前髪ちょきん

「前髪どのくらい切りたい?」

「えーと、目が見えるくらい?で」

「やっぱり今まで目あんまり見えてなかったでしょ」

「…はい」

「だよね」


んーじゃあとりあえず前髪薄めにとって眉下くらいで切ろうかな


「適当に切ってくね」

「お、お手柔らかに…」

「だいじょーぶ!今は前髪流してるけど前は自分で切ってたんだから」


とは言ったものの、緊張してきたな

だって人の前髪切るのとか初めてなんだもん!緊張くらいするもん!!

ふぅーーーーー




「…よし、切るよ」


ジャキ、ジャキ、ジャキ

ここ整えて、ここもうちょっと切ろう


ジャキ、ジャキ



「…どう…?」

「…!いいかんじです!」

「よかったぁー!!」


ほんとに失敗でもしたらどうしようかと思った

よかったほんとにまじで


「めっちゃ可愛い!」

「っありがとうございます…!」


前髪ばっかり見てたけどやっぱりかわいい

ぱっちりした二重できらきらしてる。守りたくなるってこういう子のことねなるほど


「あの今日、色々してもらってばっかりなんで何かして欲しいこととかあります…?」

「んー大丈夫だよー?」

「私が大丈夫じゃないです。掃除でも料理でもなんでも」

「…えとじゃあ、なんか夜ごはん作ってくれる…?」

「いいですよ」

「えいいの?!時間とか大丈夫?」

「今日は遅くなるって言ってたので大丈夫です」

「ありがとう!有加里ちゃんも食べてってね」

「はい」


嬉しいご飯作ってくれるとか実質結婚じゃん

たのしみすぎる

え材料ある?いやお父さんがたまーに買ってくるから材料はあるはず私全然使ってないけど


「何食べたいですか?」

「な、なんでも大丈夫です…!」

「わかりました」


き、ききき緊張する…だってこんなん結婚してんじゃんお家デートじゃんどきどき

と、とりあえずテレビでも見とこう…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


なんかすっっっごいいい匂いがするんですけど

学校の帰り道の住宅地を通った時のあのにおいがする


「先輩できましたよ」


そう言ってお皿に盛り付け、机に運ぶ姿はまさに妻

もうおれの嫁じゃん…



「有加里さん、これはなんと言う料理なのでしょうか。わたくしあまり家庭の料理というものを食べたことがなくてですね」

「肉じゃがです」

「おぉっ!これが肉じゃがですあるか…!!」

「さっきからキャラぶれぶれですよ」


私としたことが取り乱してしまった


「有加里ちゃんたべよう!!」

「はい」

「「いただきます」」


では、、、いざ実食!!!!!





?!!?!!?!!!


「めちゃくちゃ美味しいんだけどこれ!!」


全部の具材にしっかり味がしみていて、じゃがいもはホクホク!!そんでもってこの食べやすいサイズ感!


「ん〜!!!おいしいー!!!」

「喜んでもらえて良かったです」


ほんとにこんな美味しいの作ってもらえて幸せ

一生食べてたい


「先輩は料理とかしないんですか?」

「料理って何すればいいのかわかんなくてさー、コンビニとかで買った弁当しか食べないんだよね」

「えっそれ健康とか大丈夫ですか」

「多分大丈夫!この肉じゃがで1年は絶対元気だから」

「えー…」


なんか引かれた??

まあコンビニ弁当も美味しいけどこの肉じゃがの方がもちろん美味しいよね


「……あの、良かったらまたご飯作りに来てもいいですか…?」

「え…いいの?」

「はい」

「ぜひお願いします!!!」

「わかりました」


そう言ってふふっと笑う明香里ちゃんの笑顔がとても輝いて見えた

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