第66話

「やっぱりこの家じゃないんじゃないの?」



1時間ほど探し回った時、ついに本がそう言った。



本も随分頑張ってあちこち探してくれていたので、もう疲れ切っている様子だ。



「そんなはずはありません! 間違いなく、この家です! もっと真剣に探してください!」



見つからない事に焦りを感じているせいか、傘は少し怒っている様子だ。



理不尽に本が怒られた本は顔を真っ赤にしている。



「あと探してない場所と言えばどこだろう」



僕はそう言い、首を傾げた。



この1時間でありとあらゆる場所を探し尽くしてしまった。



「屋根裏とか、軒下だろ」



カエルが答える。



僕はミミが軒下に隠れていたことを思い出していた。



「軒下! そうかもしれない!!」



カエルの言葉を聞いて傘がパッと笑顔になった。



「だって私、雨の形をしたキラキラ光るものがこの家に入って行くのを見たの。だけど追いかけて行ってもどこにもいなかった。



軒下に隠れてしまったのなら、その謎が解ける!」



傘は興奮気味にそう言い、さっそく家の外へと向かった。



「この下に入るのか?」



真っ暗な軒下を見てカエルが傘へ向けてそう言った。



地面には小さな石ころが無数に転がっていて、とても痛そうだ。



「残念ながら、私は軒下に入る事ができません」



「は?」



本が傘を見上げてそう言った。



口をポカンとあけて呆れたような、驚いたような顔をしている。



「私の傘は紙でできているので、石などで破れてしまうかもしれないんです」



「じゃぁ、どうするつもり?」



そう聞くと、傘はジッとカエルを見つめた。



この中で一番体が小さくて、軒下に入りやすいのはカエルだ。



「冗談だろ!?」



カエルが叫ぶのと同時に、傘が「お願いします!!」と、更に大きな声で頭を下げていた。



「なんで俺がお前のために軒下に入らなきゃならないんだよ」



「お願いします! カエルさんにしか頼めないことなんです!」



傘は頭のてっぺんが地面につくほどに頭を下げている。



そのままコロンッと転んでしまいそうだ。



華奢な足は自分の体を支えるためにプルプルと震え始めている。



そんな傘を見てカエルはしかめっ面をした。



ここまでやられたら断る事なんてできない。



カエルはブツブツと文句を言いながらも軒下へと入って行ったのだった。

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