入していく運びとなっている可能性がある。少なくとも、今後のAI運用の参考にはなるだろう。
ただし、このことで中村の活躍の場がなくなってしまう。
神之目を出し抜こうと考えているような人物ではなかったのだ。
死んだ猟師の鹿野は、材木店を経営している。
日本のハンターの九十九%が趣味、つまり職業として猟師をしていない。なので、「材木店も」ではなく、材木店経営しながら、猟師は冬の間だけの副業だったのだろう。
獲物を取ったとしても、買い取ってくれるところがなければ換金できない。自分で精肉して売るとか、飲食店を経営してそこで提供するなら保健所の許可を取って解体施設を建てる必要がある。この場合、自分で解体できなければならない。
有害駆除の報奨金目当て、という考えもある。猟友会のグループに参加。全員で山分けという土地もある。それだと、一人あたりの取り分は弁当代くらいにしかならない。駆除で小遣い稼ぎをできている人達はほんのひと握りで多くの人達は、ボランティアが現状だ。
鹿野の妻、正枝は四十代後半。少しパーマがかった髪の持ち主だという。子供はいないのだろうか。こういう疑問が、動機の想像をする手助けとなるのかもしれない。
彼女いわく、「亡くなった夫は当日、大雪にも関わらず朝六時から猟に出たという。その後、十七時に突如として雪がやみ」「帰ってこないことを不安に思った鹿野は警察に通報」「自分でも探しに行った」という。
日本の狩猟期間は原則十一月十五日から翌年二月十五日(北海道は十月一日から翌年一月三十一日)と法律で定められている。
また、銃の場合は狩猟ができる時間帯も決められている。日没後から日の出前までの暗い時間帯は、銃による狩猟はできない。なのでその地域ごとで狩猟に行く度に、日の出と日没時間を確認しなければならない。
鹿野は午前六時から狩猟にでている。
この事件が関東圏で起きたと推測し、埼玉県浦和の時間を参考に考えてみる。関東圏なら、ほぼ同じくらいの時間帯になるはずだ。
日の出を六時に迎えるのは十月二十八日と三月十日。
狩猟解禁日より前であり、解禁終了後である。
移動を加味して早めに家を出ただけ、と考えれば、さほど大きな問題ではないだろう。ちなみに、北海道なら日の出を六時に迎えるのは十月二十五日なので問題ない。
関東地方に大雪が降った二〇一八年一月二十二日を参考に考えてみる。
日の出は六時四十八分。日の入りは十六時五十九分。
この時間内にのみ狩猟が許されている。
朝六時に家を出て山に入り、六時四十八分から狩猟を開始し、五時には下山してくる予定をしていただろう。
彼を殺した犯人は、猟師である彼の行動を把握している人物でなければならない。
狩猟中はどの山のどのルートを通っていくのかはわからない。下山して帰宅するルートは、家の近くまで来れば、いつもと同じ道を通ってくるはず。このことも犯人は知っているはずだ。
スマホのGPS機能を使えば、どのあたりにいるのか把握できるかもしれないけれど、それだとさらに身内が怪しくなる。
通報したのは二話で「昨日の夕方、猟師である夫が猟に行ったきりになったとの連絡があった」なので、昨日の夕方なのだろう。その後、彼女は「主人は普段、登山道は使わず脇道を使って猟をする」からと、脇道を探しにいったという。
彼女の主人が倒れていたのは、登山道だった。
そういわれても、事件が起きた周辺の地図情報が書かれていないので、読者にはわからない。材木店は住居と併設されているのか、それとも住宅は少し離れた場所にあるのか。脇道と登山道はどこにあるのか。
「髪を刈り上げた色黒」で体が大きくてたくましい消防団の青年、新村義正に話を聞く。
消防団とは、会社員や自営業、学生や主婦など、普段は自分の仕事を持ちながら、災害が起こると災害現場に駆けつけて消防署員と共に消火活動や防災活動をしている非常勤であり、特別職の地方公務員。
地域の防災ボランティアとも呼ばれるが、有事の際は準公務員の扱いを受け、年間数万円程度の報酬を受け取り、退職時には、従事した年数に順次多額が支払われる。
災害はいつ起きるかわからず、地域は自分たちで守ることが理念として立ち上げられた団体であり、支払われる金額と活動内容を比較したときボランティアに等しいからといわれる。
なので、「ここで出てくる彼らは、非番の消防員全員に電話が入った」と書かれていることからも、彼は消防団ではなく、消防職員ではないかしらん。「第一線で活躍する消防士であることを証明しているようにも聞こえる」とあるので、おそらくそうだろう。
土産物店の美人店員に質問した「彼」とはだれだろう。読んでいくと、「ああ、神之目さん。当店をいつも御贔屓にしてくださりありがとうございますう」というところで、ようやくわかる。この書き方では正直わかりづらい。
ちなみにどのような美人店員だったのだろう。描写がないからわからない。三日前に、店に鹿野さんが訪れているという。旦那か妻か、どちらが来店したのかなぜ聞かないのだろう。それに、美人店員がレジにいなかったから「何を買っていたか」わからないと答えているのだけれど、だれがレジ担当をしたのだろう。その担当に話を聞かず店を後にするのはなぜだろう。
いくら神之目がグダグダしゃべっていようとも、聞き込み捜査は遊びではないのだ。
中村が聞き込みで、ガソリンスタンドではたらく中年店員に「事件の日に何か変わったことは無かった」か、質問している。
会話にでてくる「彼」とはおそらく神之目のことだとおもう。素直に「神之目」と書いてくれると伝わりやすい。
後半は、解決編。登場人物が少ないので、犯人に関しては「そうだろうね」という感想。犯行の手口も「そうですか」という感想。
「あなたはどの道で行ったかは知らないといっていたがそれは嘘だ。現にあなたはあの時右上――いわば利き手の方向を見ながら説明していた。これは人が嘘をついているときに出る一つの心理的な現象」だと、神之目は鹿野の妻、正枝に語っている。
行動心理学という特殊な技術で相手の嘘を見抜き、表面からは読み取れない隠された真実を暴く美貌の女刑事が活躍する、『サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻』というドラマを思い出す。
神之目のこの見方は、本人にとっては至極当然なのかもしれないけれど、凡庸な人には驚きを持つ場面だとおもう。なので、文章の塊に埋もれさすのはもったいない気がした。
「熊の足を模したスリッパを履いて下山」した、と推理の中で語っている。
そのあとで、「動物の足跡のスリッパ」と変わっている。土産物屋に売っていたのは「本物の毛皮を使った動物の足を模したスリッパ」なので、「動物の足跡のスリッパ」でも問題ない。ようするに、剥製の熊から足の部分を切って、スリッパにしたものが土産物屋で販売されていて、それを購入して犯行に用いたということ……なんだけれど。
いくら足の裏が熊の皮だからといって、そんなものを履いて雪道を下山しても滑らない保証はない。パンダのように雪深い、寒い地域でくらしている動物の足の裏には肉球が見えなくなるほどふかふかの長い毛が生えており、寒さよけや雪上での滑り止めの役割を果たしている。ホッキョクグマも同じような毛深い足裏をしているが、さらに足の裏が非常にザラザラしており、簡単には滑らないつくりになっている。
近縁種のヒグマなどには、足の裏に毛がほとんどない。おまけに、ホッキョクグマのように足裏がザラザラともしていないのだ。
なので、爪痕がつかないよう重心がかかと側にかかれば、そのまま滑ってバランスを崩して尻餅をつきかねない。おまけにスリッパだから簡単に脱げてしまう。普通に山道を歩くのも滑ってしまい、むずかしい。
ちなみに、カナダ人アーティストのマスカル・ラッセル氏の作品で「Outliers」という靴がある。動物の足跡から型をとって作られた靴底になっているので、この靴を履いて歩けば、簡単に爪の跡まで残せる熊の足跡がつけられるのだ。こちらを犯行に使ったなら、スリッパよりは雪道で滑らない可能性が高いかもしれない。
検証が必要だ。
ここでAI・アイリーンの本領発揮を見せて、神之目と協力して犯人を追い込むシーンがあってもいい気がする。
新村たちがスノーモービルで逃げるのだけれども、どこにあったのだろう。おそらく新村が鹿野の家に呼ばれたときに彼が乗ってきたと推測。一応、彼はスノーモービルを持っていることが会話の中からわかる。所持しているのはわかるんだけれども、鹿野家に乗ってきたのかまではわからない。ドラマならワンカット入れる気がする。
鹿野家に警察が来ている際、周囲を取り囲んでいなかったのだろうか。被疑者である居所に訪れているのだから通常逮捕だとおもう。逮捕しようとしていたけれど、逮捕状は?
犯行の動機は、旦那から「男性恐怖症になるほどの暴力」を受けていたからと、神之目は語っているけれども、犯行を犯した妻や協力者の新村からは語られていないので、「そうなんだ」という感想。
「あの場は野郎ばっかだったから」とあるけれど、たしかに警察は男性の多い職場ではあるが、訪問した神之目をはじめとした刑事達のメンツがわからないので、そういったことがわかる描写があれば良かった。
後半、相棒の中村章の出番はほとんど無くなる。
神之目とアイリーンだけで良かったのではないかとさえ思えてくる。
全員のスマホでAI・アイリーンを使えるようにしたからかもしれない。
そのわりには、活用されているようには見えなかった。インストールはしたものの、使いこなせなかったのかもしれない。講習会を開く必要がありそうだ。
神之目はホームズの言葉を借りて、「君はただ目で見るだけで観察ということをしない。見るのと観察するのとでは大違いなんだよ。アイリーン」という。現段階のAIではむずかしい。
「まずは人の心に寄り添うことが第一段階だ。意外と簡単だよ。人と接するときに相手がどう受け取るかを考えて相手すればいい」
これがAIにできるようになると、人間とAIの違いはなくなってしまうかもしれない。
「まあ、君もじきにできるようになるよ」と神之目はいうけれども、できるようになると、大幅に人間の仕事がAIにとってかわられてしまうだろう。下手すると、警察の仕事もあるいは……。
アイリーンは、「今回のことをCPUに記録し、生かすために」少し沈黙したとある。記録するならHDやサーバーにして、今後の事件捜査に役立てていくだろう。
最後に『おやすみなさい。シャーロックホームズさん』と、馬車で先回りして、ホームズに一泡ふかせた男装のアイリーン・アドラーのセリフが書かれている。
AIのアイリーンは、神之目に一泡吹かすことが出来たのだろうか。
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