第35話
「それなら、一旦食べるのをやめて話を聞いてくれないか?」
そう言うと、カエルが僕の膝の上に乗って来た。
「そうしてもらおう。食べれば食べるほど、このニンジンチップスは平凡な味がしてきた」
元々平凡な味しかしていないんだよ。
そう言おうとしたが、やめておいた。
「そうですか、それでは話を聞きます」
ミミは名残惜しそうにニンジンチップスをテーブルの上に置き、僕を見た。
「ミミは、どうして僕と一緒にいたいと思ったんだ?」
「私はルキさんの事が好きだからです」
なんの躊躇もなく告白されてしまって、僕はたじろいた。
カエルが膝の上から熱い視線を送って来るのがわかった。
「す、好きって言っても、ミミは僕のことを知らないだろう?」
「いいえ、知っています」
「ミミは僕の事を知っているのか?」
「はい。お顔を拝見したのは初めてですが、よく存じ上げています」
ニコニコとした笑顔を向けてくるミミに、僕はますます首を傾げた。
顔を見たことがないのに僕の事を知っているって、どういう事だろう?
誰かから話を聞いていたってことかな?
それにしても、話を聞いただけで僕の事を好きになるなんて思えない。
「ミミ、お前がルキを好きなんじゃなくて、持ち主がルキを好きだったんじゃないか?」
少し考え込んでいたカエルが思いついたようにそう聞いた。
ミミは瞬きを繰り返し。
「そういえば、そうだったかもしれません」
と、眉間に眉を寄せて考えた。
「持ち主との絆が深いと、自分の感情なのか持ち主の感情なのかわからなくなる事があるらしい。あいにく、俺はそんな経験がないからわからないが」
カエルが僕を見てそう言うので、僕は眉を下げた。
何も言い返すことができないのが情けない。
『カエルのストラップとの絆なんて、ギャグにしかならないよ』
とか、軽く言い返す事ができればいいのにと思う。
「ミミ、お前の持ち主の名前は?」
カエルは僕の次の言葉を期待していなかったようで、すぐに耳に向き直っていた。
「愛菜ちゃんです」
ミミの言葉に、僕の目の前は一瞬真っ白になった。
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