第27話
「そりゃそうだろ。人間の食べ残しの魂は沢山あるけれど、それはほとんどが肥料になってる。リサイクルされて再び命を貰ったものはこの町には来ないからな」
「肥料……そうなのかな?」
僕は首を傾げてカエルを見た。
僕が暮らしていた町では確かに食べ残しを肥料にする活動が進んでいたし、リサイクルも当たり前になっていたけれど、全国的にはどうなのかわからなかった。
僕が考え込んでいると、突然カエルが立ち止まったのでその体を踏んづけてしまいそうになった。
「なんだよカエル。急に立ち止まると危ないだろ」
「もしかしてルキ、物の魂のすべてがこの町に集まると勘違いしていないか?」
「え? 違うのか?」
もちろん、その通りだと思っていた。
するとカエルは大きな声で笑い始めた。
「な、なにがおかしいんだよ」
僕はムッとしてカエルを睨む。
「日本全国の捨てられた物がこんな小さな町に集まるワケないだろ」
「そ、そうなんだ……?」
「あぁ。【捨てられた町】は全国各地にあるんだ。その町その町の【捨てられた町】が存在している」
「じゃぁ、ここは僕が暮らしていた町で捨てられた物が集まっている場所ってこと?」
「そういうことだ」
カエルは頷き、また進み始めた。
僕はのんびりとその後を追いかける。
「それならこの町に生ごみの魂がいないのは理解できるよ」
「だろう? まぁ、必要なものは他の町から物々交換して持ってくることもある」
「必要な物?」
僕がそう聞くと、カエルがまた立ち止まった。
気がつけば家まで戻ってきていた。
カエルは家を見上げる。
僕は「あっ」と、声を上げた。
祖父の家があったのは、今僕が暮らしている町ではない。
「この家を交換してきたの?」
「あぁ。隣の【捨てられた町】からな」
「どうして……?」
「この家と共に俺は捨てられたからだ」
カエルの言葉に僕はグッと返事に詰まった。
カエルを捨てたのはこの僕だ。
「勘違いするな。ルキを怨んでなんかいない」
カエルはそう言いながら家の中へと入って行く。
「もちろんだ。じゃないとここまで来ない」
カエルが小さな声でそう言った事に、僕は気が付かなかったのだった。
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